3-3 板前の仕事

「いやぁ、すごい経験だ! うちの編集部で記事、書きませんか!」

「俺には文才がない。その分野は面舐に任せる方が」

「いやいや謙遜なさって、とても面白かったですよ!」


 すっかり喰村さんと編集長は打ち解けた。編集長のコミュ力が高いというのもあるが、喰村さんの体験は彼の心を突き動かしたらしい。オカルトバカには異常世界に居る人が合うのだろう。


「喰村さん、お仕事は何をしてるんですか?」

「仕事……あぁ、そうだ。面舐、これ」


 喰村さんはウエストポーチから封筒を取り出した。それなりに厚みのある封筒で、何が入っているのか皆目見当もつかない。

 受け取って中を見ると札束が入っていた。百万近くはあるんじゃないか?


「こんな、貰えませんよ! 私何もしてないです!」

「くねくねを駆除した報酬だ。三人で山分けして一人五十万」

「いやいや、こんな大金、私受け取れませんって」


 喰村さんに封筒を押し付けると、彼は困ったような顔をしてこめかみをかいた。


「命をかけた仕事だからな。相応の対価は受け取るべきだ」

「いやいや、私、記事書かせてもらってますし」

「それでも、受け取れ。命をかけてることには変わりない」


 喰村さんは断固として受け取らない姿勢を取っている。私もこんな大金は受け取れない。

 くねくねは記事に出来たし、本当なら食べられないものを食べることも出来た。仕事も趣味も前に進めたのだから、私には受け取る義理はない。


「面舐、受け取っておけ、喰村さんの厚意だ。無下にするな」

「でも……」

「そうだ。受け取れ、返されても困る」

「それなら……」


 喰村さんは引かないし、編集長が言う通り無下にもしたくない。渋々、封筒を受け取り、カバンの中に入れた。

 五十万、かなりの大金だ。働き始めてから四年経つが、こんな大金を受けとったことはない。


「それで、俺の仕事はこれだな」

「洒落怖、妖怪、怪異、色んな言い方をするが実体のある妖怪を捕獲する。毎月、どこかの自治体から依頼が来てその都度、各地に行ってる」

「自治体の厚意でお金を受け取り、それが職業になってるが、それで補えない時は派遣バイトをやってる」

「毎回、こんなに多く貰えるんですか?」

「いや、これは上澄みだ。あの集落では一度に三人くねくねに連れてかれたことがあるからな。慎重なんだろ」


 言ってしまえば退魔師とかエクソシストとかそう言うのに近いことを仕事にしているんだ。そう考えると胡散臭いけど、その実態は狩人のようなもので、言ってることとやってることの内容が噛み合わなくて面白い。


「それで、ここからは相談だが、ヤマノケの捕獲を手伝ってくれないか?」

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