3話「ヤマノケ」

3-1 ヤマノケとは

 ヤマノケ。

 2007年にインターネット掲示板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された怪談の一つである。強烈な怪異の姿や印象的な展開で人気を博している怪談である。話の流れは以下の通りである。


 娘を連れて山道にドライブしに行った男は、山道の途中でエンジンが止まってしまった。電波も繋がらず、自分でエンジンを直すことも出来ない。車中泊をしてから、朝から歩いてドライブインに行くことにした。

 車内で寒さを凌いでいるうちに夜になった。娘が寝てしまったので、自分も寝ようとすると、声だか音だかわからないが「テン……ソウ……メツ」と何度も聞こえる。最初は聞き間違いだと思っていたが、音がどんどん近付いてきていた。

 たまらなくなって目を開けると白いのっぺりした何かがめちゃくちゃな動きをしながら車に近付いてくる。形はウルトラマンのジャミラのようでに頭がなく、足は一本しかない。

 怖くて叫びそうになったが、娘が起きないようにと思って叫ぶことも逃げることも出来なかった。

 それは車に近付いてきたかと思うと、通り過ぎて行った。安心して娘の方をむくと、助手席の窓の外にそれが居た。近くで見たら体に顔がついており、恐ろしい顔でニタニタと笑っている。


「この野郎!」


 俺が怒鳴りつけると、そいつは消えて娘が跳ね起きた。怒鳴り声で起こしてしまったことを、娘に謝ろうと思ったら、娘が


「はいれたはいれたはいらたはいれたはいれたはいれたはいれた」


 とブツブツ言っている。異常な状況に、この場を離れようとエンジンをダメ元でかけると、エンジンがかかった。急いで来た道を戻っていく。娘は隣でまだ、「はいれたはいれた」と呟いていた。


 このまま、家には帰れない。お寺に駆け込むと、住職は娘を見るなり「何をやった」と怒鳴った。住職は寺に泊まっていけと言い、娘と泊めてもらうことにした。

 住職曰く、娘は「ヤマノケ」に取り憑かれたらしく、四十九日経ってもこの状態なら、一生このまま正気に戻ることはないと言っていた。住職はどうにかして、ヤマノケを追い出すように努力すると言い、俺は娘を住職に預けた。

 遊び半分で山には行かない方がいい。


 ネット上の怪談の中でも詳細に見た目が描写され、何よりも「テンソウメツ」「はいれたはいれたはいれた」と言う印象的な怪異のセリフがあり、それ故に多くの人の記憶に鮮烈に刻まれている。


 ヤマノケは姿はあるが、人に取り憑く存在である。取り憑いている以上、実体はないのかもしれない。ただ、もしも食べられるならどんな味がするんだろうか。

 今回の話は、山に訪れた編集長と私が、喰村さんと遭遇するところから物語が始まる。



第三話「ヤマノケ」

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