2話「くねくね」
2-1 くねくねとは
くねくね。
2003年からインターネット上で語り継がれている怪談であり、洒落怖の一つとされている。初発は怪談投稿サイトに投稿されたものであり、そこから2chのオカルト板の洒落怖スレに転載された。厳密には洒落怖ではないが、洒落怖スレに投稿されていたことから洒落怖として扱われることになった。
話にはいくつかパターンがあるが、私が覚えている話は以下の通りだ。
これは、小さい頃、母の実家に帰省した時の話である。年に一度、お盆にしか訪れることがない母の実家で、兄と一緒に外で遊んでいた。都会とは違う自然豊かな景色に大はしゃぎをしていると、兄は変な方を見て指をさしている。
その先には畑があり、案山子が立っていた。別に案山子なんて珍しいものではない。何か案山子に細工があるのかと兄に尋ねると
「その向こう」
遠くだからよく見えないが、人くらいの大きさの白い物体がくねくねと動いている。僕は一瞬、奇妙に感じたが、兄と話していく中で「風を使った新しい案山子」と言うことで納得した。
しかし、風が止んでも、くねくねと動いている。僕と兄は尚更、不思議になり、兄は家に戻って双眼鏡を持ってきた。兄はワクワクした様子で、双眼鏡を覗いた。兄の顔がみるみる真っ青になっていく。
冷や汗をだくだくと流して、持っている双眼鏡を落とした。
「何だったの?」
兄に聞くと、上擦ったぎこちない声で「わカらないホうガイい」と答えた。兄はそのまま、家に戻っていった。
兄が落とした双眼鏡が視界に入る。兄の変わりようから、くねくねと動くものの正体に興味はあったが、それを見る気は起きない。意を決して双眼鏡を覗こうとすると、祖父が焦った様子でこっちに走ってきた。
「お前、あいつを見たのか!」
鬼気迫る様子で尋ねてきて、僕は挙動不審になりながらも「見てない」と応える。すると、祖父は安堵した様子で「良かった」と呟いた。
わけもわからないまま、家に戻され、家に帰ると皆が泣いていた。
何が起きてるのかわからなくて、部屋の奥に行くと、兄が狂ったように笑いながら、あの白い物体のようにくねくね、くねくねと踊っていた。
家に帰る日、祖母が両親とこんなことを話していた。
「お兄ちゃんはここに居た方が暮らしやすいだろう」
「都会だと狭いし、世間のことを考えると数日も持たん。うちに置いといて、何年か経ってから、田んぼに話してやるのが一番だ」
それから、兄とは会っていない。来年、おばあちゃん家に行ったとしても、もう前の兄とは会えない。ずっと、仲良く遊んでいたのに。
インターネット上の怪談は、特性上、起源がわからないことが多い。その中でも、くねくねだけは発信源が特定されており、発信源から創作と推定されている。
創作、つまりは誰かに一から作られた架空の存在。架空の存在故に、このくねくねがどんな味がして、どんな食感がして、どんな食べ方をするのかは誰もが知らない。
今のお話は、存在しないはずのくねくねを見つけた喰村さんからの連絡から始まる。
「くねくね」
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