洒落怖をいっぱい食べたい!

人子ルネ

1話「巨頭オ」

1-1 廃墟の帰り道

 真夜中、山の中で迷っている。

 オカルト雑誌の取材で山奥の廃墟に行かなければいけなくなった。危険を避けるためにも、日中に取材を終わらせようと思っていたが、想像以上に時間がかかってしまって、すっかり、日は沈んでしまっている。


「何もなかったっすねぇ」

「そんなもんだよ。取材なんて何もない方がいい」


 幸い、ホームレスが住み着いていることも、反社が拠点にしていることもなかった。前者なら彼が鎮圧できるが、後者だったら最悪死ぬ。

 取材なんて、ほとんどが何もないし、何かあっても人が怖いだけだ。それなら、何もないことより、幸せなことはない。


「でもでも、何もなかったら記事に出来なくないですか?」

「何枚か写真撮ったでしょ。その写真から顔に見えそうなやつを探して、それで記事書くの」

「インチキじゃないですか!」


 私もインチキだと思うけど、馬鹿正直に書いても誰も見てくれないし、楽しんでもくれない。誇張するだけで雑誌が売れるなら、私たちはそれをしなければいけない。それが仕事だから。


 それにしても、すっかり迷ってしまった。廃墟までの道が整備されておらず、道なき道を切り開いて歩いてきた。流石に迷うと思って目印の写真を撮りながら来て、帰りも同じ道を歩いていたつもりだったけど、どこかで道を間違えてしまったようだ。

 取り敢えずは森の外に出ようと真っ直ぐ歩いているが、一向に車の音は聞こえないし、電灯も見えない。


「私たちはどこに向かっているんだろうね」

「おかしいっすよねぇ。目印通りにあるって来たんすけど」


 似た目印に惑わされてしまったのだろう。

 素人の我々には、木の区別なんてつかない。しかも、暗闇だ。スマホのライトだけを頼りに歩いている。私たちの鑑識眼なんて働かない。


「お、あの看板」


 休まず歩いていると、彼が看板を見つけた。指差した看板は道中に見つけた赤い看板だった。

 確か、車から十数分でこの看板を見つけたはずだ。つまりは、この道を辿っていけば、元の道に合流することが出来る。


 走り出した道永くんを追いかけると、彼は口をパクパクと動かしながら、看板を指した。

 何かを訴えている。

 私もその看板を覗き込むと、「この先、15km」と書かれていたはずの看板に全く違う文字が書かれていた。


「巨頭オ」

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