【詩集】二つの『雨』
藤堂こゆ
夏の庭より
雨が
窓硝子には無数の雨滴が貼りついて
緑の庭を揺らしている
さきわう春の花々は散り
あどけなさを失った濃い葉影が
娘の顔を暗く染めている
雨が蕭蕭と降っている
慈悲の糸は地面を叩く
不可算の粒は砕け散り一つに融け合う
それを捕え得るのは豊かな土のみ
未だ撚られざるその糸を
娘は白い素肌に纏う
雨が蕭蕭と降っている
それは遥か遠い世界の影
目を凝らしても見えない
耳を澄ましても聞こえない
こんなに確かに感じられるのに
全ては借り物だなんて
雨が蕭蕭と降っている
雨は平等を知らない
ただ無意に平穏をもたらす
細波の夜に立つ娘
その指は幻を求める
その眼はまだ見ぬ星を映している
泪は蒼然たる地に還る
雨は蒼茫たる天に還る
水がもたらす恵みと災い
命あることの喜びと恐怖
雨は蕭蕭と降っている
その向こう遼遠の彼方をしめしている
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