その職場課題はリテラシー向上委員会にまかせてください?
soboroharumaki
第1話 プロローグ「向日葵の涙」
「バタ、バタバタ、バタタタタ・・・」
急に降り出したゲリラ豪雨のような濁音が部屋の中に響いた。
週半ばの水曜日、昼休み明けのアンニュイな空気は張り詰めた。
彼女の大きな瞳にも蓄えきれなくなった涙は、大粒の滴となって床に溢れ落ちた。
お陽様を仰いで咲く向日葵を思わせる彼女の印象は今、頭を垂れた初秋の枯花のイメージを僕に見せた。
所在なく彷徨う視線を床に落とすと彼女の足元を濡らす滴が目に入った。僕の何処か深い処で行方知れずになっていた記憶の断片が見えたような気がした。それは永い間、索引を失っていたある少女との記憶を僕に呼び覚ました。
「犯人、⋯見つけて欲しい?」
覚悟なく口をついた僕の言葉に、
彼女は、「はい」と強い意志を湛えた声で応えた。
あてなどない。自信もない。
在るのは、理由のわからない衝動と朧げな少女の記憶だけ。
記憶の中で少女の傍らにいる少年が、僕に問いかけていた。
「おまえはまた、同じ後悔をするのか?」
僕にだけ聞こえるその声に、軽く息を吐いて覚悟を決める。
「わかった」
そう応えると、僕は彼女を残して部屋を出た。
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