彼氏試験物語
かごのぼっち
彼氏試験?
「川神さん、僕と付き合ってください!!」
言った……ついに言った。僕の高校生活最後の大勝負だ。たとえ振られても高校生活をあと少し我慢するだけだ。仮にOKなら僕の人生の転機の訪れだ。
さあ川神さん、返事をくれ!!
「……一度」
「……はい?」
「一度、試験をしてもいいかしら?」
「……試験?」
え? 試験? 交際するのに試験? 僕は何か試されるってこと?
「そう試験」
「えと、……いったいそれはどのような?」
「一日だけ、私とデートしてくれる? それで決めるわ」
「えっと……デート?」
「ええ、デート。もちろん、あなたにも私の試験をしてもらうわ、山神くん?」
「つまり、お互いにデートした感じで、付き合うかどうか決めるってことですか?」
「ええ、そう言う事になるわね? 不服かしら?」
「いえ、望むところです!!」
「良かった。それじゃあ、予定日は今週日曜日で良いかしら?」
「かまいませんよ!」
「……待ち合わせ場所は十一時に秋葉で良い?」
「秋葉……ですか?」
「何か?」
「いえ、何でもありません! それでは明後日の日曜日、十一時に秋葉、ヨドバシ前のベンチ辺りにいます!!」
僕は川神さんとのデートの約束を取り付けることに成功し、お互いのSNSをフレンド登録した。
しかし付き合えたわけではない。これは試験なのだ。このデートを失敗するわけにはいかないのである。
とは言え、僕はこれまでに一度も彼女がいた事がないので、デートなんてしたことがない。一般的なデートで考えると、映画でも見て、カフェに入ったり、ランチやディナーを食べたりするのだろうか。
彼女の情報が乏しい。彼女の趣味は? 普段着は? 好きな食べ物は? 何の情報もない。これは予めSNSで聴いておくべきだろうか?
家についた僕は、明日のプランを立てるべく、川神さんのリサーチを始めた。
『川神さんの好きな食べ物はなんですか?』
すぐに既読がついた。そして返事が返ってくる。
─ポコン♪『教えない』
ええ〜!? そんなあ……いや、これも試験なのか? そう考えると甘えてばかりもいられない。とにかく攻めよう!
『川神さんは明日、どんな服装で来ますか?』
またすぐに既読がついた。が、今度はすぐに返信がない。理由を送ってみる。
『川神さんの隣りを歩くのでそれに合わせたいなと思いまして。カジュアルとか、可愛い系だとか、ザックリで良いので教えてください』
よし、真っ当な理由だろう。すると程なく返信があった。
──ポコン♪『教えない』
……これは手厳しい。
彼女は別に高飛車とか言うわけではない。そしてとびきり可愛いとか、高嶺の花だとか言うものでも無いとは思う。僕は真面目そうで文学少女的な彼女が好きなのだ。髪は後ろでひとつ括りにしていて、眼鏡っ娘。化粧はおそらくしていない。文化系なので色は白いが顔の作り若干薄いだろうか。手脚は細く、胸は申し分程度あるだろうか。そして、腰からおしりにかけてのラインはとても魅力的だ。写真に撮りたいくらいに。
ずっとウェブ小説を読んでいて、休み時間はいつもひとりだ。帰りもひとりで帰っているところしか見ていない。友達はいるのだろうか? あまりクラスメイトと話しているところは目撃したことがない。またはSNS友達がいるのかも知れない。が、そんな事はどうでもいい。
僕が彼女が好きになったのには
中学時代の彼女のエプロン姿に惚れたからだ!
あれは家庭科の時間だった。彼女のエプロン姿はまさに僕の好きなアニメに出て来る眼鏡メイドのキャラにそっくりだったのだ!!
いや、……実際にはかけ離れていた。学校にメイド服着て来るやつなんていない。しかし、アニオタな僕の変な性癖と言うのだろうか、エプロン姿の川神さんがその眼鏡メイドに見えて、実に萌えたものだ。
アニオタな僕が彼女の試験に受かるかどうかわからない。僕の変な性癖を知って現滅するかも知れない。しかし、この気持ちは抑えられないのだ。
彼氏試験。着の身着のままの僕で勝負だ!
次の更新予定
彼氏試験物語 かごのぼっち @dark-unknown
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼氏試験物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます