辺境のリーフ

カイン・フォーター

第1話

人生何が起こるか分からないもの。

まさか自分が…なんてことが起こるのが世の常。

実際、まさか私が飛行機の事故に巻き込まれるなんて思ってなかった。

だって飛行機が堕ちるなんて、宝くじが当たるより低い確率だって聞いたことがあるんだから。

…そんな低確率を引くなら、宝くじを当てたかった。

でも、起きてしまったことは変えられないし、受け入れるしか無い。

幸いなことに飛行機事故を知った神様が温情で記憶を持ったまま転生させてくれるらしい。

ただし同じ世界に転生させると面倒な事になるから異世界だそう。

そんな理由で私は異世界に転生した。


「リーフ。ちょっと来てくれない?」

「はーい!」


私のこっちでの名前はリーフ。

リーフとしてこの世界で前向きに生きると決めてから、極力前世の事は考えないようにしてる。

今の私は大陸の辺境にある国の更に辺境の地で生きるエルフ。

人口が200人程度の村で暮らす私は、いつも農作業や狩りなんかをして村の生活に貢献している。


「見てよリーフ。まーたササ麦の調子が悪いの」

「う〜ん…また病気だね。一旦畑を休ませて、私の力で浄化しないと来年はもっと酷いかも?」

「そう…今年はなんとかなりそう?」

「病気を治すことは出来るよ。ただ、土は穢れたままだからまたすぐに病気になるけどね」


そんな話をしつつ、この村の主食であるササ麦に触れる。

そして、転生した時に手に入れたスキルを使用してササ麦の病気を治した。

この世界にはスキルとステータスの概念がある。

そんな世界に転生したものだから、私も無双できるのかと思ったけど…まあ、そんなことは無かった。

私は物語の途中で出てくる、転生者ってだけで大して強くないモブ枠。

でも、その役回りで困ったことはない。

だって別に私戦いとか興味無いし、怪我もしたくないし。

代わりに私が手に入れたスキルは『自然を愛すもの』と言うスキル。

簡単に言うと、自然に干渉して様々な調整ができる中々のぶっ壊れスキル。

しかし、戦闘能力はほぼ皆無。

見ての通り植物の病気を治したり、病気で汚染された土を綺麗にしたりするくらい。

他にも出来ることはあるけど、戦闘向きじゃないし、強いて言うなら周辺の土地を不毛の大地にしてしまう事で首をじんわり絞めるくらい。

そのため、私は基本暴力沙汰を避けてきた。


「とりあえずここのササ麦は治したよ。来年は別の仕事を探してね?」

「木こりでもするかねぇ…斧を借りてこなきゃいけないね」


村での私の評価は農作業の味方。

畑の魔女なんて呼ばれたりする。

農作業で困ったことがあれば、大抵私が何とかするからね。

あと、私に出来ることはそれだけじゃない。

自分の家に戻ってくると、バケツを持って井戸に向かい水を汲んで家に戻る。

そして、家の裏にある私の庭――苗畑の植物達に水をやる。

私の主な仕事は畑の調整、作物の病気退治、植林だ。

村のみんなに暇な時に作ってもらっている鉢に栄養たっぷりの土と木の実を入れて、成長促進の効果を与えると1ヶ月で鉢が小さいくらいに苗が成長する。

その苗を森に運び、植林していくんだ。

森に植えたあとも何度も成長促進を掛けることで、1年で20年は生きた木と同じくらい成長する。

その木は村の木こりたちが伐採し、村で使う木材やこの村の収入源として利用される。


「リーフさん。今日の植林は終わりました」

「ありがとうリッツ。じゃあ私は森に行くから、何か用事がある人が居たら帰ってきたら呼んで」

「分かりました」


私の助手のリッツ。

この村に10人しか居ないエルフの1人で、私とは10歳差の男の子。

私の年齢?レディーにそれは禁句だよ。

彼は私がいちいち出来ない作業をやってくれる優秀な助手で、おかげで成長促進の力を使うだけで私の仕事は終わる。

森にやって来た私は、成長途中の木々全てにスキルを掛けていく。

1時間ほどで作業は終わった。

そして村に帰ってきたら、今日の仕事はおしまい。

村の人達とおしゃべりをしながら、1日をのんびりと過ごした。

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辺境のリーフ カイン・フォーター @kurooaa

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