第40話 学園祭について
十三日~十六日、俺は家族みんなで母方の実家に帰省していた。
そうして、二泊三日の帰省から帰ってきて一日後の八月十七日。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃ~い!」
平日なので、両親はいつも通り出勤して、光樹も部活に行くため学校に向かった。
「......さて、俺も行くか」
俺は通学カバンを持って立ち上がり、家を出て学校へと向かう。
何故俺が学校へと向かっているのか、それは、アニ研のグループラインで池沢先生から今日部室に集まるよう言われたからだ。
内容は、九月末に開催を控えている学園祭に向けてアニ研は何をするのか話し合うらしい。
学園祭、うちの高校の学園祭は中学三年生の時見学で一度行ったことがあったのだが、かなり力を入れていた印象を受けた。結構面白かったし。
俺はバスに乗って学校に向かう、バスに乗る時間は大体十五分くらいだ。
学校に行くのは久しぶりだから、何か少し変な感じがするな。ふわふわしているというか、そわそわするというか。
俺はバスに揺られながら、そんな落ち着かないそわそわした感覚のままで学校へと向かった。
コンコン
「失礼します」
俺は学校に着いて部室の前まで来て、扉をノックして部室の中へと入る。
「あっ、来た来た、おはよう~」
「おはようございます」
部室に入ると池沢先生が挨拶をしてくれたので、俺も挨拶を返す。
部室には池沢先生の他に優希、小鳥遊さん、青木部長がいた。あと来ていないのは琴音だけか。
そうして、俺は席に着いてしばらく待っていると部室の扉がノックされた。
「失礼します」
「あっ、おはよう~」
「おはようございま~す」
琴音が池沢先生に挨拶を返しながら部室に入ってきた。
「じゃあ、みんな集まったことだし、学園祭について話し合おうか」
池沢先生はマジックペンを手に取って、ホワイトボードに何か書き始める。
「まず学園祭についてなんだけど、九月の末、二十九日と三十日の二日間に渡って開催されるんだよね。そして、僕たちアニメ研究部はこの部室で何かをしようと思ってるの」
「そういえば、去年はどんなことをしたんですか?」
優希が挙手して質問をする。
「えっとね~、基本的にはこれまで作った二次創作物の展示かな。ただこれ、ちょっと失敗しちゃってさ......」
失敗?何だろうか?
「これ、イラストとかは見られるんだけど、小説の方は全く読まれなかったんだよね」
「えっ、小説もそのまま展示したんですか?」
「うん、何枚かに分けてね」
壁とかに張ったりして展示したってことか?そりゃ読まれないだろ。
「だから、次は小説は展示じゃない方がいいと思ってね。何かいい案あるかな?」
池沢先生の質問を聞いてみんなで考えていると、優希が何か閃いたようで言葉を発する。
「展示じゃなくて配布、小説を紙の本にして配るっていうのはどうでしょうか?」
「あっ、それいいかもね!興味がある人は持って行ってくれるかも!」
確かに、配布なら展示よりも読まれる可能性が高いし、結構いいかもな。
「青木君と田中君、小説は配布ってことでいいかな?」
「は、はい」
「はい、いいです」
池沢先生は、アニ研で二次創作物の小説を執筆している俺と青木部長に大丈夫かどうかを聞いてきた。俺たちは肯定を示すために軽く頷く。
「あと、去年は無かったフィギュアなんだけど、これは展示ってことでいいかな?」
「はい、大丈夫です」
アニ研では主にフィギュアを製作している琴音が頷く。
「よし、じゃあとりあえずはイラストとフィギュアは展示、小説は配布ってことでいいかな?」
「「「「「はい」」」」」
俺たちは一斉に返事をした。
「......それで、もう話しておきたかったことは全部話し終わったんだけど、この後どうしよっか?」
「えっ、せっかく集まったんだからもうちょっと学園祭のことについて話し合いましょうよ」
さすがにこれだけしか話し合わないで帰るってのはちょっと損した感じだしな。せっかくの夏休みなのに学校に来たんだから。
「うーん、それもそうだね。じゃあ、今回の学園祭で出そうかなーって考えてる作品がもうある人は手挙げてみてくれない?」
池沢先生の質問に、俺を含めて部室にいる全員が手を挙げた。
「おおー、すごい!みんなもう完成してるんだ!」
「いや、俺はまだ完結まではしてないですよ」
俺は池沢先生の発言を訂正する。具体的に言うと、俺が今書いている小説は完結の目処自体は立っているが完結はしていない状況だ。あと少しで完結するけれども。
「あっ、そうなんだ。学園祭までには完結できそう?」
「はい、大丈夫です」
「そっか、よかった。完結できたら僕の方で印刷して本みたくしてみるから、完結したら教えてね」
「はい、わかりました」
俺の小説が本に......なんかちょっと嬉しいかも。
「あ、あの。僕のはもう完結しているので、夏休みの間に持ってきて、印刷とかしてもらってもいいですか?」
「あっ、うん、いいよ~。僕はいつも大体図書室にいるから声掛けてね」
「は、はい」
青木部長はもうすでに小説は完結しているようだ、そういえば、青木部長が書いている小説って何の二次創作物だっけ?
「青木部長。青木部長が書いてた小説って何のアニメでしたっけ?」
「あ、えっとね、僕が書いてるのは、『殺し屋革命』っていうアニメのオリジナルストーリーだよ」
「あっ、そうでしたね!」
『殺し屋革命』とは、殺し屋連盟のトップエリート集団『
生まれたときから殺し屋として生きてきた主人公、周囲の殺し屋から敬意と畏怖の目で見られていた主人公は、ある時殺しの依頼から怪我をして戻ってきていたところを一人の女性に介抱してもらい、それがきっかけでその女性に一目惚れをしてしまうところから物語が始まるのだ。
しかし、大切な人ができると人を殺すことができなくなるという理由で、殺し屋連盟には「恋をしてはならない」という掟があった。
主人公はその掟を無くすべく、まずは周囲の殺し屋、『
そしてこのアニメ、バトルシーン、アクションシーンがとにかく優秀なのだ。作画、音、声などの技術のすべてを駆使して迫力のあるアクションシーンを実現させていた。
俺は読んだことはないのだが、漫画の方も作画力がかなり高くアクションシーンも迫力満点と聞いている。機会があればぜひ読んでみたいな。
「あ、あの、田中君、良ければ原作の漫画読んでみる?」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます!」
「次学校に来るときに連絡するから、そのとき持ってくるよ」
「はい!」
ん?ってことは、俺もそのとき学校に行かなきゃならないのか?ま、いっか、漫画貸してもらえるんだし。
「じゃあ、次はイラストについてだけど......」
そうして、俺たちは一時間ほど学園祭のことについて話し合った。
結果的に、小説は十五~二十部ほど作成、イラストは一人につき五枚ほど、合計十枚ほどを展示、フィギュアは大きさがそれほどないので、できた分は全部展示することになった。
「じゃあ、またね~」
「さようなら~」
俺たちは部室を後にして、それぞれの帰路へとついた。
少し気は早いのかもしれないけど、学園祭、楽しみだな~。
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