第13話 打ち上げ 2
・大山「えっと、ツインハンバーグにエビフライ二本とチキンステーキをトッピングで!あっ、あと、ライス大盛り!〈税抜1865円〉」
・琴音「この『
・優希「本格派カツカレー単品を一つお願いします〈税抜820円〉」
・樹(俺)「チキン南蛮定食、ご飯大盛りで〈税抜455円〉」
・米倉さん「チキンドリアを一つお願いします〈税抜650円〉」
・荒崎さん「カツとじ定食を一つお願いします〈税抜780円〉」
・小鳥遊さん「あ、あの、こ、これの小盛りを一つ......『
「わかりました、少々お待ちください」
店員さんが伝票機を後ろポケットに入れて去っていった。
というか、頼んだメニューだけでもそれぞれの個性が出ているな、うん。個性が強すぎる奴もいるが。
「大山、お前頼みすぎじゃね?」
「え?これくらい普通だろ?部活のみんなはいつもこれくらい食うぞ?」
「いや、運動部、それも野球部の胃袋を普通ってことにしたらダメだろ」
「?そうなのか?」
わかってない、こいつ、絶対にわかってない。
「そういえば、二人はコラボメニュー頼まなかったんだね、意外~」
琴音がテーブルに肘を立てて手に頭を乗せ、言った。
「だって、なあ」
「うん、高いからね」
「まあ、それは否定しないよ」
俺と優希は互いに顔を見せあい頷く。それを聞いた琴音は腕を組み、これまた頷く。
「あと、他のメニューと味とか大差ないしな、値段はかなり差がつくのに」
食ったことはないが。
「あっ、食べたことないくせにそんなこと言うのやめた方がいいと思うよ~!」
「うっ......じゃあ、やっぱり違うのかよ、他のメニューとは」
俺は狼狽えながら尋ねると、今度は琴音が狼狽える。
「うっ......まあ、それは、それぞれ、かな?美味しいのもちゃんとあるよ?まずさ、コラボメニューってのは美味しさが一番大切ってわけじゃなくて......」
「でも、微妙なものもあったってことだろ?」
「まあ、そうだけど......」
俯く琴音。ちょっと言い過ぎたか?
「ごめんごめん、少し言い過ぎたな」
「いや、確かに樹の言い分にも一理あるよ。でもね?作中に出てきたご飯が現実で食べられるっていうのは、なんかわくわくしない?テンション上がらない?」
あれ、全然落ち込んでなかったな。謝り損?
「まあ、気持ちはわかる。でもさ、全然アニメの中で出てきてない飯も出てくるんだよな。アニメのキャラクターに寄せて作っているけど、ちょっと無理やりじゃね?みたいなの」
「ま、まあ、確かにそういうのもある。けどさ、今日の『
「おーい、お前ら、せめてみんなでできるような話題にしろよ。今この会話理解できてるの半分くらいだと思うぞ」
コラボメニューについての琴音との議論につい熱中してしまっていた。
周りを見てみると、ぼーっとしていたり理解できていないような顔をしている人が三名。
「ごめんごめん、なんか白熱しちゃってて」
「みんなでできる話題か......優希、なんかないか?」
「えっ、俺?えーと、じゃあ、みんな、テストどうだった?」
優希がなんとなく出したその言葉を聞いた途端、場の空気が一瞬にして変わった。それは冷たく重い、負の空気。ここだけ空気の色が違う気さえしてくる。
「......なんで、そんなこと聞くのかな?」
重い口をゆっくりと開いたのは、琴音だった。
「え、いや、別に無理にとは......」
「え?自分で聞いておいて、何言ってるの?もう、後戻りはできない......」
ホラーになってる、怖いって!テストごときで怖いって!
「平均点が五十一点、赤点ぎりぎりの科目もあったんだよ......やばい、絶対に怒られる、どうしよう......」
琴音は頭を抱えて下を向く。まさに絶望者の恰好そのものである。
「なんだ、結構いいな!俺なんか平均点四十三点だったぞ!奇跡的に赤点はなかったけどな!これでスマホ没収にならなくて済んだ!いやー、よかったよかった!」
......全員絶句。
ここに猛者がいた、瀕死の重傷のくせに余裕な顔している化け物がいた。
この場にいる俺たち全員は、大山の発言と態度に一瞬言葉を失った。
「......琴音もあれくらいポジティブになれば?」
「......いや、なるべくああはなりたくないな」
「ん?どうした?そんな暗い顔して。そういえば、みんなはどうだったんだ?俺は百七十三位だったぞ」
「あ、私は百十八位です、はい」
大山の、テストのこととかまったく気にしていない様子を見ていて、琴音もどうでもよくなったようだ。真顔で自分の順位を言った。
「俺は五十八位だったな、俺にしてはよくできたほうだと思う」
「私は四十五位だった。少しケアレスミスが目立っていたので、次はそこを気を付けようと思う」
荒崎さん、俺のあとで俺よりも順位良いの言うのやめて?それに、俺はよくできた、とか言ってんのに、俺より順位良い人が、ミスが多かった、なんて言わないで。なんか恥ずかしいから。
「わ、私は三十一位でした」
「俺は八位だったよ」
「私は五位だった」
小鳥遊さん、優希、米倉さんの順で自分の順位を言っていく。
「なぜか段々と順位が上がっていってるな、というか、みんな順位高くない?」
「確かに!半分が五十位以内っておかしくない?」
おい、俺はその中にぎりぎり入っていないんだが。意図してか、意図してなのか?
「お待たせしました、チキン南蛮でございます」
「あ、はい」
料理が運ばれてきたので、俺は小さく手を挙げて自分のものであることをわかるようにする。
店員さんは俺の前にお盆を置く。
「こちら、カツカレーでございます」
「あっ、俺です」
次は優希が頼んだカツカレーが来た。意外とデカいな、いや、底が浅いからか。
「「いただきます」」
俺たちは手を合わせてみんなよりも先に食べ始める。
「......旨そうだな、少しくれないか?」
予想通りというべきか、大山が俺たちにねだってきた。ファミレスなんだから一気に来るだろうに、もうちょっとくらい待てよ。
「ほら、みそ汁くらいならやるぞ」
「おおっ、ほんとか!ありがとう!」
大山は満面の笑みを浮かべて俺からみそ汁を受け取ると、箸を使わずにそのまま一気飲みした。熱くないのか?さっき来たばかりだからかなり熱々だと思うんだが、湯気出てたし。
少し心配していると、どこからか音楽が聞こえてきた。何だろうか?
「お待たせいたしました」
何かと思っていたら、配膳ロボが来ていた。さっきの音楽は配膳ロボのか......なんで音楽鳴らしているんだ?
「私のか」
「あっ、ごめん荒崎さん、私のも取ってくれない?」
「ん?ああ、わかった」
配膳ロボは料理を席まで持ってくるだけで受け取るのは頼んだ人の役割だ。だから、配膳ロボから席が離れていて受け取ることが難しい米倉さんは、一番近かった荒崎さんに頼んだわけだ。でも、米倉さんが荒崎さんのことを怖がらないなんて、少し驚きだな。
「俺のはまだか?遅いな」
「そんなこと言わなくてももうすぐ来るって」
大山、飯のことに関してはせっかちだな。
「ってあれ?ロボの後ろに何か書いてあるよ?」
琴音が指をさした方を見ると、配膳ロボの後ろに何か書いてある紙が貼ってあった。
「ほんとだ、えっと、ロボ助?名前か?」
随分適当な名前だな、もうちょい考えろよ。
「次はロボ太が来るかもよ」
「まさか」
「お待たせいたしました」
「ってもう来た!」
ロボ助とちょうど入れ替わるように来たな。
「あっ、私のだ!」
「わ、私のもあった」
今度は琴音と小鳥遊さんが頼んでいたラーメンが来た。
ぐぐ~~~!
「俺のはまだか?」
「もう次だって、っていうか腹の音デカすぎだろ!」
「ごめん荒崎さん、ちょっと手が届かないから取ってくれる?」
「ああ、わかった。小鳥遊のも取ろうか?」
「へ?あ、えっと、はい、お願いします......」
まだ荒崎さんのことが怖いみたいだ、でも、少しはましになったのかな?
「さて、あのロボの名前は何かな?」
ラーメンよりもロボの名前かよ、まあ、俺も少し気になるが。
荒崎さんが配膳ロボが持っていた料理を取ったので、配膳ロボは戻っていく。さあ、名前は......!
『ロボ子』
「「まさかの女の子!」」
二台目の配膳ロボは女の子だった。よく見てみると、頭にリボンが付いている。
「じゃあ、食うか」
「そうだね」
さっきのことがなかったかのように、俺たちは料理を食べ始めた。
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