ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ヒロインたちと悪役令嬢とラスボス転生王子~
霧風 マルサ
第1話 乙女ゲームとラスボス王子!
夕日が沈みかけた時刻。僕は仕事帰りのバスに揺られ、今日1日の事を思い出していた。
嫌味な上司の叱責、先輩・後輩達の無理難題な仕事の押し付け等々、嫌になるとこばかり、流石に社畜魂が標準装備されている僕でも、さすがに吐き気を催し、二時間の残業で留め帰宅することにした。
バスの中で、途中で仕事を投げ出した罪悪感と解放感に、今はゆっくりとしたいと思っていたが、ある一部の集団の女子高生達がうるさくて、それどころではなかった。
「クックククク…… 見てよ。理香のヤツまた首チョンバされちゃったよ」
「うるせー! テメーだって人のこと言えるのかよ! テメーだって追放されたじゃねぇーか!」
女子高生達が何やらゲームをしているようで、どんなゲームをしているかわからないが言い争いをしている。
「クッソー! この腐れ王子! イケメンじゃなきゃぶっ殺してるところだ!」
「アンタがただ下手なんじゃないの? 『プリスト』のセンス無いじゃん」
「沙希! アンタだって、クリアしてないくせに人の事言えねぇーだろ!」
「アンタら、もうその辺にしたら? ここバスの中だよ。こっちが恥ずかしいよ」
「「ごめん……」」
言い争っていた二人は周りからの冷たい視線に静まり返った。
口の悪い二人を止めてくれた仲間であろう女子高生に僕は最大限の賛辞を送りたい…… 名もなき聖女よ。二人を止めてくれてありがとう。もう、うるさいからソイツらと一緒に次のバス停で降りてくれ!
「アンタのせいで紫音に怒られたじゃんか」
「私に言ってるの? もとを言えばアンタが下手なのがいけないじゃないの!」
「な、なに~ アンタも『プリスト』クリアーしてから言ってよ」
「もう、二人ともうるさいって! アンタら仲が良いのか悪いのかどっちかにしたら?」
再度バトルを繰り広げる二人。レフェリー状態の彼女。三人でお笑い芸人になったらどうだ?
「だって…… 紫音、沙希のヤツが……」
「理香! 人のせいにするんじゃねぇーよ!」
「二人ともまた、同じ事繰り返すなよ……」
「「はい……」」
二人はまた静かになったが、いつ火山が噴火するかわからんが、二人を止めて黙らせたレフェリー聖女に拍手を送りたい。
『プリスト』かぁ~。通称『プリスト』は『プリンセス ストーリー~星の輝く夜空をあなたと共に~』という長いタイトルで、中世ヨーロッパと思わせる世界観を舞台とした学園乙女ゲームだ。乙女ゲームには珍しく、プレイヤーはメインヒロインをはじめ5人のヒロインの中から1人選びプレーをする。攻略対象の男は10人! ゲームメーカーは『最低50回は楽しめる最高のラブストーリーをあなたに』を謳い文句に発売をした。
その攻略対象断トツの人気ナンバー1は『アレク・ガルラ・フラスター』という超イケメン王子だ。ゲームメーカーによれば、絶対に攻略出来ないラスボス! と言っているだけあって攻略が激ムズ鬼畜仕様となっている。1ヶ月に一回はアップデートされ攻略難度が上がって行く、コイツを攻略するのは廃人必至の至難の技とまで言われている。プレイヤーの評価は、
難しすぎる。
大人の女性を泣かせるな。
やりがいがある。
素人はやるな、やるのはガチ勢。
イケメン大好き♡
など賛否両論だ。しかもよくわからんが小説、マンガ、アニメ、CD、音楽配信など人気も凄まじい。
なぜ僕がそんなに詳しいかと言えば、妹が泣きながらギャルゲープロ&ギャルゲーマスターの僕に、この王子の攻略を頼んできたのだ。
兄として可愛い妹の為、そしてギャルゲープロ&ギャルゲーマスターのプライドが僕を一肌脱がせた感じだ。しかし、ヤツは好感度が上がらない、イベントをクリアーしても顔色一つも変えない、最終好感度イベントをクリアーしてもバッドエンディングになる鬼畜仕様。
メーカーの悪意を感じ、この僕を『王子ぶっ殺すマン』に爆誕させてしまうほどの高難度でクリアー出来なかった僕のプライドをズタズタに引き裂いた。一時期バグじゃないかと噂になったが鬼畜メーカーはバグではない、ラスボスに相応しい高難度に設定していると発表していた。 マジかよ!
しかもだよ、王子狙いでバッドエンディングを迎えるとヒロインに待っているのは……
絞首刑、ギロチン、火炙りの刑、終身刑、国外追放のどれかがプレゼントされるというプレイヤーにトラウマをガチでブチ込んでくる鬼畜メーカーの優しさよ…… 狂ってやがる……
バスの中はあの女子高生も静かになり、バスの揺れもあり、ウトウトと眠気に誘われ目を閉じて、数分後……
『キッ キーー!! ガッシャン!!』
急ブレーキと衝撃音、それと同時に迫りくる衝撃!
当たり前一面が真っ暗になり、頭と身体が押し潰されたように痛む……
真っ暗闇から光が差し込み目の前なぼんやりとした風景が広がる。そして、ガヤガヤと人の声。その後声を上手く聞き取れない。
――おっ!? なんだ? 何が起こったんだ?
ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ヒロインたちと悪役令嬢とラスボス転生王子~ 霧風 マルサ @momoharuharu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ヒロインたちと悪役令嬢とラスボス転生王子~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます