あバズれ!オイスターソース学園!~男女比1対49999の世界に生まれ落ちて貞操観念が崩壊している史上最低の不良校に進学してしまった女装男子が次々とヤンキー女子を手篭めにしてハーレムを築くまで~

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第1話 最底辺から始まる高校生活


 前略、母上様。住み慣れた土地を離れ、都会での暮らしにも慣れ始めました。


 本日より、布都長時雨ふとながしぐれ殺幌さっぽろにある高校に通い始めます。生まれも育ちも小さな島であったボクにとって、全校生徒が1000人を超えるこの学舎は、新たな刺激に溢れています。


 今、クラスメイトが金属バットで窓ガラスを粉砕しました。隣のクラスとの紛争が勃発し、一触即発の状態です。生徒たちは酒にタバコは当たり前。先生方は注意するどころか、どのタバコが一番美味いのかを生徒と談笑する始末。


 ボクは学校を間違えたのかもしれません。どうしてこんなことになったのかと言えば、あの時、幼馴染のみっちゃんと永遠の友情を誓いあった日に遡ります。




一年前――




「おい時雨しぐれ、有名進学校に受かったんだって? おめでとう。お前は努力家だし必ず桃郷に行くと思っていたよ」


 長年の親友がボクの門出を祝ってくれている。共に幼少期を過ごした仲であり、彼は自分のことの様に喜んでくれていた。


 卒業まであと一年あるが、ボクの行きたい高校は特殊で、試験を受ければいつでも編入が可能な場所だ。中学を卒業し、次の年度に入学を果たす予定となっている。


「俺は進学を諦めて家業を継ぐよ。俺の頭では高校進学は無理だって、オフクロに言われたしな」


「なんでだよみっちゃん! 君は勉強が好きなんだろ⁉ お母さんひとり説得出来ないなんて、みっちゃんらしくないよ!」


「でも、俺の偏差値で入れる学校なんて無いだろ……!」


「ある! 殺幌には引き算と名前が書ければ入れる高校があるんだ!」


「俺一人じゃ無理さ、殺幌の過酷な環境で勉強なんて出来るはずがない……!」


「ボクも一緒に行く! ふたりでなら、どんな逆境も乗り越えられる! これまでみたいに! そしてこれからも!」


「し、時雨……! お前は俺の、最高のダチだぜ……!」


 こうしてボク達ふたりは、殺幌にある高校へ入学するべく、一歩を踏み出し




 盛大に踏み外した。




「――まさか、肝心のみっちゃんが試験に落ちるなんて……!」


 みっちゃんは答案用紙に名前が書けておらず、試験の全教科が0点だった。正確に言えば書いたのだか、字が下手くそ過ぎて採点の機械に通らなかったらしい。


 ボクは完全にみっちゃんと同じ高校に行くつもりだったので、住む為のアパートを確保したり準備を惜しまなかった。


 家が裕福ではない為、簡単には予定を変えられなかったのだ。


 全てが狂った。本来の予定ではこのアパートはみっちゃんと二人で住む事で家賃を折半し、互いにバイトをすることで生活を豊かなものにしていこうという話だった。


 ボクは周辺地域のバイト情報誌を片手に休み時間を過ごしている。生活が出来なければ完全に終わる。街中に降りて来た猪や熊を食べるのも飽きたし、そろそろ野菜が食べたい。高校生でも雇ってくれる手頃なバイトは無いだろうか……。


「おい……! おい! お前だよお前! そこの奴!」


 求人情報誌に夢中になっていたボクは、飛んでくる上履きに気付くことが出来なかった。頭に上履きが命中し、その場に落ちる。


「聞いてんのかよ! チビ! 前髪が長すぎて見えねえのか⁉」


 この何度も喧嘩を売ってきているのは、クラスでも特に声がデカいワルである林田楓はやしだかえでさんだ。金髪のモヒカンスタイルにサイドを刈り上げ、ワイルドな見た目をしながらも、その褐色に負けない豊満な肉体をしている。あめりかんな制服の着こなし方をしており、黒いブラジャーをバッツリと見せびらかしているスケベな女である。これで性格が良ければ彼女になってほしかった。


「何用ですか林田さん。ボクの弁当は食べたのでもうありませんよ!」


「まだ二時間目じゃねーか! お前から弁当を恵んでもらう訳ねぇだろ! お前だけだぞ! 小中学時代の通り名選手権に参加してねぇのは!」


「なんですかそれ」


「わからねぇのかよ⁉ この学校に来る奴は大抵小中学生の間に問題を起こした奴らだ、【血だるま製造機のマサミ】や【怒れる暴走機関車ツバキ】みてぇな奴がな!」


 その二人は先日、隣のクラスの生徒を病院送りにして速攻停学になっている。まだ一週間も経過していないだろ。治安は相変わらず死んでいる。


「小中学生時代は【パシリ】や【宿題代行】と呼ばれていました」


「それは通り名じゃねぇ、お前の役割だ。そんな様子じゃ生まれてから今まで悪さなんてした事ないだろ」


「そうですね……島では優等生で通っていました。ただ、優等生なボクでもひとつだけ、クラスの皆に悪い事をしたことがあるんです……」


「精々、置き引きとかしょうもない事だろ」


「あれは、ボクが小学生の頃。道徳授業で豚の飼育をすることになった時の話です。授業の最初に、【みんなで育てて、最終的には食べる】という程で進んでいたんですけど、精肉加工所へと送られる前日、クラスの皆で多数決を取ったんです」


「どうせ可哀想になって豚を飼う事にしたんだろ」


「いえ、先生の手違いで精肉になって帰ってきました。葬式みたいな空気でした」


「どうなってんだよ! そこは一番大事な所だろ! 一番の悪はセンコーだろ!」


「みんなは豚に【ピーちゃん】と名を付け可愛がり、ボクは豚に【とんかつ】という名前を付けて懸命に世話をしました。他の人達は精々ペットの様に可愛がっているだけで、食事から小屋の掃除、排泄物のお世話まで全て押し付けられていました」


「生き方がパシリ過ぎるだろ。で、一体何をやらかしたんだ?」


「他の生徒が悲しみに暮れて、お墓を拵える中、とんかつに調理しようと思ったのですが、他の材料が手に入らなかったので仕方なく別の調理方法に切り替えたんです」


「お前サイコパスって呼ばれてなかった?」


「折角の命なので最大限に付加価値を上げようと、僕はとんかつの肉を全て吊るしベーコンに加工したのです」


「好き勝手やり過ぎだろ! みんなのとんかつだろうが!」


「知り合いの伝手を使って最大限の味に仕上げたベーコンは生徒たちの度肝を抜き、とんかつを加工処理場に送った先生も絶賛する程の出来となりました。さて、ここからがボクの懺悔となります」


「今までさんざん悪さして来ただろ、まだあるのかよ」


「吊るしベーコンの出来は最高でした。しかし、それがいけなかったのです」


「ま、まさかお前……ほかの生徒の分まで食っちまったのか……⁉」


「いえ、そこまでする程僕も食い意地は張っていませんよ、流石に、60キロ以上を全部ベーコンにしましたからね」


「びっくりさせやがって……! クラス全体が悲しみに沈んでいる時にお前とセンコーだけ妙に元気なのはどういう事なんだよ」


「僕の最大の過ちは、生徒用に少し残しておくつもりが、その吊るしベーコンを全て市場に流してしまったという事です。まぁこの程度、皆さんの悪事に比べれば大したことは無いんでしょうけど……」


「お前十分ワルだよ!」




 ちなみに売り上げ金は担任と着服した――

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