4-4(終) 「栗瀬 美鶴のホッとミルクの時間」

 というわけでお送りしてきました、「栗瀬 美鶴のホッとミルクの時間」ですけれども。さて、今週もこれが最後のお便りかな。

 ねぇー今日さぁずっとスタッフがにやにやしてるの。やめてホントにもう。ッフフ。分かってるわよリスナーの皆からもに関してのお便りすごいの知ってるんだから。あえて触れてなかったの、あ・え・て!


 じゃあ満を持してね、に関してのお便り読もうかな。

 えーと大阪府のね、40代のもち太郎さんから。


 『ミツルンこんばんは』

んんんちょっとぉ。ねぇもうホントやめてよぉッフフ。ミツルンとかもう呼ばれるの久しぶり過ぎて。えーもう1度最初から、ごめんなさい。

『ミツルンこんばんは』

はいこんばんはー。

『最近テレビやネットニュースなどで、ミツルンがアイドルだった頃の映像をよく見かけるようになりました。ボクは、ミツルンのデビュー曲からのファンです』

えーうっそぉ。ホントォ? えーもうホントありがとうー!

『今、女優としてドラマや映画などでミツルンを見ない日はありませんが、ボクの中のミツルンは、あの頃のアイドルのままです』

ねぇええーホント? もち太郎ありがとう!

『ミツルンにとっては、アイドル時代の事はどう思っていますか? 黒歴史じゃないといいなーと思います(笑)』

はい、というわけでね。ッフフフ。もち太郎ありがとう。それにね、うん。今週は特にね、こういうお手紙多かったの。アイドル時代懐かしいですーとか、アイドルの頃から好きでしたとか。


 ああーそうそう。アタシがあえて触れてないことでね、週刊誌にちょっととやかく言われたのもあるわね。『伝説のアイドル栗瀬 美鶴、新世代アイドルに嫉妬か!』みたいな奴。もーホント失礼。


 いや触れてなかったのはあれよ、触れたら野暮かなって思ってたってだけ。


 はい。「え、何々、どういうこと?」って思ってる皆さんに説明するとね。テレビでさ、歌とかダンスとかの実力で競い合う番組あるでしょ。ねーすごい奴。

 あれで、すごい熱烈な戦いがあったのよね。で、その最終決戦でね、ホント若い子なのよ? わかーい現役のアイドルちゃん……ねぇこれ名前出していいんだっけ? フフフ、イイって。

 うん、まあ出しちゃダメって言われても出す気満々だったんだけどさ。フフフ。

 そう、『赤羽根 ひなたちゃん』っていう子がね。グループでやってるアイドル? の子なんだよね。うんうん。で、その子がなんと最終決戦で、アタシのデビューソングを選曲してくれたらしくって。

 いやー見たわよ。見た見た。上手だったよねぇ。たまにいるのよね、ああいう「本当のアイドル」みたいなオーラ出してる子。すごいわぁ。


 まあ残念ながら結果としてはね、準優勝だったんだけど。

 そのひなたちゃんがアレンジして最終決戦で歌ってくれたアタシのデビュー曲が今、結果としてリバイバル人気になってるって事ね。


 はい、まあね。若い世代の子たちにはね、『女優のアタシしか知らない』って世代も多いかと思うんだけど、アタシは元々アイドルだったんですね。

 こらこら、『えぇー!?』とか言わない。わざとらしいのよ。


 で、アイドル時代の思い出かー。

 うん、まあたまにインタビューとかでもお話させてもらうんだけど、今思えばこそよ、今思えばこそよかったこともあったと思うけど、結構当時は辛かったのよね。

 元々女優になりたくて入った事務所でさ、なんか気づいたらアイドルやらされてた、みたいな売られ方だったから。アタシほら、みんなも知ってる通り、見た目よりロックでしょ? フフフ。

 そう、だから黒髪ロングの清純派アイドルで売ってくのは元々無理があったのよね。


 だから、まあアイドルを辞めるし事務所も変えるって決断をね、19歳の時にしたわけよね。もう電撃よね、電撃。


 で、アタシがこんな態度だからよくアイドル時代の事をね、「栗瀬 美鶴の黒歴史」なんて言われますけれども。これね、間違いだから。アイドルだったことは、今でも誇りよ。アイドルの頃からファンで居てくださってる皆さんにね、堂々と言えるわ。

 ただ、まあ……向いてなかったし、辛かったなって。でも、辛かったって言えるようになったのは、アタシの人生が前を向いて進んでるってことだと思うの。当時は、辛かったって言葉さえ言えなかったから。


 え? ああ、そうそう。大変だったのよねえ、自宅に保管してた初期の頃の衣装捨てるのも……え、ゴミの日に捨てるだけなのに何が大変かって? そりゃーもうね、当時は所謂『追っ掛け』がすごかったのよ。ゴミ袋なんかにアイドルの衣装をポイッて捨てたら漁られて何されるか分かんなかったの。ホントなんだから。

 大変だったなあ、あの頃。

 え、どうやって捨てたかって?

 あー……まあ、まあ……そうね、があったわけよ。うんうん。で、ってわけ。

 え、髪の毛自分で切ったのかって? そりゃそうよ。もうね、ハサミでザクーッて切ってやったわ。懐かしいな、あれも今思えば青春だったなぁ。


 でもね、重ねて言うけど、黒歴史なんかじゃないんだから。そうね、しいて言うなら脱皮よ、脱皮。

 誰でも青春の頃合いに、脱皮するでしょ? アタシにとってはそれがアイドルを辞めることだったの。


 なんかちょっとノスタルジックに青春の思い出なんかに浸かっちゃったね。フフフ。

 はい、ってわけで。今週のリクエストは……もうみんな分かったからってぐらいリクエスト来てました。フフフ。


 じゃあこの曲聞いて、今聞いてるアイドル時代からのリスナーさんも青春に帰って、甘くて苦い青春の味を思い出してください。フフフ。


 では聞いてください。栗瀬 美鶴のデビュー曲で、『キラキラの私を見つけてね』


 今週も聞いてくれてありがとうね。またね、バイバイ。



<4章・終 / 続 >

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