第6話 森の中の自然体
「雨宮さん!!昨日の写真を先生に見せたら写真部作らないか?って提案されたんだけどどうする?」
写真部?入ってみたい..。
どんなことをするんだろう。
「作りたい...入りたい..」
「分かった!!じゃあ休み時間に先生に言っておくね!!」
「うん」
そう言うと海橋くんはルンルンで
自分の席に帰って行った。
クラスメートが不思議な目でこちらを見ていたことは黙っておこう。
今日の夜、私のスマホに1件の通知が来た。
画面には海橋くんの名前がある。
要件は『明日、○△の森前に来て欲しい』
とのこと。
多分、写真を撮るのだろう。
だが、なぜ森?
そういえば森とか山とかって
天気が変わりやすいって言うような..。
まぁいいか。
というか海で写真撮ったときは
海橋くんが服を用意してくれたけど
明日はどうすればいいのだろう。
そう思った私は海橋くんにメールで
聞いてみると、『ナチュラル系で!!』と
返事が来た。
やはりこんな時に限ってメールというのは
便利だ。
そして今日、私は○△森前に行った。
案の定、海橋くんはもう来ていた。
海橋くんは私と目が合うと
「めっちゃその服いいね!!」
と言いながらこっちに走ってきた。
「じゃ行こっか!!」
「うん」
やはり今日も海橋くんの首からは
カメラがぶら下がっていた。
森の中は自然がいっぱいだった。
見たことの無い草や花。
他にも、鳥の鳴き声などが聞こえてくる。
海橋くんはずっとカメラを構えて
動物の姿を写真に収めようとしていた。
何故だかこのときの海橋くんの真剣な目は
不甲斐にもかっこいいと思ってしまう。
その時、私達の目の前に猫の親子が居た。
「雨宮さん見て!!猫だよ!!」
そう言って子供みたいにはしゃぐ海橋くん。
だが、タイミング悪く雨が降ってきた。
このままでは猫の親子が
濡れてしまうかもしれない。
そう思った私は自分が予備用に持ってきた
折りたたみ傘を使って猫の親子に
雨がかからないようにした。
すると、右からカメラの音が聞こえた。
「え」
私が驚き、音のした方を見ると
やはり海橋くんはカメラを構えている。
しかも私と猫の親子の方を向いて。
「いい....めっちゃいいよ!!これ!!」
「この構図はまじでいい!!」
「ただでさえ雨と雨宮さんは合うのにそこに猫の親子ってなるともう完璧じゃん!!」
そう言いながら興奮する海橋くん。
改めてこの海橋くんを見れば
本当に心から写真家になりたいって
思ってることが分かる。
「雨宮さんも見てよ!!」
そう言う海橋くんだが、
私はとにかく森の中ではなく
どこかに避難したかった。
「とりあえず、どっかに避難しない?」
「あ、そうだね!!」
「こっちに屋根ついてるとこあるから来て!!」
そう言って海橋くんは私の手を引っ張った。
正直びっくりしたが私は猫の親子に
小さく手を振った。
ちなみに私の傘は猫の親子のとこにある。
折りたたみ傘はまた買えばいいしね。
雨がザーザー降り注ぐ中、
私達は屋根付きのベンチに座った。
" 普通 " の男女ならこんな時、
ドキドキするのだろうか。
「今度こそ見て!!」
そう言われたので先程の写真を見ると
その写真は幻想的な写真だった。
光が傘と雨粒に反射して
キラキラ輝いているように見えた。
しかも猫の親子と私は
互いを見つめているようにも見えた。
森の中でもこんな綺麗な写真を撮れる
海橋くんはやはりすごいと思う。
「どう?綺麗?」
「うん。すごく綺麗」
「ありがとう!!」
そう言うと海橋くんはいつものように笑った。
「早速明日、写真部広告のとこにこの写真貼ってもいい?」
「写真部広告?」
「うん!!写真部の活動内容とか写真とか色々お知らせしようと思って!!」
「別に構わないけど...」
「前の写真も貼っておくね!!」
「うん」
「じゃ、また明日学校で!!」
そう言って海橋くんと別れた。
海橋くんはいつも自然体のようだった。
そのせいだろうか。
私が海橋くんにどんどん興味を持っていく
原因は。
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