第26話 普請から引く
五重塔の
だが、佐吉の喜びも数日と持たなかった。それからほどなく、梅二が請け負っていた常光寺の五重塔が落慶法要を執り行ったのだ。それまで
甚五郎の予測は見事に当たったのだ。出来上がっているのをわざとずらして、佐吉の評判を落とそうという
江戸っ子は、
『梅二の勝ち、佐吉の負け』
との判断を下したのだ。
『お侍の敵討ちが切り合いならば、大工の敵討ちは出来栄えの勝負だ』
お美代を巡る佐吉と梅二の確執がまことしやかに噂され、このような流言まで人々の口から口を行き交い、敵討ちを果たした梅二の評判は、いやがおうにも上がる一方だった。只の噂話だと聞き流してはいたが、なかなか噂は収まる気配を見せなかった。大きな寺院の普請というものは何年にも渡って続くもので、寺が建てられているうちは噂話というものも生き永らえるものである。
そんなある日、
佐吉は、また元の
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