第11話

初めは逆光で顔など見えなかったけど、その人が一歩この路地に入った途端、鮮明に見えた……



ユッキーさんは



「っっ」



艷やかな漆黒の髪は、元はオールバックだったんだと思う。


けれど天使達を必死で探して走り回ったのがわかる程乱れてる。



鋭く切れ上がった漆黒の瞳は天使達を見つけた瞬間、柔らかく細まった。



その瞳には安堵の光。



優しい優しい眼差し。



天使達のお父さん、なのだろうか??



私は……父にあんな眼差しをされたことはない……。



あの人が出来損ないの私を見る目は、ただただ冷たかった。



「八千流、ハイド」



男の人は一目見てわかる高級スーツが濡れるのも構わず、アスファルトに片膝をつき両手を広げた。



「「ユッキー!!」」



天使達は迷うことなくその腕に飛び込んでいく。



「全く。勝手に動くなと俺もアレも言わなかったか?」



ギュウウウッと、深く深く二人を抱き込んで諭すように言う男の人。



「ごめっ、ごめしゃっっ」



「うっ、えっ。だっっ、こえ……こえした……」



声ー?


それって……まさか私の?



だから二人は"お父さん"から離れて、こんな所まで来てくれたの?

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