第19話 オルグ

「委員長、長野オフィス支部は全会一致で執行部案に賛成と連絡ありました。」


「よし。あとは、総務部支部だけだ。」


 従業員組合の部屋は熱気に包まれていた。黒板にある135の支部はほとんどが丸印で埋まっている。


「委員長、沢渡前社長の思いが全従業員に浸透しているあかしですね!」


「ああ。全社一丸で上場を目指そう!」


「しかし、役員はどうしてEBPCなんかの傘下に入ろうと思ったんでしょうか?」


「さぁ…。取締役には、それぞれの論理があるんだろう。」


「委員長、組合からの要請書ですが、明日朝一番で持っていくんでいいですか?」


「ああ。秘書の南室長に電話しといて。」


「了解です。」


 その時、副委員長が電話口で怒鳴った。


「ええぇ!!お前んとこだけだぞ!!・・・違うだろ。沢渡社長は上場目指してここまで来たんだぞ。それを裏切るのか!?」


 白井は驚いた。そしてすぐに受話器を奪いとると叫んだ。


「白井だ!どういう事?」


「仕方ないでしょ。多数決なんだから。」


「そんな単純なもんじゃ無いよ。ちゃんと説明してくれた?」


「しましたよ!!」


「説明したら執行部案になるでしょう!!」


「委員長…。みんながみんな同じじゃないですよ。総務部は岡本取締役部長以下、大半はEBPC傘下でいいとなりましたから!!」


「はあー!岡本部長は非組。ましてや取締役は経営者側。そんなのオルグに入れたら話になんないよ!」


「どうせウチだけなんでしょ!もうそれでいいじゃない。組合の大勢は変わらんでしょ。」


「お前な!全社一致が重要なんだよ!もう一回、岡本外はずしてけつを採れ!!」


「もう無理です。みんな帰りましたから。じゃ失礼します。」というと電話が切れた。


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