4︰予想外のランクアップ
ルナの謝罪を受け入れた僕は、会話を続けていた。
昔のように笑顔を見せるようになったルナは、僕にあることを訊ねる。
それはラディッシュについてだ。
「そういえばレオス、あなた精霊と契約できたのね」
「うん! ラディッシュっていうんだ」
『よろしくな!』
「すごい精霊で、モンスターを食べちゃうんだよ!」
「モンスターを食べちゃうの? すごいわね!」
ルナは僕が精霊と契約できたことを自分のことのように喜んでくれた。
そんなルナの姿を見たからか、なんだかもっと嬉しくなっちゃったよ。
『そうだぞ、オイラはすごい精霊なんだぞッ。なんせなんでも食べちゃうんだからな!』
「お腹を壊してゴーレム食べれなかったけどね」
『それはレオスの激辛魔力のせいだからなッ』
「ふふふっ。頼れる精霊と契約できてよかったわ」
楽しげに笑うルナ。
そんなルナを見て、僕は嬉しくなってまた笑う。
昔、よくこんな談笑をしていたよ。
気がつけばルナ以外は変わってしまった。
そんなことを思っていると、ルナがこんなことを言った。
「前はこんな風に笑っていたわね。あの頃は、ホントよく笑っていたのに……」
ルナもまた、何か思うところがあるようだ。
なんでゼルコバ達があんなに変わってしまったのか。
気になるけど、たぶんわからないだろうし教えてもくれないだろう。
そんなことを僕は思いつつ、話題を変えることにした。
「ルナ、パーティーに戻らなくていいの?」
「戻りたくない。でも、戻らなきゃいけないわね」
「なんで? 戻りたくないんでしょ?」
「レオスには話してなかったわね。ゼルコバにした借金について」
ルナはまっすぐ僕を見つめ、自分のことについて話し始めた。
「小さい頃、私が大きな病気したことがあったの覚えてる?」
「うん。でもいい治癒師がいたからすぐに治ったって言ってたね」
「そっ、たまたま村に立ち寄った腕のいい治癒師がいたの。でも、安くなかった。病気が病気ってこともあって高額の治療費が必要になったの。でも私の家は、そんなお金を用意できなかったわ」
「もしかして、それでゼルコバに借金したの?」
「そう。あいつの家は村一番のお金持ちだったから、私の両親が頼み込んだのよ。とても渋られたらしいけど、私をゼルコバの婚約者にすることで話がついたのよ」
「……はっ?」
なんだそれ?
ルナが、ゼルコバの婚約者!?
なんでそんなことになってたんだ?
いや、それよりもとんでもない話を僕は聞いちゃったんじゃないか?
「そ、そうなんだ。じゃあ無事にお金を借りれたんだね」
「ええ、病気も治ったからよかったわ。でも、借りたお金は返さなきゃいけない。だから私は、借金返済ができるまでの人質なのよ」
「はぁッ?」
なんだかゼルコバのことが許せなくなってきたんだけど。
いや、正確にはゼルコバの親とルナの親が勝手に交わした約束だから恨むのがお門違いだと思うけどさ!
「じゃあルナは、借金返済が済むまでゼルコバと一緒にいなきゃいけないの?」
「そうね。場合によっては本当に結婚しないといけないかもね」
「そんなのあり得ないよ! 勝手に決められたことなんだろ!」
「でも、私が従わなくちゃお父さんとお母さんが大変なことになるわ。だから、従うしかないの」
あんまりだ。
いくらなんでも、ルナが不憫すぎる。
どうすればいいんだ。
このままルナをパーティー返す訳にはいかない。
でも、お金が。僕の手持ちに大金なんてないし。
僕があーだこーだと考えていると、ラディッシュが腕を組みながらこんなことを言い放った。
『なんだか大変だな。でも、レオスなら何とかできるぞ』
唐突にとんでもないことを。
というかなんで僕なら何とかできるんだよ。
「ラディッシュ、何根拠のないことを言い出すんだよ」
『根拠のないことって、お前さっきすごいものを手に入れただろ?』
「すごいものって――あっ」
そういえばブラッディゴーレムとの戦いで大きな魔晶石を手に入れたんだった。
それを換金すれば、もしかしたら――
「ルナ、借金ってどのくらい残ってるの?」
「え? そんなこと聞いてどうする気なの?」
「いいから教えて」
「残り十二万ゴールドだけど……」
結構多い。
でも、あの魔晶石の大きさならいけるかもしれない。
そんなことを考え、僕は部屋を出る。
そして一階へ戻り、先ほど対応してくれた受付嬢に声をかけた。
「すみません、鑑定して欲しいアイテムがあります!」
「え? あ、は、はい。えっと、どのようなお品でしょうか?」
「ラディッシュ、出して」
『あいよ!』
ラディッシュは大きく口を広げ、うげぇっという声と共に巨大な魔晶石を吐き出した。
それは小さなカウンター席が埋まるほどのもので、魔晶石にしては特大とも呼べる代物だ。
そんな魔晶石を見た受付嬢は、目を丸くしていた。
「あ、あの、これは……?」
「魔晶石です」
「え? こんな大きなものが!?」
ギルド内がザワつく。
でも僕はお構いなしに話を進めた。
「ブラッディゴーレムから取りました。鑑定をお願いします」
「少々お待ちを!」
受付嬢はギルドの奥へ走っていく。
そんな彼女の姿を僕は仁王立ちで見送った。
ザワザワとする立ち会った冒険者達。
そんなこと気にせず、受付嬢を待っていると奥から思いもしない人物が姿を現した。
「これはこれは、なかなかに大きな魔晶石だねぇ」
ツンツンと立った黒髪に、サングラスをかけた男性。
耳には銀色に輝くピアスを三つあり、黒いコートに身を包んでいる。
僕を見てニカッと笑うその人は、ギルド【旅人の寄る辺】のトップであるギルドマスターだ。
そんな人が直々に現れたからか、さらにギルド内がザワつく。
「これ、ホントにブラッディゴーレムから手に入れたの?」
「はい、そうです。ラディッシュのスキルを使って手に入れました」
「なるほど。ゴーレム系は数が少ないからその素材ってだけでも貴重なんだけどねぇ」
カウンターにある魔晶石を見つめ、その後にギルドマスターは僕に顔を向け、あることを問いかけてきた。
「手放してもいいのかい? いい装備が作れるよ?」
その問いかけを聞き、僕は迷わずに答えた。
「もちろんです」
ギルドマスターはニッと笑う。
そして僕に近づき、肩を叩いた。
「この大きさなら百万ゴールドはいくよ。正確な数値はもっと詳しく鑑定しないといけないけどね」
ひゃ、百万ゴールド!?
思っていたよりもとんでもない金額を言われたんだけど!
「ま、僕ちゃんとしては装備を作ることをオススメしたいけどね。鑑定しておくよ」
「あ、ありがとうございます!」
「あとはそうだねぇ、ちゃんと精霊の登録したらランクアップかな」
「え? ランクアップですか!?」
「そゆこと。これからも頑張ってね、Aランク冒険者のレオスくん」
それは、思いもしない言葉だった。
いつの間にかとんでもなくランクアップしていた僕は、ただ呆然とする。
次第に喜びが湧き上がってきて、気がつけば心の底から僕は雄叫びを挙げていた。
「いやったぁぁぁぁぁ!!!!!」
こうして僕は大金を手に入れ、Aランク冒険者になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます