第20話

お互いに無言のまま黙って廊下を歩き、写真部の部室までたどり着いた頃…ようやく掴まれていた手を解放された。



先に中へと足を進める由吏の後に続いて、自分も部室に足を踏み入れる。その瞬間…一時間目の授業が開始されるチャイムが校内に響いた。




「授業…始まるけど、いいの?」



「別に、いーんじゃねぇの?今から行っても、もう間に合わない」




由吏は私の方を振り返るわけでもなく、壁に飾られている自身が撮ったと思われる写真をただジッと眺めている。




「……由吏…?」



沈黙に耐えきれず、声をかけてみると…小さく息を吐いた由吏が少しずつ語り始めた。



「これ…何処で撮った写真なのか、って…お前が初めてここに来た時、俺に尋ねたよな?」



”最優秀賞”というプレートと共に飾られている、海と空が繋がったような写真。ここに入ってすぐに私はこの写真に釘付けになったことを今でもよく覚えている。




「ウユニ塩湖…って聞いたことある?海外なんだけど、アジア人に結構有名な観光スポット」



「あ……なんとなく、テレビとかネットで見たくらいの情報しか知らないけど」



「それ…そこで撮った写真。俺の腕が良いとかそんなんじゃなくて、条件さえ揃えばお前でも同じような風景写真が撮れたはずだ」




自分の腕が良くて撮れた一枚ではなく、観光スポットになるほど美しい景色だから…誰が撮っても同じだと、そう言いたいのだろうか?

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