神様、異世界でメガネって需要あります?
@molion
第1話 プロローグ
「すいません、稼業を継ぐ事になりました。来月末で退職させて下さい」
大学を卒業して就職したメガネチェーンに勤めて17年、我ながらよく頑張ったと思う。今でこそ働き方改革で少しはマシになったが当時は酷かった、碌に研修もないまま入社当日からいきなり接客、勉強という名のサービス残業は当たり前で事あるごとに先輩からの罵詈雑言が飛んでくる始末。
地方の三流大学卒だが他にもいい会社があったのではないかと今では思う。当時は忙しさと周りからの同調圧力から仕事とはこういうモノだと思い込み給料の低さや労働環境の異常さに気が付かずこの歳までずるずると働いてしまった。
(まあ、稼業を継ぐなんて嘘だが、こうでも言わないと辞めにくいからな)
転職するには遅すぎるが今のままこの会社で働いていても未来はない、それならば地元に戻って働いた方がまだ幸せかもしれない。よくある話しかもしれないが同窓会で旧友の収入や現状を聞いてあまりの違いにショックを受けて催眠が覚めるように退職の決意が固まった。
一応店長という役職に就いていたので後輩への引継ぎやら有給の消化を済ませて12月末で退職の手続きをし、年末には地元に帰る予定だ。これまでは店長だからと盆正月やGWには休めず、客商売だからしょうがないといえばしょうがないのだが一般的な世間の休みにゆっくりした記憶がない。
勿論資格の取得が必要だったので知識も付いたし、仕事の全てが辛かったという訳ではない。どちらかと言えば接客業は好きだった。ただ、それ以上に人間関係や労働環境で精神的にきつい部分が沢山あった、割合的には1:9くらいで悪い記憶の方が多いのは覆し様がない事実としてある。
なんだかんだあったが最後の出勤を終えて引っ越しの準備が終わった今はすっきりした気分だ。
(地元に戻ったら同級生と会って、少しのんびりしたら新しい仕事を探して、もし叶うのなら彼女も欲しいな)
ドン!!!
なんとなく明るい未来を想像しながら駅に向かう途中で大きな衝撃を受けて俺の意識はそこで途切れてしまった。
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