Another World Mythology〜鮮血姫と呼ばれた小女によるMMO神話〜
しゃけ_サン
孤高の騎士の最期、あるいは新たなる魔神のプロローグ
広大な草原の中心に、2つの人影が佇んでいる。
1人は白髪の女。
漆黒のドレスで身を包み、握られた刀は真っ赤な刀身をギラつかせている。
もう1人は全身を純白の鎧で身を固めた女騎士。
彼女は、白髪の女に自身の剣の先を突きつける。
「次は貴様だ、魔王よ。あの魔神と同じよう、首を落としてやる」
先に動き出したのは、魔王と呼ばれた女の方であった。
その姿は一瞬にしてぶれ、次には女騎士の目に前にまで迫る。
キーーーン‼︎
剣と剣による大きな音が、草原に響く。
幾度となく剣がぶつかり合い、お互いに攻め続ける。
鍔迫り合いを繰り広げながら、白髪の女が騎士の耳元で小さく、しかし、力強く囁いた。
「お前が死ねよ」
瞬間、女は脚を振り上げ、騎士を蹴り飛ばす。
あまりの蹴りの強さに、騎士が後方へと吹き飛ばされるが、剣を地面に立てて減速する。
女が左手を空へと伸ばし、詠唱する。
「血の槍よ、雨となれ——『
空へと伸ばされた手の中心が、赤く渦を巻き、数多もの真紅の槍を生み出す。
女が、騎士に向けて手を振り下ろし、言い放った。
「……いけ」
一斉に全ての槍が射出され、物凄い速度で飛来し騎士へと迫る。
「結界術! 『
神威の如く輝く光が、騎士を守護するように包み込み、周囲の全ての血の槍を一瞬にして浄化した。
その様子を見た女は、ニヤリと口元を歪ませる。
そして、突如として刀を地面に突き刺した。
そのまま、一言呟く。
「『世界魔法——』」
彼女の手に、1つの杯が現れる。
その中は全て真紅の液体で満たされ、大きく渦を巻いている。
その光景を目の当たりにした騎士は、全力で駆け出した。
「——ッ!」
全ては女の首を落とすため……
この一振りで、勝敗が決するのだ。
「間に合え——!」
剣を思いっ切り振り下ろす……
「『——
振り下ろされた剣が、女に届くことはなかった。
見えない何かによって、剣は女の頭上で止まっていたのだ。
女はゆっくりと口を開き、冷たい表情のまま言葉を溢した。
「……残念」
杯から液体が零れ落ちる……
真紅が荒ぶり、地面から噴き上がった液体は、2人を一瞬にして飲み込んだ。
そこに残ったのは、真っ赤に染まった水溜りだけであった……
——『異邦聖女物語・第十八章』より抜粋——
次の更新予定
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