第114話
真っ赤に目を腫らした麻也が顔を上げて二人を見る。
痛々しい姿。
側に居るハイネは静かに3人を見守ってる。
俺は俺で八千流とハイドの後ろに立った。
初めて見る麻也の姿に動けなくなる二人。
だが二人は互いの顔を見て頷きあうと、真っ直ぐ麻也を見てロールケーキとホットココアを差し出した。
「どーじょっ!!」
「まーや。これ、どーじょっ!!」
と。
「え?え?」
二人がこんな時間まで起きていたこと、泣いたことがバレたことでプチパニック状態の麻也。
普段とてもしっかりしてるから、久しぶりにそんな姿を見れて俺もハイネもつい笑ってしまう。
笑ったのがバレて、真っ赤な瞳で睨まれるが、可愛い弟に睨まれても痛くも痒くもない。
「ありゃ、そのケーキ。あんた達が明日楽しみにしてたやつじゃない」
「え……?」
「まままままっ」
「しーっしーっしーっ」
慌てる二人。
手は動かせないから足をジタバタさせてる。
全く同時に右足から。
双子のシンクロ。
「ありがとう八千流、ハイド。でもこれはお前達が食べ……」
「「まーやっ!!」」
二人がプルプルと首を横に振る。
「??」
「まーやがね、たっくさんたっっくさん、がんばってるのしってるよっっ」
「どうぶつさんたちのために、いっしょうけんめいなのしってるよっっ」
「っっ」
「いぬっっしゃんはかわいっっそっだけどっ」
「でもっやちもはいども、まーやがだいすきだからっ」
二人の声がドンドン泣き声に。
そして
「「わらっててほしいんだよーーっっ」」
と叫んで"うわぁああああんっ"と本格的に泣き出した。
「ううう、あまっっもっっ」
「たべっっだべうど、げっっげんきっっ」
もはや何を言ってるやら。
でも麻也には通じたようで。
立ち上がると二人に視線を合わせるためにしゃがみ……
俺は二人からロールケーキとホットココアを受け取る。
「八千流!!ハイド!!」
麻也は二人を抱きしめた。
「ありがっっとっ。ありがとっ二人ともっ」
「「ま"や"ーっ」」
俺とハイネは顔を合わせて笑った。
もう大丈夫だな。
八千流とハイドは眠るまでずっと、麻也を抱きしめて離さなかった。
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