第22話 光は消えなくて
「私は……グリューネワルト国に帰ります。バロウ家の当主問題はすぐには解決しないかもしれませんけど……」
「帰さないと言えば?」
「私が、アルドウィン国に戻ってきたのは当主問題のことです。お父様も他界したと聞いて……」
「……バロウ家の葬式はすでに終わっている。葬式にミュリエルが帰国してないことを不審に思い、ダリルを問い詰めた」
そして、私が次期当主でありながら、バロウ家のことに蚊帳の外だった。
「……兄上は、私に知らせるつもりはなかったのですね」
「そうだ」
そして、ルイス様と、きっとチェスター様が兄上に助言して私をグリューネワルト国から呼び戻したのだ。
「ご迷惑ばかりかけてますね。申し訳ありません……」
「迷惑など一度も思ったことはない。でも、ゲオルグに預けたことを後悔している」
「……ゲオルグ様はとてもいい方でした。私になにも強要しなくて……」
「だが、ミュリエルを側妃にあげた」
「……形だけですよ」
ルイス様を直視できずに顔を反らすと、チェスター様がご令嬢といるのが目に入った。私の視線の先にルイス様が気づくと不機嫌な様子を見せた。
「……チェスター様とご令嬢が来られているのでは……」
そう言うと、無言でルイス様の唇が真一文字になった。
「チェスターは、ミュリエルといるとすぐに来る」
それは明らかにルイス様のお目付け役だ。私とルイス様が近づかないようにしているのだ。
「あのご令嬢はチェスター様のご親族でしょうか?」
「……あれは、私の婚約者だ」
「婚約者?」
「嫉妬するか?」
「嫉妬ですか……?」
まるで、ルイス様への気持ちを確認されるような言い方だ。でも、胸は痛まない。胸をグッと抑えると、チェスター様がやってきた。
「チェスター様。お久しぶりです」
「ミュリエル。ずいぶんと綺麗になったな」
「もう18歳ですから……」
「そうか……大人になった祝いを贈るべきだったか」
「大丈夫ですよ。お会いできただけで光栄です」
そっとチェスター様にお辞儀をすると、ルイス様が不機嫌そうに目を細めた。一緒に来た令嬢は、柔らかい雰囲気なのに、目元がしっかりとしていた。
「ルイス様。ステラの紹介をお願いします」
「……わかっている。ミュリエル。彼女は、ステラ・メルフィーナ男爵令嬢だ」
ルイス様が、不機嫌そうに目を細めて紹介をした。気まずくて慌ててステラ様に挨拶をすると、ステラ様が可愛らしく挨拶をした。
「は、初めまして。ミュリエル・バロウです」
「お会いできて光栄です。ミュリエル様。ステラ・メルフィーナです」
まだ若く、私よりも年下に見えた。婚約者を置いて私と一番にダンスをしたルイス様を諫めるためにチェスター様がわざわざステラ様を連れてきたのだろう。ルイス様は不機嫌そのものだった。
「ミュリエル」
「は、はい! チェスター様」
「バロウ家の当主問題だが、私たち遺物持ちの家系では、君が正統な後継者だ。近いうちに、私も行く。ミュリエルには、必ずバロウ家の当主になって欲しい」
「わかりました……でも、今夜は……そろそろ下がりますね。夜会は、やっぱりなれなくて……」
「そうだな……何か心配ごとがあれば、すぐに言いなさい。必ず力になる」
「はい。いつもありがとうございます。チェスター様」
気まずいままで笑顔作ってそっとお辞儀をした。名残惜しそうな表情のルイス様。でも、彼が人前で手は出せないことを私は知っている。そうすれば、今以上に引き裂かれるのだ。それを懸念してルイス様は何もできない。
そうして、私は急いで部屋に帰って荷造りを始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます