竜槍陛下は魔眼令嬢を溺愛して離さない
屋月 トム伽
第1話 プロローグ
突然決まった後宮入り。
私、ミュリエル・バロウ伯爵令嬢を妾として迎え入れる相手は、竜騎士団を率いるグリューネワルト王国の王太子殿下のゲオルグ様。彼は、青藍色の髪に深い青い瞳。背も高く身体つきもしっかりとしている。釣りあがった鋭い眼は威圧感を醸し出しているような王太子殿下だった。
そんな怖そうなゲオルグ様だけど、先ほどグリューネワルト王国に到着して、すでに夜になっているのに彼が早々に後宮に迎えてくれた。
そのまま、ゲオルグ様に後宮の庭へと誘われるままに歩いていた。後宮の庭は整えられた庭園になっており、噴水まである。綺麗で、思わず、見とれてしまう。
夜の後宮の庭を一緒に歩いていると、夜風に靡くマントが端整な顔のゲオルグ様に似合っていると思えば、くるりとゲオルグ様が私に振り向いた。
「……ミュリエル」
「はい」
「……初めてお会いする。俺がゲオルグ・グリューネワルトだ」
「初めまして。ご挨拶申し上げます。グリューネワルト王太子殿下ゲオルグ様」
緊張しながらも、ドレスのスカートを持ち上げて膝を折り笑顔で挨拶をする。社交界にデビューしてない私には、なれない仕草だった。
「この度は、妾として受け入れてくださり感謝いたします」
「いろいろ大変だったようだが……ここでは、ゆるりと過ごすといい」
「ありがとうございます……決して、ご迷惑になるようなことは致しません」
「いい。俺は、竜騎士団を率いてしばらく戦に行くが……すまないな」
「そんなことありません。ゲオルグ様には感謝しております」
突然の後宮入り。しかも、事情はゲオルグ様には無関係なものなのに、彼は私を受け入れてくれたのだ。感謝しかない。
何か、武運になるものでも贈れたら良かった。急いでアルドウィン国から__、ルイス様から離れて来たから、何も持ってなかった。身一つで来たも同然だったのだ。
「……そうです。もし良かったら、こちらをどうぞ」
そう言って、庭園の空を飛んでいた鳥を呼び寄せた。指に乗せてゲオルグ様に差し出すと、そっと彼が指を出した。
「これは?」
「フレスベルグです。魔物ですが、私が従えているフレスベルグでホークと言います。フレスベルグの中でも身体が小さくて、……でも、お利口なので、伝令などもできますし、きっと役に立つと思います」
「くれるのか?」
「はい。申し訳ございません。私には、他には何も持っていなくて……」
何もできずに申し訳なくて俯くと、ゲオルグ様が私の指からフレスベルグに指を差し出した。フレスベルグはそっとゲオルグ様の指に乗り移る。
「……この鳥は、手紙も出せるのか?」
「はい。ホークは魔物なので、遠くても大丈夫です」
「では、時々、君に手紙を出そう。ミュリエルも、何かあれば遠慮なく手紙を出しなさい」
「……ありがとうございます。ゲオルグ様のご武運を願っております」
事情があり、アルドウィン王国の王太子殿下ルイス様がゲオルグ様に、妾として後宮入りをお願いした。
ゲオルグ様は、まだ独身で婚約者すらいない王太子殿下だった。色々と周りからは何か言われるだろうけど、彼は私の事情を組んで受け入れてくれたのだ。
だから、本当の妾ではない。私はゲオルグ様の後宮に身を隠しに来たも同然だった。
そうして、二年の月日が流れた。私はそろそろ後宮を下がるべきなのだろう。そう思っていた時に、ゲオルグ様が陛下になることになった。
そして、戦が勝利で終わり、彼が王城へと帰還したその夜。ゲオルグ様が一番に後宮の私のところへやって来た。
初めてお会いした時のように、二人で後宮の庭園を歩いていた。
「……ミュリエル」
「はい」
振り向いたゲオルグ様が真剣な眼差しでこちらを見下ろしている。
「君を好きになる」
「……はい?」
突然の告白に驚いて、口が半開きのまま驚いてしまっていた。
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