偏差値100をとると幼馴染の美少女がなんでも言うこと聞いてくれるらしいですよ⁉︎

ただのネコ

第1話 偏差値100をとってやる!

「じゃあ、オレが偏差値100とったら、なんでも言うこと聞くんだな!」


 雄介ゆうすけがイラ立ちながら叫ぶと、美奈みなも受けて立つ。


「いいわよ! アンタが今度の期末で一教科でと偏差値100とったなら、目でアーモンドだろうが、鼻から一本うどんだろうがやってやるわよ!」


 なお、一本うどんは断面がおよそ1センチ角の極太うどんである。長さは50センチぐらい。無理無理。美奈の小さな鼻では、両穴つなげたって入らないだろう。


(なんでこんな言い争いになったんだっけ?)


 静野しずの美奈と信田のぶた雄介は同い年でお隣同士。0歳0ヶ月の頃から幼馴染をやっている仲だ。保育園も小学校も中学校も一緒。残念ながら頭の出来は大違いだったので高校は別々だけど、それでもたまにどちらかの家で一緒に夕食を食べたりするぐらい仲はいい。クラスの武田たけだくんに話したら、「信田のクセに生意気だぞ」とプロレス技をかけられたけど。


 今日もそんな感じで美奈が雄介のうちで夕食を食べていたのだ。大好きなハンバーグ、なのに母さんが余計な一言をトッピング。


「もうじき期末試験でしょ? 美奈ちゃん、ちょっと雄介の勉強を見てやってくれない?」

「良いですよ、じゃあ食後に」


 雄介は聞こえなかったフリをして、食後も普通にマンガを勧めたりしてみたのだけど、美奈は母さんとの約束を忘れていなかった。


「マンガ読んでる場合なの? 中間の成績は?」

「英語はちょっとヤバかったけど、大丈夫だよ」


 中間試験の成績一覧を見せる。雄介の通う峰亜高校では、定期試験が終わるたびに各教科の点数、平均点、偏差値を一覧にしたプリントが渡されるのだ。

 雄介の点数はだいたい30〜40点台。国語が平均ぐらいで、後はちょっと低めだ。

 雄介としては30点以下の赤点じゃなきゃいいやという感覚なんだけど、美奈はそれじゃ満足しないらしい。


「偏差値40台しかないじゃない。こんなんじゃ、大学行けないよ」

「いいよ、行かないし」


 美奈の頬がふくれる。

 そうしているとちょっと小学生の頃みたいで、ちょっと雄介は安心してしまった。

 樫葉高校に行ってから、美奈はますます綺麗になった、と思う。ただの気のせいかもしれない。かわいい制服のせいかもしれないし、顔を見る回数が減ったからかもしれない。でも、やはり不安があるのだ。

 まぁ、雄介が今更勉強しても美奈と同じ大学には入れない気もするけど。


「じゃあ、勝負しよ!」


 何がどう「じゃあ」なのかは分からないが、美奈はいきなり切り出した。


「うちの学校も、テストの偏差値出るんだ。だから、1教科でも私よりよかったら、ご褒美あげるよ!」


 ご褒美、にひかれる思いはある。だが、嫌いなワードも入っていたのでちょっとカチンときてしまった。


「なんで偏差値なのさ。点数でいいじゃん」

「点数だと、平均点が全然違うかもしれないでしょ。偏差値の方が公平よ」

「美奈は偏差値大好きだもんな。高校入試の前も、もうちょっとで偏差値70だって自慢してたし」


 雄介のちょっとイヤミな口調に、美奈も眉を吊り上げて反論する。


「偏差値の方が上げるのたいへんなんだから、喜ぶのは当たり前なの。偏差値70ってすごいのよ!」

「じゃあ、オレが偏差値100とったらどうする?」

「はぁ? 偏差値100なんて出来るわけないでしょ!」


 この時の美奈の口調がバカにしきったものだったので、カチンときて「じゃあ、オレが偏差値100とったら、なんでも言うこと聞くんだな!」と言ってしまったわけだ。


 売り言葉に買い言葉。元々気の強い美奈は雄介の部屋を出て、足音高く階段を降りていく。


「あら、もう帰るの?」

「帰ります! 雄介を偏差値勝負で叩きのめすために勉強します!」

「あらあら、仲がいいわねぇ」


 母さんのボケを聞き流し、美奈は家を出て行った。


 なんだかケンカになってしまったが、勝負は成立ということでいいんだろうか。雄介としては、別に目でアーモンドとか鼻から一本うどんはいらない。マンガじゃないんだから。


「なんでもって、本当になんでもいいのかな」


 どうしても想像がピンク色の方に行ってしまう。仕方がない。完全な男子高校生なんだから。


「よっし、絶対偏差値100とってやる!」


 9割の意地と1割の下心に押され、雄介は拳を突き上げた。

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