閑話「七草粥とRSA暗号」

「クルツさん、ちょっといいですか?」


 オフィスでコードを書いていたクルツの元に、だみんちゃんが駆け寄ってきた。


「TwitterでRSA暗号の話題を見かけたんですけど、なんだか難しくて…」


 クルツは珈琲カップを手に取りながら、微笑んだ。


「いい質問ですね。ちょうど先日作った七草粥を例に説明しましょう」


「え?七草粥でRSA暗号を説明するんですか?」


「ええ。実はとてもわかりやすい例えなんです」


 クルツはホワイトボードに向かい、説明を始めた。


「まず、RSA暗号の鍵を生成する過程は、七草粥を作る準備に似ています。

 二つの特別な素数、つまり二つの貴重な七草を選びます。

 これを p と q と呼びます。

 この二つの七草は、誰にも見つからないように大切に保管します」


「なるほど…」


「これらの七草を掛け合わせて作る数 n は、お粥のベースのようなものです。

 このベースは公開しても構いません。

 でも、元の二つの七草を見つけることは、

 出来上がったお粥から具材を特定するように難しいんです」


 だみんちゃんの目が輝き始める。


「次に、メッセージの暗号化は、お粥に具材を入れる工程に似ています。

 公開鍵 e という特別なレシピで具材を入れると、

 簡単には取り出せない状態になります」


「なるほど!でも、どうやって元に戻すんですか?」


「それが秘密鍵 d の役割です。

 これは特別な食べ方のレシピのようなもの。

 最初に選んだ二つの七草の性質から計算できます。

 このレシピを知っている人だけが、元のメッセージを取り出せるんです」


「でも、出来上がったお粥から元の七草を見つければ…」


「その通りです。でも、それが非常に難しい。

 これが素因数分解問題と呼ばれるもので、RSA暗号の安全性の基盤となっています。現代のコンピュータでも、大きな数の素因数分解には天文学的な時間がかかります」


「七草粥で説明されると、なんだかすごくわかりやすいです!」


「ええ。実は暗号技術も、料理と同じように材料と手順の組み合わせなんです。

 ただし、RSA暗号の場合は、その"レシピ"が数学的な性質に基づいているわけです」


 だみんちゃんはノートに熱心にメモを取っている。


「暗号化されたメッセージは、具材の味が完全に隠されたお粥のようなもの。

 秘密鍵という特別な"食べ方"を知っている人だけが、元の味を楽しめるんです」


「クルツさんの例え、本当にわかりやすいです!

 これならTwitterでも説明できそう」


「ただし、実際のRSA暗号では、使用する素数は非常に大きな数字になります。

 まさに、一生かけても数え切れないほどの七草を使うようなものですね」


 クルツは珈琲を一口飲んで、付け加えた。


「そういえば、お昼は何を食べようかな」


 窓の外では、冬の日差しが静かに差し込んでいた。



【よくわかる!七草粥で理解するRSA暗号まとめ!】

 ・お粥の準備(鍵の生成)

 大きな素数という二つの特別な七草(p, q)を選び、

 それらを掛け合わせてお粥のベース(n)を作ります。

 この二つの七草は、後で誰にも見つからないように隠しておきます。

 ・具材を入れる(暗号化)

 メッセージという具材を、公開された調理法(公開鍵e)で粥に入れていきます。

 この調理法は誰でも使えますが、一度入れた具材は簡単には取り出せません。

 ・お粥を食べる(復号)

 具材の入ったお粥は、特別な食べ方(秘密鍵d)を知っている人だけが、

 元の具材の味を楽しむことができます。

 この食べ方は、最初に選んだ二つの七草の性質から導き出されます。

 ・安全性の秘密

 お粥に入れた具材を取り出すには、

 最初に使った二つの七草を当てる必要があります。

 しかし、出来上がったお粥から元の七草を見分けることは、

 現代のコンピューターでも非常に困難です。

 これが、RSA暗号が安全とされる理由です。


 ねっ!簡単でしょ!!

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