第11話 本屋
小峯さんと他にもいろいろ本を見ているとあっという間に時間が過ぎていく。なぜかやたらエッチな本を俺に読ませたがる小峯さんと、そういうのを読まないという俺との攻防が続いた。
「なんでそういう本を俺に読ませたがるのさ。普通、女子は逆じゃ無い?」
「エッチなのはいけないと思います! ってのが好きなの?」
「そこまでは思ってないけど……」
「だって、私だけBL買って川端君が真面目なやつばっかり買ったら店員さんに『あ、彼女さんの方がエッチに積極的なのね』って思われるじゃん!」
「……そんな理由かよ! ていうか店員もそんなこと思わないから」
「そうかな。私だったら思うけど」
もし、こんなに清楚な見た目の店員がそういうこと思ってたら引くわ。いや、むしろ興奮するか。
「ん? どうしたの? ニヤニヤして」
「あ、なんでもない。とにかくもう買おう」
「そだね。仕方ない。買うか……ってセルフレジあるじゃん! 店員の心配する必要無かった……」
「アハハ……」
小峯さんはやっぱり面白いな。
その後、俺たちはカフェに入った。
「あー、今日は楽しかった。この後はもう解散って感じ?」
「そ、そうだね」
「……正直言うと男子と2人でデートって初めてだったから少し緊張してたんだ」
「え、そうなの?」
全然そうは見えなかったが。ていうかデートは初めてだったのか。
「うん、昨日はあんまり眠れなくて……」
「マジで?」
「うん……でも、実際にデートしてみると楽しいね!」
「そ、そっか……楽しんでもらえて良かった……」
「あんまり楽しかったから今度は私がどこ行くか考えようかな」
「え、またデートしてくれるの?」
「あ……そっか……そうだよね、私たち、そういう関係じゃ無かったか」
小峯さんは少ししょんぼりした顔をした。
「いや、でも俺もデートしたいよ」
「まあ、川端君はそうだよね。私の外見好きだし、私のこと自分の女にしたいと思ってるでしょ」
「言い方……」
「でも、彼氏彼女じゃ無いのにデートしまくるのもダメだよねえ」
「じゃあ、俺たち付き合う?」
あえて軽く言ってみる。
「だからダメだって。私のことぜぇったい誤解してるから、川端君は。私、そんないい女じゃ無いよ? 見た目と違うんだから」
「中身も好きになってきてるんだけどなあ」
何気なく言ったが勇気を出した発言だ。
「アハハ、私、まだまだ正体出し切ってないから。ほんとの私を見たら引くよ」
「そうかな」
「そうだよ。家ではダラしないし。部屋は汚いし。この格好は偽りの私でーす」
「そうなのかもしれないけどさ……俺は小峯さんを好きなんだよ。付き合いたい」
今度は真面目な顔で俺は告白した。
「あー……それは……ありがとね……嬉しいよ。でも、もうちょっと私のことを知ってもらってからで……」
……やっぱりダメか。
「じゃあ、知るためにデートしようよ」
「そ、そうだね。それはいいか」
よし! デートを取り付けたぞ。
「うん、じゃあ、今度は小峯さんのプランで。それこそ良く性格を知れるでしょ?」
「うん、わかった……川端君、思ったよりグイグイ来るね。もっと大人しい人だと思ってたけど」
「俺も見た目とは少し違うところがあるかもね。小峯さんに俺をもっと知ってもらわないと」
「うん。確かにそうだね。でも、川端君は私より裏表無いと思うけどね」
「小峯さんっだって裏表無いよ」
「え!? だって、この格好でこの性格だよ?」
「性格はいつもこのまんまだと思うけど」
「あー、それはそうかも。でも外見が……」
「外見は小峯さんの好きな格好なんでしょ。だったら、それも自分を表現してるって事だから」
「まあそうだけどね……」
「そういう外見が好きな小峯さんを俺も好きってことだよ」
「そ、そっか……川端君、やっぱりグイグイだ」
「アハハ、小峯さんに対してだけだろうけどね」
「うぅ、落とされる……」
「え?」
「あ、何でもない。今日は帰ろうか?」
「そうだね」
俺たちはここでデートを終えた。
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