第2話前編:嫉妬の蹂躙

 動物たちが棲まう独立圏、上野動物園。カップルや家族で賑わうはずの地には多くの群衆が逃げ惑っていた。

 それもそのはず、彼らが逃げた所からスーツ姿や中東衣装姿の爬虫類の怪人たちが行列を成していたからだ。

 各々にざらついた肌、強靭な牙、兇刃たる爪、蛇の怪人に睨まれれば、脚が竦み、恐竜の怪人が吠えれば、耳を塞ぐ。そう言った可愛らしい哺乳類とは違う爬虫類の恐怖に人類は刺激され、恐れ、逃げ回った。

 そんな怪人たちが立ち止まったのは当園の人気者、パンダの檻だった。

 怪人たちは一斉に人の柔らかい肌に変貌し、爪や牙は小さく仕舞われ、人に擬態した。

 その奥から同じく爬虫類の怪人であろう子供たちが前のめりに現れていた。

「わぁー! 凄え、パンダがいる!」

「食べちゃいたいくらい可愛い!」

「ねぇねぇ、レプトール様! このパンダを僕たちの国で飼おうよ!」

 子供たちを見守っていたのは白髪のロングヘアーと白髭、褐色肌の老人の姿で、白いローブの奥から赤黒い目を光らせ、下に血涙の紋様がついている。

「ほっほっほっ、そんな我儘は言っては駄目だぞ。我が国はは足りるが、この獣の餌である笹はないし、暑く乾燥した気候では死んでしまう。世界を爬虫人族の支配にした暁には何回も連れて行ってやろう。」

「わーーーい、やったーーー!」

「レプトール様、大好き!」

 レプトールと呼ばれた老人は子供たちに抱き付かれ、微笑ましい笑みを浮かべた。

 その傍ら、右には深緑色の髪のショートヘアーに黄緑の瞳を持つ少女、左にはピンク髪のロングヘアーと赤い瞳、白い肌を持つ少女も微笑んだ。

「パンダ可愛い! でも、レプトール様の笑みは尊い! シャシャ!」

「流石、レプトール様! パンダなんかより我ら爬虫人類の長の方が格好良いと、僕は思うよ!」

 恐ろしい姿の怪人種族とは思えない微笑ましい雰囲気を醸し出す…

 

 空気を読まない超雄ヒーローを除いては。

「今だ! 行くぞ、我々の輝かしい正義の為に!」

 その時、人化した怪人たちの周りに色鉛筆を模した仮面マスクやマフラーを付けた色彩豊かな千人の戦隊が現れた。

「我ら、色彩戦隊センショクジャー!」

「この動物園は我々が包囲した!」

「大人しく、降伏しろ! 怪人共!」

 戦隊の正義の叫びという名の脅迫で爬虫人類の子供たちは怯えていた。

 すると、レプトールはそんな彼らの背中を摩り、安心させようと、何故か、ガラスの壁を破りながら、檻を鷲掴みにした。

 すると、レプトールは力を込める度に人肌がみるみる破られ、中から目下の血涙の紋様はそのままに、六本腕の砂漠角蜥蜴サバクツノトカゲの怪人という正体を露わにし、檻を折れ破った。

 さぁ、子供たちと傍にいた二人の少女をパンダがいる檻の中に入れた。

「用事が終わるまで待っているんだ。儂が結界で守ってあげるからな。」

「気をつけてね、レプトール様!」

「レプトール様なら誰にも負けないよ! 超雄ヒーローがいっぱい来ても、勝つんだから!」

「子供たちの護衛は任せたぞ。」

「シャシャ、レプトール様の命令なら喜んで! 嬉しい!」

「ふふん、任せてよ。僕たちならちょちょいのちょいだよ。」

 子供たちを檻に入れたレプトールはその檻に白塗りの結界を張り、振り向いた。

 その表情は蜥蜴の鋭い眼光に皺寄せて、睨みつけていた。

「貴様ら、子供がいる怪人をどう思う?」



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