89 「█のゲットおめでとうございます」2025/12/1(月) 09:45:16


12月1日9時17分──

時任が品川駅の改札を出て向かったのは、港南口(東口)近くのデパートが入ったビル。


掲示板の暗号から導き出した座標はこの辺りを指し示していた。

例のサイトのQRコードに意味があるのかと電車で移動中に調べてみた。



【QRコードを変換した数字】

 29j847I936P390R7e



これを例の掲示板に載せて解析を頼もうか悩んだが、予想が正しければこの数字の羅列に意味はない。


辺りを調べるとやはり近くにコインロッカーを見つけた。


QRコード対応のコインロッカーで例のサイトに載っているQRコードを当てると、料金が表示された。


Mサイズのロッカーで800円ってことは昨日預けたってことか……。


電子マネーで支払いを済ませると、コインロッカーの画面に表示された扉を開けた。


ロッカーの中には鍵が一つ入っていた。

鍵の表面に複数のくぼみが付いているディンプルキーと呼ばれる比較的新しい鍵で、防犯性が高く、合鍵を作るのも結構、時間がかかる。


スマホで例の掲示板に書き込む。






────────────────

88 名前:名無し@暇つぶし 投稿日:2025/12/1(月) 09:37:41 ID:efgl4678

>>5

コインロッカーで鍵を見つけたので、

次のヒントをお願いします。

────────────────





10分ほど待っても誰もレスしないし、スレ主の更新もない。

近くの飲食店に入って、遅めの朝食をしながら待つことにした。


「オサイフ、オトシマシタヨー」


中東系の外国人が財布を落とした財布を拾ってくれた。


エスカレーターで上がろうとしたら、3階のエスカレーターの前で黄色い帽子を被った女性が手に持っていたスムージーを落としてぶちまけてしまい、床がビショビショになってしまった。時任はエスカレーターに乗るのをあきらめ、エレベーターを使うことにした。エスカレーターが使えないせいでエレベーターに乗る客が結構いたので、財布を拾ってもらえて助かった。


4階まで上がって食事をしていると、新たな書き込みが追加されていた。






───────────────

89 名前:名無し@暇つぶし(スレ主) 投稿日:2025/12/1(月) 09:55:16 ID:arpt2139

>>88

鍵のゲットおめでとうございます。

次のヒントは、今日の夜になります。

────────────────






「すみません、今、少しだけよろしいですか?」


夜まで進展がなさそうなのでとりあえず店を出て、電車で移動しようと改札に向かって歩き始めたら、横から若いスーツを着た女性が近づいてきて声をかけてきた。


時任は、他の駅前でも何度かこのタイプの女性に声をかけられたので、手口を知っている。記事のネタになるかもしれないので、途中まで話を聞くことにした。


「実は新社会人で名刺交換の練習をしていまして……」


典型的な名刺交換詐欺。

最近はめっきり減ってきたが、今でもやっている人がいるのか。


「いいですよ、門脇と言います」


差し出した名刺はダミー用。

取材時にやむなく名刺を出せと脅された時に渡す偽名の名刺で電話番号は、とある警察署の代表番号になっている。これで悪徳不動産営業などが鬼電したら、痛い目を見るのは電話を掛けた相手であり、情報を渡した目の前の詐欺行為を働く女性である。


「門脇さんは休日は何をされてますか?」


これは新たな手口か?

休日の予定なんて聞いてどうする。

勤め先と氏名、電話番号だけじゃなく他の詐欺と絡んでいる可能性が出てきた。


「そうですね。警察が日夜詐欺事件を追っている番組とか大好きでよく観てますよ」

「へ~、そうなんですね。あっ、名刺交換してもらってありがとうございました」

「いえいえ~」


あの手の者はさりげなく脅すのが効果的。

まああれで食い下がってくる輩がいたら、次のステップに進むだけだが、今までそんな猛者に遭遇したことはない。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る