第4話 実習開始
「ふわぁ……」
さっきから止まらないあくびを俺は何とか噛み殺す。
朝方になって、ようやく少し眠れたが、明らかに睡眠時間が足りていなかった。
しかも今日はついてないことに、校外実習の日だった。
──寝てない割には体調は悪くないけど、明らかに集中力が落ちてるよな。変な失敗、しないように気を付けないと……
校外実習の内容はそんなに難しいものではないはずだ。
「よし、全員、しっかり得物は用意しているな。一学期の間に習得した技能をしっかり発揮することを考えて臨め。成績は、上位半数に入れば五。脱落しなければ四となる」
引率の先生のうち、一人が集まった生徒に向かって声をあげる。確か名前はピグマリオン先生だったはず。担当は戦闘教練。
「皆さん、低級かつ単階層とはいえ、この森の先はダンジョン領域となります。決して油断しないように。緊急時の発煙筒砲は各自、ありますね? 八級以上のモンスターの魔石、もしくは七級以上のダンジョン産素材の採取が目標ですからね」
ピグマリオン先生の後に続いてその補佐をするように話し始めた女性の先生。
確かリットマイン先生だ。錬金科の先生で、生徒たちが応えるように掲げた発煙筒砲はリットマイン先生のお手製のはずだ。
そこまで考えたところで、ふと何かが頭を過る。
──あれ。何が気になるんだろう。ゲーム開始二年前の二学期すぐの校外実習……? 何か……
「よし、それではスタートする! 皆の奮闘を期待する」
ピグマリオン先生の開始の合図に、生徒たちはみな静かに頷くと、素早く行動を開始する。
すぐそばに単階層の低級とはいえダンジョンがあるのだ。不用意に声を出すものは誰もいなかった。
もう少しで思い出せそうと考え込んでいた俺は、それに出遅れてしまう。
──あ……。まあ、モブ生徒Aとしては、出遅れるぐらいでちょうどいいかー。これ以上、下手に目立ってゲームのメインシナリオに変な影響与えるのとか、良くない予感がするし。少しダンジョン領域を奥にいったところに、人気のない七級素材の群生地があるはずだから、そこを目指しますかね。
そんなことを考え、方針を決めると俺はのんびりとダンジョン領域へと向かって歩き出す。既に、同級生たちはみなダンジョン領域へと入ったようで、誰も残っていなかった。
そんな俺の挙動を、先生方が面白いものを見るかのように見ていたことに、俺は全く気がついていなかった。
◆◇
──あれ、そこは危ないんじゃ……
のんびりとダンジョン領域を進む俺は、ふと気になって足を止める。
同級生たち複数人が、ダンジョン素材の採取をしようとしていた。
声をかけるか迷ってやめておく。
シドの記憶を確認すると、特に話したことのない同級生たちなのだ。
──こんなシチュエーションで急に話しかけるなんて怪しいしな。
そんな親しくない同級生たちが採取しようとしている素材は、キノコだった。
問題は、この森には似たキノコが二つあること。
一つは六級で、今回の実習でクリア対象となるイシダケ。
そして、もう一つ。素材の等級は五級。イシダケよりも級が高い。そして、その分、採取何度も高い、イミダケだ。
イシダケは採取しようとキノコ部分に手をかけると、カサの部分に隠れた石がいくつも飛び出してくるのだ。
それがなかなかの威力があるので、盾等で身を隠しながら、木の枝等で採取するのが鉄則となっている。
実際、素材がイシダケだと思っている同級生たちはそうしていた。
ただ、残念なことは、それがイシダケではないということ。
──えっと、どこにいるかな……。木の枝の上か。これぐらいのステータスなら彼らでも気がつきさえすれば大丈夫そうだな。
俺の転生特典っぽい、ステータスが見えるのは、人だけではなかった。
俺は木の枝に隠れ木の葉と同化しているイミダケの本体に向かって、足元に落ちていた小石を投擲する。
静かな風切り音のあとに、木の葉の激しく揺れる音。
「な、なんだっ」「上だ!」「モンスターだ! いったん下がって!」
俺の小石の投擲した場所を見た同級生たちも、ようやく自分たちが危なかったと気がついた様子。
俺はそれをみて、後は大丈夫かとこっそり満足すると、ばれないようにその場を立ち去るのだった。
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