第3話 防衛省に通信アリ

 同盟国であるK国とA合衆国にも確認したが、北Cがミサイルを発射した形跡はないとのこと。

 Rが領空侵犯したわけでもないし、C国が大陸間弾道ミサイルを発射したという情報もない。

 確かに、北CやC国がミサイルを発射しているならば、茨城県菱沼市上空にのみ、飛翔体が現れるわけがない。

 Rにしてもそうだ。

 西からであろうと北からであろうと、太平洋側の茨城県上空にいきなり現れるのは無理だ。


 近隣海域に不審船は見当たらない。

 まして潜水艦が敢えて上空に向けて飛翔体を発射する訳がない。潜水している意味ないし。


 では、茨城県菱沼市上空にあるとそれを取り巻く小型のは何か?


 ……地球外生命体?


 そんな非ィ科学的なこと、ある?

 いや、可能性は否定できない。

 否定する科学的根拠もないからだ。






 そんなことを考えていると、新たな報告が入ってきた。


赤羽あかばね参与!茨城県上空の宇宙戦艦的なモノから通信が入りました!おつなぎしてもよろしいでしょうか」


 了承すると、モニターに猫が映った。

 ペルシャ猫である。


「キミ、ユーチューブとつなぎ間違ったのかね?」


 と部下に尋ねてみた。


「間違っておりません!」


 との返事。


「猫じゃないか?」

「猫であります!」

「メーテルみたいな格好している猫じゃないか?」

「メーテルみたいな格好している猫であります!」

「おちょくっておりのかね?」

「おちょくっておりません!」


 もう一度、モニターに映る純白のペルシャ猫を見る。

 黒くて縦に長いふわふわの帽子をかぶり、黒いマントをつけている。

 猫は目を細めていた。眠そうである。

 しかし、猫は目を細めているだけで、しっかり起きていた。

 しかも喋った。


わたくしは宇宙適正環境保護機構GK132-28師団に所属するメーテタジアトムマル。

 本通信は、惑星GK-C132-28-3を支配する知的生命体『人類』に対し、GK-C132-28-3の支配放棄と惑星外への即時退去を要求するものである。本要求を人類が拒否する場合は、宇宙適正環境保護機構は人類に対し開戦を宣言する。また、3日以内に退去しない場合は拒否したものとみなす」


 まず猫が喋ったことに驚いたし、内容も内容だ。

「惑星GK-C132-28-3」とは、地球のことだと思われる。

「今すぐ地球の支配を放棄して即時退避せよ」と宣戦布告をされても日本だけで決定できない。国際社会に問わなければならない。

 それに、即時退避しようにも手段がない。

 現状、宇宙飛行士以外無理ではないか。JAXEは無理だ。NASEにお願いしても多分無理である。ロケットすらバカスカ飛ばせない事実を、目の前のメーテル風の猫に伝えていいものか。


 判断を上席に仰ぐ必要がある。

 防衛大臣から、総理大臣。それから、国連とか。

 そもそも、なぜこの猫は、敢えて島国ニッポンの茨城県上空に現れた?

 A合衆国やRやC国のほうが陸地として普通に広いのに、なぜ日本?

 良くも悪くも決断力がないのが我が国民性だ。

 基本、注視していく方向性で検討。

 それができないのは甚だ遺憾である。

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