第9話 ハレスの家族

 ――あれから数日後。


「そろそろ大丈夫かな……」


 ポーションや治癒魔法を受ける事の出来ない俺は、怪我が自然治癒するのを待っていた。

 怪我をしている状態でもレベル上げにいけない事もないのだが、今は休んでちゃんと回復してから動いた方が得策だろう。

 今の状況で動いちゃうと怪我の治りも悪くなるだろうし、前みたいなイレギュラーに対応できなくなるしな。

 それに元の地球よりも自然治癒力は明らかに強いし。


「よし!今日からはまたレベル上げに行こうか」


 俺がそう思って立ち上がろうとしたら誰かが家に入ってきた。

 当然ノックなどはされてはいない。


「ハレス様……旦那様が呼んでいます」


 メイドがそれだけ言って家を出て行った。

 

「分かってはいたけど本当に扱いが雑なんだな……」

 

 一応様付けはしているとはいえとてもじゃないがメイドが雇い主の子供と接する態度ではない。

 

「まぁ、良いけどな」


 俺としてはそれでイライラするとかもない訳で特に気にする事でもない。

 

 今はそれよりも父親が俺の事を呼んでいるという事だ。

 

「なんなんだろうか?」


 俺はそう思いながらも屋敷へと足を運んだ。



 ――そして俺は屋敷に入った。


 屋敷に入るとメイドや執事が居るのだが……やはり冷たい目で見られている。

 俺はそんな事は気にも止めずに父親たちが待っているであろう部屋を目指していた。


(コンコン)


 俺はノックをしてから部屋に入った。


「失礼します」


 俺が部屋に入ると父親は真顔、義母は嫌そうな顔、兄は相も変わらず俺の事を馬鹿にしたようにニヤニヤとしていた。

 正直イラっとはするが今は無視だな。

 多分……というか絶対に今は俺の方が強いだろうが当初決めたように動こう。

 因みに俺は一応俯きながら自信がなさそうに動いている。


「とりあえず座れ」


 父親に言われた俺はとりあえず席に着いた。


「時間も勿体ないから言うが、二人には来年からネオグロー学園に入学してもらう」

 

 その話か……まぁ、今思えば俺に話があると言えばそれくらいか。


「お父様?俺はともかくなぜこんな無能まで?」


 セインはおそらくこの話を聞くのは初めてではないのだろう……そして俺を入学させる理由も父親からはっきりと聞いているような気がする……セインとの違いを皆に知らしめるためにとな。

 そう思った理由はセインがめちゃくちゃこっちを見てニヤニヤしているからだ。

 てか確定だろうな。


「こんな奴でも公爵家の子なのだ、いつまでも無能で居て貰っては困るからな」

「はぁ、どうしてセインはこんなに優秀なのにね……」

「お母様、所詮は男爵家の母から生まれたのですから当然ですよ」

「それもそうね」


 二人は馬鹿にしたようにそう言っていて、父親は我関せずって感じだ。

 

 俺の母親と言っても転生した俺からしたらそこまで実感の沸く話ではないから、それによって感情が激しく変化するわけではない。

 だがそれでも不愉快な事には変わりはない。大体馬鹿にされて何も思わないほど俺は大人じゃない。

 でもまぁ、今は大人しくしておかないとだしここはスルーしようか。


 俺が黙ってそう思っていたら父親が口を開いた。


「分かったかハレス、うちの家紋に泥を塗るなよ」

「はい。分かりました」

「それじゃあもう出て行け」

「はい」


 俺はそうして部屋を出て屋敷を後にした。



「それじゃあ気を取り直して行こうか」


 大体俺は強くならないといけないのでラヴィ家の奴らに構っている時間はない。

 いずれは勝手に消えていくんだしそう思うと哀れだなとしか思えない……まぁ、完全に自業自得だな。


「そんな事よりもどうしようか?」


 まだ転生してから一週間ちょっとでレベルは11で順調すぎるほどの成長速度だ。


 レベルが10を超えたのでそろそろもう一つくらいスキルを増やすのも良いし、レベル上げに注視するのも良い。それか魔力を増幅させるアイテムを取りに行くのも悪くない。【空間指輪】を入手するためにはある魔物と戦う必要があるのでもう少し強くなってからにしたい。まぁ、ハイオークよりも強いからな。


 そして俺は今回の一件で目標を変えた。

 元々は学園に入学するまでにレベル20だったのだがそれを学園に入学する前にレベル50に変更した。

 なぜ50かと言うとゴブリンキングを倒せるかもなってレベルだからだ。

 

 そんな訳でとにかく俺は急がないといけない。

 イレギュラーに対して対応出来ないと簡単に死ぬ……それがこの世界だから。


「ふぅー、取り敢えずここら辺に住んでいるオークを狩りつくすか」

 

 オークでのレベル上げはちょっと効率が悪いが、ハイオークが出るなら話は別だ。

 それにオークは集落が多くエンカウントしやすいモンスターだしな。



 ――それから三か月後。


 俺は付近のオークやハイオークを狩りつくして、他にも多くの魔物を狩っていた。

 今ではハイオークに関しては簡単に倒せるようになっている。

 

 そしてつい昨日の事だが途中森で黄金スライムとも奇跡的に出会って、倒すのは苦労したが大量の経験値を獲得できたのも幸運だった。

 そしてその黄金スライムからレアドロップを入手した。

 それはスキルが入手できるスクロールで、俺もドロップするとは思っていも居なかった。ていうかゲームでも黄金スライムの出現確率がめちゃくちゃ低いのに更にドロップ確率は超絶低パーセントなので俺自身もマジで驚いた。

 

 因みに黄金スライムの上にも黄金ハイスライムなどが居るがそいつらは経験値が更に多いだけでスクロールのドロップ確率は変わらない。

 そんな訳でゲームをやりこんだ俺でも、黄金スライムからのスクロールは二回しかドロップしていなかったくらいだ。


(ステータスオープン)


名前:ハレス・ラヴィ 男

年齢:14歳

レベル:37

適正魔法:なし

スキル:"ファイアーバレッド""EXヒールlv1"

固有アビリティ:【魔力吸収】


 転生してから三ヶ月ちょっとでレベル37。

 後七カ月であと13レベルを上げる……本当に順調だ。

 ていうか今現在で学園に入学しても誰にも負けないだろう。

 勿論先輩や先生と比べたら負ける事もあるが同級生では間違いなく敵なしだ。


 勿論主人公やヒロインの成長速度も速いが、それでもって感じだろう。


 そしてこの"EXヒール"とは特殊スキルで使えば使うほどレベルが上がっていく成長型スキルだ。今でこそただのヒールなのだがレベルマックスの10まで上がるとそれこそ聖女の"ハイヒール"よりも回復力が高い。

 それこそ千切れた腕や見えなくなった目まで治せるくらいだ。

 そして"EXヒール"は強すぎたがゆえに弱点があったのだ、それが魔力消費が半端じゃない……確か"EXヒール"はレベル問わず魔力の最大値の半分を使うはずだ。

 ていうかこのゲームではEXスキルが例外なく消費魔力が滅茶苦茶多い。

 そんな訳でゲームでは最強ヒール魔法で、ポーション必須のスキルでもあったのだが、魔力を回復できる俺は違う。


「取り敢えず"EXヒール"のレベルを上げるか」


 スキルレベルを上げる条件がちゃんとスキルを発動して怪我を治すことだ。

 そのため"EXヒール"を発動するだけじゃスキルレベルは上がらない。

 しかし逆に言えば、少しでも傷を負っていればいいのだ。つまりかすり傷程度の怪我でも問題ない。


 そうして俺は他の冒険者がやられて落として行ったであろう剣を持ち帰ってきた。

 とても魔物と戦うときに使えるような状態の剣ではないが軽い自傷をするには問題はない。


 そうして俺はその剣で腕に傷をつけた。

 かすり傷程度の軽く血が出るくらいの怪我だ。


「"EXヒール"」


 それと同時に"EXヒール"を使用すると怪我は一瞬で治った。


 ――それから丸三日後。


「やっとかよ……」


(ステータスオープン)


名前:ハレス・ラヴィ 男

年齢:14歳

レベル:37

適正魔法:なし

スキル:"ファイアーバレッド""EXヒールlv10"

固有アビリティ:【魔力吸収】


 丸三日ずっと座りっぱなしで自傷してスキルを使い続けていた。

 試行回数で言ったら五桁を超えるだろう……数えてないから確かな回数は分からないけどな、とにかくそのくらい繰り返してやっとレベルが最大になった。


 そんなに急いでする必要もないのだが、怪我をしないと駄目な訳だし早めにしておいた方が良いと思ったから、この際だし一気に終わらせることにした。

 当然ながら滅茶苦茶苦痛ではあったけどな。痛い訳じゃないがとにかく大変で精神的な疲労が凄かった。


 この"EXヒールlv10"があればどんな怪我でも治るのだが、かと言って慢心は出来ない。

 "EXヒール"は怪我に有効なだけであって病気や毒、呪いなどの状態異常に関しては効かない。それと当然死人には効果はない。


「まぁ、状態異常を治せるようになるスキルは俺には入手出来ないしどうしようもないか……」

 

 状態異常を治せるスキルはスクロールでもないはずなので俺が得る事は不可能。

 それ故にアイテムなどを蓄えておく必要がある。


「まぁ、だとしても【空間指輪】が必要だな……まだまだやる事が多いな」


 転生した当初ではただ強くなればいいと思っていたのだが数カ月過ごしてみて考え直した事も多い。


 先ほど言った状態異常の事もそうだが、攻撃スキルの少さとかもな。

 この先"ファイアーバレッド"一つでやっていける自信もない。今は良いが今後はな……


 とにかく俺はまだまだ強くなれるはずだ。

 死にたくないから強くなる……それはもちろんそうなのだが、実は最近はちょっとずつ強くなる事が楽しくもなっているしな。

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