★1 カードゲーム喜怒哀楽 2枚目~才能マイナス男の誘い~
イカリ 「にしてもほんとにちょっと元気ないじゃん。なんかあった?」
シバラク 「うーん…。」
イカリに聞かれ、最近の『シュートリア・ネオ』の顛末をぶちまけるかシバラクは迷っていた。というのも幼馴染ではあるが、TCG趣味はイカリにあまり合わなかったのだ。別に嫌っているわけではないが、かつて『シュートリア』を教えて一緒に遊んだ時も、また中学校の修学旅行でトランプなどで遊んだ時も、イカリは負けまくっていたのだ。
元来裏表がなく、まっすぐな気性で、友達として気持ちの良い奴なのだが…そのせいでカードゲームの駆け引きがド下手なのである。また負けず嫌いな面もあるため、小学校の「『シュートリア』カード引き裂き事件」を引き起こし、学級裁判にまでなった。
結局先生の「そもそも学校にこんなもの持ってくるんじゃない!」という説教を受け、引きこもってやろうかとシバラクは本気でグレかけた。しかしその夜に、全然わかってないながらもイカリがカードを買って家に来てくれた。当時はまっすぐなイカリのやさしさがうれしくて、自分の器の小ささに恥ずかしくて、半べそをかきながら謝った。
ただしカード自体は別のもの(というか『シュートリア』カードですらなかった)だったため、「二度とカードゲームには誘わん」と、別の意味でも泣きそうだった。
そんな経緯があったので、カードの話題はあまり話してこなかった。ただ、今回はショックも大きく、またカードゲームに勧誘する目的でもないため、シバラクも「まぁ愚痴くらい聞いてもらうか」と話し始めた。
シバラク 「…って感じでな。ちと今は元気がない。」
イカリ 「ほーん。それはまぁご愁傷様。後半はよくわからんかったけど。」
シバラク 「…まぁ相談じゃないからいいけどよ。よくわからんはねぇだろ。薄情もん。半笑いで聞きやがって。」
イカリ 「まぁまぁ、悪かったって。いやあまりにもタイミングよくてついニヤニヤしちまった。」
シバラク 「…ん?何が?」
イカリ 「いや実はさ、今度出るカードゲーム一緒にやらないか誘おうと思ってたんだよな。」
シバラク 「はぁ!?お前が!?カードゲームの才能マイナス男が!?」
イカリ 「…電車内で大声イクナイ」
シバラク 「…ソレハスミマセン…。」
タイミングよく学校の最寄り駅についた2人は顔を赤くしながらぺこぺこと頭を下げ、睨んでくるOLやリーマンをかき分け足早に電車から降りると、通学路まで早歩きで逃げるように進んでいった。
イカリ 「…お前ほんと時々空気読めないよな。そんなんだから彼女できないんだよ。」
シバラク 「…ぐぅの音も出ないときに追い打ちヤメレ。マジでへこむから…。というかそれよりさっきの話。」
イカリ 「あぁ、だからさ。一緒にやらん?」
シバラク 「マジで言ってんの?だったら1からちゃんと説明してくれ。」
イカリ 「えーっとな、お前『ライズ・バレー』って知ってる?」
シバラク 「あぁ、バレーボールアニメな。満の推しは『文島(ふみしま)』さん」
イカリ 「クール俺様キャラか、ブレないねぇ。ちなみに俺は『間瀬木(ませき)』で、喜美(きみ)は『水波羅(みずはら)』様」
シバラク 「…そうか、彼女経由でアニメ見たのか。というかお前も推しいるんか。」
イカリ 「『間瀬木』かっけーじゃん!泥臭くてあきらめない根性がさぁ…」
シバラク 「熱血キャラ好きな。それで?」
イカリ 「でさぁ、最近地方決勝編見たんだけど、あそこで覚醒したじゃん!?マジ報われたって感じで…」
シバラク 「ちげぇよ。話を戻せ。カードゲームになるのか?『ライバレ』?」
イカリ 「おう。ちょっと違くて、今度4月末にアプリが出るんよ。それがカードゲームらしくてな。」
シバラク 「あーそっちか…そっちはノーマークだったな…アプリかぁ…。」
イカリ 「なんか将来的にはリアルカードも出すかも?出さんかも?な感じなんだけど。」
シバラク 「うーん…。」
今まで紙のカードを遊んだシバラクとしては、デジタルのカードゲーム、特にアプリゲームはカードゲームじゃないという認識だった。駆け引きも何もなく課金して強くなったカード同士をぶつけ合う、まだじゃんけんの方がゲーム性があるようなアプリをごまんとインストールしては無課金でアンインストールすることで、いつしかチェックもしなくなっていた。
今回も話を聞く限りキャラゲーアプリ、「(高額)課金で『文島』のアバターゲット!」のような結末になりそうな感じがする。
ただ現在手持無沙汰になっているのも確かだ。しかもリアルカードも出すというのも気になる。ただのリップサービスなのか、ファンに課金してもらうコレクションベースのものなのかだと思うが…10%くらいは本気のカードゲーム好きが作っている可能性もなくはないか…などと考え始めていた。
シバラク 「………。」
イカリ 「へい!どうなんだい!」
シバラク 「うお!なんだよ…あれ?」
イカリ 「ったく、校門つくまで悩むことねーだろ。別に課金しろとはいってないんだからさぁ…。」
シバラク 「あぁ、ごめん…まぁやってもいいかなって思い始めてる…。」
イカリ 「お、そっか。ならまた昼に話そうぜ。とりあえずクラス分け見て始業式いくべ。」
シバラク 「そうだな。どうせ日本史選択は同じクラスだろ。」
イカリ 「だなぁ…っとほんとにそうじゃん。」
校門で受け取ったクラス分けの用紙を見て、2-Cの名簿に載っていることを確認した2人は、そろって中央階段を上っていくのだった。
次の更新予定
カードゲーム喜怒哀楽 @sunnetchi
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