08 エルフ軍 

 陣の北には、すでに全軍が整列をしていた。戦闘を行う兵士は4万以上、5千人を一単位として方陣を組んでおり、それが8部隊、間を置かずに並んでいる。


 さらに最前列には全高5メートルの人型ゴーレムが50体、横一列に肩を並べている。その身体は土をベースに、要所要所が岩で強化されたものだ。作り出した俺のイメージに微妙に引っ張られて、どことなくロボットにも見える形状をしている。足元には投石用の石を積んだ大型の荷車があり、ついに総金属製となった接近戦用の丸太のような打撃武器も完備である。


 今回はさらに、その前列に五百人のエルフの軍が並んでいた。


 半々の男女比、露出の高さ、そしてなにより全員が金髪緑眼の美形なことで、あまりにも目立つ一団である。しかも率いるのは縦ロール美女のゼファラと、ポニーテールの美少女アルファラの親子である。彼らが伝説上のエルフ族であることを含めて、兵士たちの注目を一身に集めている。


 エルフ兵の顔つきを見ると非常に戦意は高いように感じられた。彼らはやはり全員が戦士ということなのだろう。


 ゼファラとアルファラ親子のところへ行くと、2人とも真剣な顔つきで迎えてくれた。


「マークスチュアートよ、こちらはいつでも戦えるぞ」


「うむ、皆が魔力を高めているのが感じられるな。全員がこちらの軍の魔導師に匹敵する魔力を持っているようだ。さらに弓まで修めているとなると、その戦力は計り知れぬものになろう」


「ふふ、さすがにわかるか。我らは全員が一流の戦士であるからな」


「それだけにどの役割を頼むのかはこちらの力量が問われそうだ。ところで昨日から気になっているのだが、アルファラ殿が『破邪の弓』を持たれているのはなにか意味があるのだろうか?」


 俺の質問に、アルファラが肩から『破邪の弓』を下ろして手に持った。ゲームでも重要な役割を持ったキーアイテムであるが、もちろん通常の武器としても屈指の強力さを持っている。ゲームでも終盤アルファラが使うことになるものなので、今装備していること自体には別に問題はない。


「なに、一度奪われそうになったゆえ、祭壇に収めておくよりアルファラが持ち歩いていた方が安全だろうと思ったのだ。武器としても強力ゆえ、ワイバーン相手にも役に立つであろう」


「うむ、よい判断であろうな」


 アルファラの装備が最初から最強ランクなのは正直ラッキーでしかない。彼女はまだフォルシーナたちに比べるとレベルも低いはずなので、武器で補うのは重要である。


 と、そこで腰に下げていた『通話の魔道具』からツクヨミの声が聞こえてきた。


『マスター、高速移動中のランクAがあとわずかで到着します。ご注意ください』


「了解した」


 返事をしてゼファラの方を見る。ゼファラはうなずき、


「トカゲどもが来るぞ! 展開せよ!」


 と指示を飛ばした。


 エルフ兵が左右に広がり、弓と矢を手に空を睨む。


 俺も空へと視線を移すと、はるか遠くに小さな鳥のようなものが無数に飛んでいるのが見えた。


 その鳥に見えたものは、近づくにつれて翼の生えたトカゲのような姿のモンスターであることがわかってくる。ファンタジー世界では非常に有名な『ワイバーン』である。


 ワイバーンはメディア作品によって扱いが変わるが、この世界のワイバーンはドラゴンの眷族であり、そして空からブレスを吐いてくる非常に強力なAランクのモンスターである。


 さらにそのワイバーンの群れの真ん中に、翼開長だけでワイバーンの3倍はありそうな、巨大な飛行型のモンスターが悠々と飛んでいた。


 翼と後ろ足のみのワイバーンと違い、それは腕に近い形状の前足を備え、頭部からは雄々しい2本のツノを生やしている。全身は漆黒の鱗に包まれており、首の後ろから伸びるのは、炎にも見える真紅のたてがみである。彫りの深い顔にはモンスターの王者たる風格すら漂う、まさに絵に描いたようなドラゴンである。


「むう、あれがエルゴジーラとやらか。なるほどこれほどの威圧感を持ったモンスターは初めて目にするな」


「モンスターだが高い知性もあり、話をすることも可能だそうだ。存在としては上位の魔族に近い。もっとも話し合いに応じる相手ではないがな」


「さもあらん。あれほどの力を持つなら人間と話をすることなど考えぬであろう。こちらが同等の力を持たぬ限りはな」


「ふむ……」


 ゼファラの言葉に、マークスチュアートとしての俺の勘にピンとくるものがあった。


 ゲームにおける四至将エルゴジーラは、知性があり言葉は喋るものの、極めて傲慢かつ尊大な性格で、到底会話のできる相手ではないという扱いであった。主人公たちに倒された後も最後まで自分が力で負けたことを認めず死んでいくのだ。


 だがもしこちらの方が強いということを認めさせることができれば、ゲームと違って多少まともな会話ができるのではないだろうか。


 実はあのエルゴジーラ、ゲーム上では扱いが微妙で、デモシーンでは魔宰相ロゼディクスに弱味を握られているみたいな匂わせがあるのだが、そのあたりが十分に説明されないまま退場してしまうのだ。そもそもモンスターの王たるドラゴンが魔族に従っているということ自体不自然なことである。元プレイヤーとしては、そのあたりの事実関係を知りたいという好奇心が生まれてしまうのは仕方ないだろう。


「ゼファラ殿、予定通りエルゴジーラは私が相手をする。ワイバーンは任せるが、本隊には魔導師も揃っているゆえ、いざという時はそちらとも協力して欲しい」


「ふ、あの程度のワイバーンなら火を吐かれる前にすべて落とせる。心配は無用」


「ならば私はエルゴジーラのもとに向かう。では頼んだぞ」


 俺はそう言って、大平原の中を一人、エルゴジーラの元へと歩いていった。





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 ちょうど今連載の方で戦っているライラノーラの姿もビジュアライズされた形でご覧になれますので、是非ともよろしくお願いいたします。

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