第22話 人は見かけによることもある

「全員揃ったことだし始めようか」


 生徒会長の声で歓迎会が始まる。生徒会のお仕事は基本的にお堅いものが多いが、今回は文字通り新人を歓迎するための集まり、ある程度ゆるゆるな空気が流れている。


「ということでとりあえず今年の主戦力になるであろう1年生のお二人です。それじゃあ自己紹介をお願いしても良いかな?」


 何という事でしょう、志願者が少ないとは聞いていましたが1年生で生徒会に入りたい人は俺と早乙女さんだけらしい。うん、そんなことある??


「白月悠誠です。先輩方から学び、出来る事着実に増やしていきたいと思っています。よろしくお願いします」


「早乙女香澄です。至らない所もあるかと思いますがどうぞよろしくお願いします」


「一応リアスさんも自己紹介する?」


「そうさせてもらおうかしら。香澄と契約している悪魔のリアスよ、よろしくお願いするわ」


 自己紹介を終えるとパチパチと拍手が鳴り響く。


「白月君、早乙女さん、生徒会に入ってくれて本当にありがとう。これで何とか今年も生徒会の仕事を回すことが出来そうだよ」


 心の底から感謝していることが伝わってくるのはこの部屋を見れば一目瞭然。ルビアを除き、1年生を含めた生徒会の人数はなんと5人。内訳は3年生が2人、2年生が1人、そして1年生が2人。……わぁ、すごいブラックな香りがするぞ~。


「入学式は大変だったもんね~」


「忙しすぎてもう思い出したくないですよ……」


「はる君ひぃひぃ言ってたもんね~。今思い出してもすごく面白いよ~」


「や、やめてくださいよ先輩……」


 ふわふわとした口調の3年生の女子生徒とショタっけのある2年生の男子生徒が仲睦まじい様子を見せる……いや見せつけてくる。僕知ってる、この二人出来てる奴だぁ。


「村瀬と晴義くんの言う通り3人で行事を運営するのは限界があってね。少しでも多くの人が欲しいなって思ってたんだ。だから本当にありがとうね二人とも」


「組織の長がそんなにへこへこしてどうする?もう少ししゃんとしたらどうじゃ」


「僕はこっちの方が性に合ってるんだよ。それに二人ともすごくいい子でしょ?」


「確かにこ奴らは良いかもしれんが、その調子だといずれ舐めた態度を取ってくる奴らが現れるぞ?今のうちに少しずつ改めた方が良いと思うのじゃが」


「そうなったらルビアが何とかしてくれるでしょ?だから僕はこのままで良いかなって」


「やれやれお主は相変わらずじゃのぉ」


 ……何この生徒会という名のリア充空間は。あれか?非リアは死ねと申すか?お前に吸わせる空気は無いと申すか?このカップリングが成立しまくっている空間に置いて独り身の僕の居場所がないんですけど。歓迎会なのにもう疎外感を感じてるんですけど。


 俺はまだ良いとして早乙女さんが可哀そうだわ。だってこの人俺の親友が好きなんですよ?なのに俺と一緒に生徒会に入る羽目になってしまって……可哀そうだし申し訳ないしすごく気まずいんですよ!


「それじゃあ次は僕たちだね。前にもしたけど一応、生徒会長の三枝敬一さえぐさけいいちです」


「わしはさっきしたからもうせぬ。次は穂乃果じゃ」


「は~い。副会長を務める村瀬穂乃果むらせほのかです、よろしくお願いします~」


 ゆるふわなミルクティー色の髪を揺らしながら挨拶をする村瀬先輩。こんなゆるふわお姉さんがショタコンか……ふむ、神か?


「書記を務めています、吉村はg……晴義はるよしです!よろしくお願いします……」


 噛んだ。それも盛大に。


 かなりの勢いで嚙んだせいか口の痛みに悶え始める吉村先輩。


「もうはる君緊張してるのは分かるけど気を付けないとだめだよ~」


「うぅ……痛い……」


 そしてすかさずよしよしと頭を撫でる村瀬先輩。やめてくれ、それ以上のイチャイチャは俺の心に効く。


「多少のアクシデントはあったけど自己紹介も終わったことだしとりあえず乾杯しよっか」


「乾杯するのが先だと言うたのに……おかげでわしは既に喉がカラカラじゃ」


「ごめんって。次から気を付けるからさ」


「まぁよい。ほれ、早う乾杯の音頭を取らぬか」


 だからさぁ!自然といちゃつき始めるのやめてね!?あなた達は自分たちの世界に入り込みすぎなんですよ!別に悪い事じゃないんだけどさぁ!?なんかこう……皆様方がいちゃつく度にこう心に来るものがあるんですよ!


「ありがとうルビア。んんっ……今年も人数が少なく一人一人の仕事は多くなるかもしれない。それでも僕たちは仲間だ、皆で協力して皆を楽しませよう。そして皆で楽しもう。今年1年間よろしくね、乾杯!」


「「「「「「乾杯!!!!!!」」」」」」







「んまぁ……生姜焼き考えた人って偉大過ぎない?私生姜焼きを考えた人とだったら結婚できるかも~」


 よく分からないことを口にしながら生姜焼きをモグモグと咀嚼するベル。とても美味しそうにしてくれるのは作り甲斐があってよい事なのだが定期的に意味不明な事を言い始めるのはやめて欲しい。無性にツッコミたくなる。


「あ、ベル」


「ん~?」


「今日生徒会の集まりでルビアさんに会ったぞ」


「へ~そうなんだぁ……ってルビア様!?ごほっごほっ!!」


「えぇ……」


「えぇ……じゃなくて水!」


「はいはい」


 俺は水の入ったコップをベルに手渡すとひったくる様にコップを取りごくごくと飲み始める。


「はぁ……危ない。悪魔なのにお釈迦になるところだった……」


「誰が上手い事と言えと」


「というか明らかに喉つまらせてるの分かってたんだから困惑してないで早く水ちょうだいよ!」


「それは本当に悪かった」


 あまりの二度見っぷりにルビアさんどんだけすごいんだよってなっちゃったんです。だってあのベルが様付けしながら驚いてるんだよ?一体何者なんだよあの人……。


「……ちなみにルビア様何か言ってた?」


「え?特に何も言ってなかったぞ?どうせ家で寝てるだろって言われたくらい」


「よかったぁ……」


「……なぁベル、ルビアさんって一体何者?」


「希少種である吸血鬼族の王女様だよ」


「……はい??」


 え?吸血鬼の王女様?何でそんな人がうちの学校の生徒会長と契約してんの?というか王女様とため口で会話してる三枝先輩も一体何者なの??


「今の魔界は魔王の下に全ての種族が集うって感じなんだけど、昔は国が乱立しててね?それで魔王が武力で勢力を拡大していく中で唯一魔王軍に屈さず交渉によって自分たちの利権を獲得した種族が吸血鬼なの」


「はぁ……それでルビアさんがその、吸血鬼族の王女様だと?」


「そ。あの人馬鹿みたいに強いから怖いんだよね~。昔一回だけいつもみたいな感じで接したら死んじゃうんじゃないかってレベルの圧を掛けられたんだよ。今思い出しても超怖いわ~」


「……ちなみにルビア様って何歳なの?」


「ん?詳しくは分かんないけど200歳くらいはいってるんじゃない?」


「わぁ」


 悲報。合法ロリばばあ、馬鹿みたいに強い。というかそんなルビアさんに普通に接してる三枝先輩のすごさが際立つな……あの人すごぉ。

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