第15話「予言の光」



宝石から放たれた光が、練習場の空中に文字を描き続ける。


「九つの月が重なる時」ルークが古代文字を読み上げる。「扉が開かれ…」


「門が解放される?」セシリアが続きを読む。「でも、最後の部分が…」


確かに、最後の文字は歪んでいて、完全には読み取れない。


「九つの月の重なり」レオ先生が腕を組む。「それは、百年に一度の天体ショーのはず」


「え?」奈々が驚いた声を上げる。「それって、いつ?」


「三日後」


ルークの言葉に、全員が息を呑む。


「地下書庫に行こうとしてた日じゃない」私は直感的に言った。


「そう」レオ先生が頷く。「おそらく、偶然ではない」


篠原が数式の書かれたノートを開く。


「この式も、なにか関係してるのかな。ほら、この部分」


彼が指さす箇所で、宝石が再び反応。今度は、より複雑な魔法陣が浮かび上がる。


「これは…」私は目を凝らした。「移動魔法?」


「いいえ」ルークが緊張した声で言う。「封印解除の術式」


セシリアが小さく息を飲む。「伝説の古代魔法書を封印してる魔法陣と、同じ形」


「つまり」レオ先生が静かに言った。「私たちは鍵を手に入れていた」


部屋の空気が一変する。


「でも」奈々が不安そうに言う。「黒ローブの人も、きっと狙ってるよね」


「ええ」私は宝石を強く握り締める。「だから、私たちが先に」


「その意気よ!」セシリアが立ち上がる。「準備を始めましょう」


作戦会議が始まった。


レオ先生の地図。ルークの古代魔法の知識。セシリアの家に伝わる秘伝の魔法。そして、私たち三人の数式魔法。


全てを組み合わせて、最高の作戦を練り上げる。


「じゃあ、決行は明後日の夜」


レオ先生の言葉に、全員が頷く。


その時、窓から差し込む月明かりが、普段より明るく感じた。


九つの月が、少しずつ、確実に近づいていく。


私たちの運命を変える夜まで、あとわずか。

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