第14話

テスト期間明け。

週明けから続々と返却されてくるテスト。


三人は今回も赤点を免れて、引退試合に向けてしっかりと部活に励む日々を送っていた。


私も無事に終えて一安心。

たまに部活で作ったお菓子を三人に差し入れたり、家で作ったのを持ってきて差し入れたりしていた。


来週から夏休みという所で、恒例行事の球技大会が始まった。


競技は、バレー、バスケ、野球にサッカー。

自分の所属の部活の競技には出られないと言うルールで、蒼くんと要くんはバスケに、日菜子はバレーに出る。

私は見学だ。


物との距離感が取りずらくなった去年の秋から、私は病院の診断書を提出し体育は見学で免除されている。


球技大会も、端っこでスコア付けのお手伝いである。

お陰で、見渡しがいのある場所でバレーもバスケも見られるといった感じ。


「日菜子も、要くんも蒼くんもやる気いっぱいだったから試合見るの楽しみだな」


呟きつつ、一年対二年の試合のスコアをつけていく。


そこに、まだ自身の試合は無い三人が見に来る。


「思うんだけどさ、有紗のスコアの付け方は凄い……」

日菜子の言葉に、要くんも蒼くんも頷いで同意している。


「この位置から、バスケとバレー両方見て得点付けるとか。有紗ちゃんはどうなってるの?!」


「有紗は、たまに凄いことを平気な顔してするよな……」

等と言われるので、私も三人に言葉を返す。


「別にファールを取る審判をするわけじゃなくて、どっちが点を入れたかを見てればいいんだもの。難しい事じゃないと思う」


それには、こっちに来た茜が突っ込む。


「それが、早々できる人が少ないから三人が驚いてるんだよ。有紗は、自分がかなり要領良く優秀だっていう自覚が無いよね」

ため息混じりの茜の突っ込みに、私以外は同意している。


「別に優秀だからとかじゃなくて、ただスポーツ見るのが好きなだけ」


そんな私に、四人は言った。


「うん、それはわかるけど。好きで片付けるレベルじゃないから凄いって自覚してね?」


「わ、わかった……」


四対一では勝てないので折れました……。


でも、そんなに特別じゃないと思うんだけどな。


そんなこんなで、球技大会中も私たちは和気あいあいとしつつ、試合はとっても白熱していて見ごたえ抜群だった。


蒼くんと要くんはボールがバスケになっても背の高さと運動神経の良さを発揮してバンバン得点していく。

スピード感もあって、とっても見ていて楽しい。


なにより、二人が楽しんでるのがよく分かる。

目線だけで合図を出し合い、パスを回してゴールを決めていく。

普段からサッカーで鍛えられてるからか、二人の息はピッタリなのだ。

こんなに上手く出来たら、バスケするの気分良さそう。


「確かに、要と蒼くんくらいの連携とれたら怖いもの無しな感じね」


「あれ? 茜、私声にでてた?」


「いや、顔に羨ましそうなのが出てた。有紗、バスケ好きだもんね」

そう言われる。


まだ、病気が酷くなかった頃。

小学生時代私はミニバスをやっていた。

体を動かすのも、運動するのも好きだった。


しかし、次第に症状は出始めて。

先々のことを考えて、手芸などのインドアな趣味にシフトチェンジした形だ。


手先を動かすのも楽しいので、別に不満はない。


「ふふ、そうね。今も観戦するのは好きよ。男子はやっぱりスピード感があって見応えがあるわ」


私の返しに、茜も言う。


「そうね、女子のバレーがゆっくりに見えちゃうくらいにはスピード感に差があるわね」


女子のバレーも決してゆっくりしている訳では無いのだが、こういう所に男女の差があるのか。

スピード感は男子の方が上だ。


展開の速さとして見てるのは、男子の試合の方が面白かったりする。


「あ、松島くん3Pシュート。サッカー部のはずなのに上手いし安定感あるなぁ」


茜も感心して見ている。

なんとなく、要くんはバスケ経験者な気がしている。


要くんたちの試合の結果は38対19で要くん達の勝ち。

順調に次のコマに進んでいる。


試合の終わった要くんと蒼くんが歩いてくる。


「お疲れ様。次は二年生とだよ」


伝えると、二人はまだまだ余裕そうな顔をして言った。


「二年か、油断大敵だな」


「要がいればこっちは余裕だろ?」


その会話に、私の考えは正解だったと気付く。


「要くん、バスケ経験あるでしょ?」


ニコッと聞けば、要くんは驚きつつ頷いて答える。


「うん、小学生時代はミニバスやってたから」

やっぱり、当たりだ。


考えが当たって嬉しくて、ついニコニコしていると蒼くんが質問してきた。


「なんでそう思ったの?」


「試合見てたら動きが良かったし、身のかわし方、動き方は慣れた人のものだったから」


私は素直に見たまま、感じたことを答えた。


「本当に有紗ちゃんは、よく見てるよね」


そして、私達は会話しつつ視線の先では現在日菜子がバレーで奮闘中。


「いくよー!」


バーン!

「日菜子、サーブが鋭くて強い……。あれ現役部員でも手こずりそうよ?」


日菜子のサーブが強すぎて、サーブだけで得点が積まれていく……。


「あぁ、日菜子は馬鹿力だからな……」

「日菜っちはテニスのサーブも凄いからね」


遠い目の要くんとニコニコ顔の蒼くん。

対比はすごいけど、言ってることは同じ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る