第2話 絶望に抗う策

 それはリースが創造した施設なのだろうか。

 気が付くと僕らの背後にはアパートのような住居が存在していた。

 5部屋が並ぶ長屋のような住宅街。

 グループ内で同じ家に収容され、贅沢にも一人一部屋が与えられた。


 クラスメイト2人の死。

 そして3日後には7グループから1人ずつ死者が出てしまう。

 恐怖と絶望で僕は布団をかぶって震えながら初日の夜を一人で過ごしきった。






 

「三浦くん。お話があるの」


 次の日の朝、僕をグループに誘ってくれた橘さんが真剣な面持ちで声を掛けてきた。


「こっちに来て」


 僕は橘さんに誘われるがままに彼女の部屋に案内される。

 橘さんの部屋にはすでに3人の先客がいた。

 有沢冴子、有沢みお、池田良太。

 クラスの優等生グループであり、人望も厚い3人。

 委員長の橘さんも真面目ながら垢抜けているというか、普通に可愛くて人気がある。

 頭の良いヤツは顔の作りからして違うのか、学校内でもモテまくっている4人だった。


「昨日みんなで話し合ったの」


 話し合った?

 僕呼ばれていないけど……


「三浦っちにも声掛けようと思ったんだけど、怖くて震えている姿見ちゃったからさ。私らだけで先に話し合っていたんだ」


 僕の疑問に答えてくれたのは有沢冴子。ちなみに有沢みおの姉である。


「そ、それはお恥ずかしい」


「んーん。全然恥ずかしくない。みおだってお姉ちゃんが隣に居てくれなかったら同じだったと思うから」


 小柄で優しい一面を持つ有沢妹の言葉に少し救われた気分になる。


「それでだな三浦。この追放ゲームに関して一つ決定したことがあるんだ」


 イケメンの池田が真剣な表情で僕の顔をじっと見つめる。


 まて。

 待ってくれ。

 この流れはまずい。

 この4人はクラスでの人気者。

 対して僕はクラスでぼっちのはみ出し者。

 誰が死ぬべきか、それは迷うこともなく——


「俺達のグループは……全員『自分』に投票してみないか?」


「——へっ?」


 てっきり僕が追放者にさせられるのだと覚悟していたが、池田から出てきた言葉は完全に僕の予想外のものだった。


「投票者が一番多い人が殺されちゃう。でも、投票数が全員『同数』だったらどうなると思う?」


 どう……だろうか。

 再投票になるのか、それとも全員が処刑されるのか。

 それとも——


「もしかしたら……全員生き残れる可能性も……ある?」


 この場に居る全員が静かに首を縦に振る。


「私達はその一縷の希望に掛けてみようと思う。三浦君も……この案に乗ってくれる?」


 運命共同体。

 全員死ぬか、全員生きるか。

 正直死ぬのは怖い。

 だけど誰かを殺して自分が生き残るのはもっと怖かった。


「わかったよ。僕もその案に乗る。自分に投票する」


 僕の言葉に全員が静かに笑みを溢した。


「よーし! 俺らの班の方針は決定だ! 明後日全員で行き乗るぞ!」


「「「おおおー!!」」」


 心から思った。

 このグループに入れてよかった。

 僕をグループに誘ってくれた橘さんには心から感謝する。

 僕がチラッと橘さんの顔を覗き見ると、彼女はニコっとはにかむように微笑みを返してくれた。

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