章間①

 ◇元第一王子婚約者<ハルネシア>side◇

「相変わらず規格外よね……」


 私は報告書を読みながらがため息をつく、あのクソ猿がエルフの国に旅立って数日幾度となく向かうよう追い立てた野盗や暗殺者がすべて返り討ちにされている。


「想定内といえば想定内だけど……癪に障るわね……」


 3倍の数程度じゃエルフの騎士団は攻略できないし、当然と言えば当然である。


「適当に謝辞を書いておきましょう、ついでにお茶会にでも招待して適当な洗脳してある義妹でも宛がおうかしら」


(正攻法じゃ太刀打ちできないし、いっその事取り込む方が安全かもしれないわね)


 リストを取り出して候補を探す、出来るだけ若くて男に媚びる能力が高い子が良いわね……。


「この子は……執着が過ぎるわね、この子は守備範囲外でしょうし……」


 貴族の性的趣向なんて殆どが歪んでいるし、猿の守備範囲に当たりそうな子が思い浮かばない。


「いい子が居ないわね……いっそ爵位という札の無い野味のある子のが良いのかも……」


 過去廃爵になった公爵家、私が間に入って取り持ったから連座での処分は免れた子達の中で、諸共処分しても問題無い子を探す。


「ふむ、そういえば娼館に丁度いい子が居たわね……」


 ――チリンチリン。


「姫様、何用ですか?」


「この子を呼び寄せて、駒として使うわ。娼館には適当にお金を払っておいて」


「かしこまりました……」


 部屋を出て行く執事、常に私の求める答えをくれるいい男だ。


「さて、もう少しボス猿の気分を味わってもらおうかしら……」


 そろそろ、新しい駒も補充しないといけないわね……。



 ◇◆◇◆

 ◇老竜<ガルフレド>side◇

「おう、ガルフレド。久しぶりだな!」


「お主か……久しいのう」


「そうだな、おおよそ15年ぶりか?」


「ふんっ……お主の事だからそこいらは理解しておらんだろう」


「あはは~バレたか……」


 ニコニコと笑いながら頬を掻く古き友、そういえばいつの間にか視力が戻っている。


「お主、いつの間に回復魔法まで学びおった?」


「あーこれは特殊なポーションだよ。お前の治療の為に作って来たんだ」


「そうか。苦労をかけるな」


 いつの間にか、翼も動くようになっている。


「どうだ? 久々に空の散歩と洒落込まないか?」


「お主も変わり者よな、そういうのは嫁子とするものじゃろうて……」


「それはそうだけどさ、偶には友達と飛ぶのもアリだろ?」


「フン……フォローはしろよ?」


「任せろ!」


 ヤツの魔法とワシの翼で空へ舞い上がる、10数年ぶりの外に全身が粟立つ。


「おおぉぉぉぉぉ!! 流石ガルフレド!!」


 森の上を空を飛び海に出る、月の光が海面に当たり宝石のように輝く。


(全く、ワシの負担にならんように、ほぼ一人で飛んでおるな……)


「そうだ、先日お主の弟子が来たぞ」


「あぁ、知ってる。嫁の武器を持ってたからな」


「あの部屋の秘密、教えて無いのだろ?」


「まぁな、それに教えるのは今じゃないし」


「そうか、お主がそれで良いのであれば好きにせい」


「見えてきたのぉ……」


「そうだな、相変わらずデカい島だな……」


 空に浮かぶ天空の島、ワシよりも遥かに先にこの世界にあった物だからわからないが原初の竜が生まれた場所とは聞く、その島の開けた場所にゆっくりと速度を下ろし着陸する。


「お疲れさん、どうだった?」


「そうじゃのう……久々に気持ちい空の旅が出来たわい」


「そうか、そいつは良かった」


「じゃがなぁ……もう少し魔法は抑えめで良いのではないか?」


「そうかぁ?」


「お主な、いくらワシが歳だからと言ってそこまででは無いぞ……」


「そうかい、じゃあ帰りは補助を殆ど切って飛んでもらおうかな~」


「言ったな? パラシュート? だったかのう、それの準備をしておけよ」


「落ちる前提じゃねーか!!」


(ワシは揶揄いに真面目に反応してくれる、本当に面白い奴じゃのう)


 いつしか他愛もない話で日が昇るのだった。


 ◇◆◇◆

 ◇アインside◇

「という訳で、ホウショウはエルフの国にで養生する事になったよ」


 ギルドマスターに呼び出された俺は彼の部屋で衝撃の事実を知った。


「マジかよ……また変な事に巻き込まれたのか……」


「そうみたいだね、でもまぁ大丈夫でしょ」


 あっけらかんと言うギルマス、そりゃ俺も大丈夫だとは思うけど……。


「困ったなぁ……」


 問題が発生しているのだ……。


「おや、どうしたんだい?」


「あぁ、それがですね……」


 商人という物は非常に面倒であり、非常に目ざといものである。ドランクが家督を譲った事、その後にエルヴィール領への販路を開こうとしている事、そしてホウショウと仲のいい俺という存在が、どこからか伝わったのか俺の方へ詰めかけてきているのだ。


「まぁ、ホウショウとのコンビで依頼はこなしていたので繋がりがバレている事は良いですけど……四六時中俺の元にホウショウを紹介しろだ、ドランクの件に一枚噛ませろだとうるさいんです……」


「そうなのか……だから今日もあそこまで姿を隠していたんだね」


「はい、嫁さんスズランも危険なんでアラビアンナイトで預かっててもらってますし、今は宿屋住まいですよ……」


「そうか……サリア君もそんな事言ってたけど、大変だねぇ……」


 ギルマスが苦笑いをしながら顎を撫でている。


「サリアって誰ですか?」


「あぁ、彼女は獣人ハーフビースト子でね、ホウショウが新人教練で面倒を見た子の一人でね今では弟子を名乗ってる一人だよ」


「獣人……あぁ、ホウショウの嫁達と一緒に居た猫獣人ハーフビーストの子か、仲良さそうでしたもんね……」


「そうだね、今は面倒を避ける為に闘技都市ベリディアスに行ってるそうだ」


「へぇ……闘技都市ベリディアスですか、となると結構な実力者ですよね?」


「あぁ、銀等級の中位程の実力だけど、恐らく上位はあると思うよ。ホウショウにも鍛えてもらってたみたいだし」


 となると確実に銀等級上位はあるな。


「俺も逃げたいっすよ……」


「あはは、同情するよ。そうだ、少しの間私の元で働かないかい?」


 何か思いついたように言うギルマス、なんか凄く面倒な臭いがする……。


「そんなに警戒しないでよ。ほら、今ミランダが里帰りしてるじゃん? そこで秘書が一人欲しいんだ」


「秘書って……ギルドの受付嬢なら沢山居ますよね?」


 ギルドの受付嬢は沢山居るし、そこから秘書を選べば問題は無い筈。


「いやね、正直言うとミラ君の仕事レベルになると三人は必要でね……能力の高い子三人に抜けられると回らなくなりそうなんだ」


「いやいや、俺はそんなに能力高くないですよ!?」


「そうかい? 私の知る限りじゃ依頼主との折衝から卓算機たくさんき無しでの素早い計算。身だしなみに敬語や礼儀、それにそこそこの戦闘能力。秘書として必要な能力は持ち合わせているのだと思うのだがね……」


「いやいや、ギルドの書類とかどうするんですか!? 職員じゃないからわかりませんよ!?」


「ふむ、それに関しては大丈夫、こちらでもう一人書類担当を付けるから。それにギルド職員ならここで寝泊まりできるから、今君を悩ませている鬱陶しい連中からは逃れられると思うんだけどね? 必要であれば奥さんも臨時職員として働いてもらっても良いし」


「うっ……確かに、それは魅力的……ですね……」


 リスクを考える、今の状態じゃロクに護衛の仕事も受けられない、かといって王都近郊の討伐任務は弱い魔物ばかりなので単価が非常に安い……。


「うん、じゃあこうしよう。これは私から特別依頼として出そう一日の手当ては大銀貨2枚だ。十日毎に+5枚をボーナスとして加算しよう」


 破格だ……破格すぎる……護衛任務とほぼ変わらない金額だ。


「わか……りました……お願いします……」


 俺は、ギルマスに頭を下げる。こうしてホウショウが帰って来るまでの約2週間馬車馬のように働かされるのだった。


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作者です!

ちょこちょこ書いてたホウショウの裏視点と追加部分です。

明日から新章に突入します!


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