第35話:試練の大樹②
「はぁ!!」
「プギィィィィ!」
「
背後に迫るオークに対して、飛び出した奏がオークの頭と首に高速の2連撃を入れる。
「ありがとう! 助かった!!」
「敵が多いですわね……」
「そうだね。でも、旦那様が私達の実力を信頼してくれてるもの!」
数は15体と想定以上だったが、今は特に危な気も無く戦えている。
「エルスリリア、まだ駄目だよ」
そわそわしている彼女に釘を刺す、今にも飛び出していきそうな感じで二人の戦いを見ている。
(とは言っても、相手の数が多いので心配ではある。それに、戦闘に入る前に手伝わないと言ってしまったし危険でもないのに割り込むのも気が引ける)
「はぁぁぁぁぁ!!」
少し武器任せだが、恵はオークを上下に斬り分ける。まさかオークも自分より小さくてか弱い少女達に蹂躙されると思っていなかったのか、一体……また一体と仲間が倒れるのを見て、恐怖が見え隠れしている。
「ふっ! はぁぁ!!」
残りは三体、このまま問題は無さそうだ。
恵の突進に合わせて奏がその影に入る、サリアでも見切れなかった二人の得意技だ。
「「「ブモォォォ!!!」」」
大振りする攻撃に合わせて恵が剣をぶつける、
「ブギイィィ!」
吠えたオークが空中にいる奏を掴もうと手を伸ばす瞬間、恵が奏のマントを引っ張り回避する、そして懐に飛び込んだ恵が切り上げでオークを二つにする。
この戦闘スタイルは互いに装着しているマントを使い、相手に攻撃範囲を読ませない戦い方で、人よりも遥かに動体視力の良いサリアの目を騙すという考えから生まれたものである。
そして、最後のオークも二人に挟まれて崩れ落ちた。
◇◆◇◆
「さて、今日はここで野営の準備だ」
階層主が居る階と次の階の狭間にはセーフエリアという物が存在している。ここでは敵も出で来ず、天気や気候の変動も無いのでダンジョン攻略者は基本的にセーフエリアを中心にダンジョン内での行動計画を立てる。
「安全とはいっても、自分達で野宿の用意や炊事とかはしないといけないからね」
「了解」「わかりましたわ」
二人が4人分になった食材の配分やそこから作る料理を考えている間に、俺は先先人たちが使ったであろう、焦げた石を集めて竈を組む。
「ホウショウ、水はどうするんだ? 魔道具は一応持って来ているが?」
エルスリリアが俺の作業を覗き込みながら聞いて来る。水は俺が魔法で補充する予定だったけど魔道具があるならそっちの方が楽だ。
「あぁ、それなら料理の水は魔道具を使おうか。シャワーのお湯はこっちで用意しておくから」
「シャワーが出来るのか!? いや、確かにホウショウの腕前なら余裕なのか……」
「まぁ、人数が多くなると魔力不足を起こすからね。ここに居るのは四人だし本当は一人用の湯船を作っても良いんだけど……」
あんまり豪勢な野営に慣れると、用意できなかった時にメンタルへの負担が大きすぎるからな。
「確かにな、本来であれば湯を浴びれるなど。野営では最上級だしな」
一般の冒険者なんて、臭いや返り血が酷くない場合はシャワーや水浴びなんてしないからな。
「と、言う訳で。俺はシャワー室を作って来るよ」
三人と離れてシャワー室を作る、まずは15cm位の高さまで魔法で土を盛る、そこに湾曲したパイプを差し込んで排水口を作る。排水は穴掘っといてそこに溜まるようにする、ダンジョンだし。
「よし、土台はこんなもんかな? さて、次は……」
壁と大きな湯入れを作りお湯を入れて流す、これで土が流れるならば焼き固めるが……今回は問題無さそうなのでさっきと同じようにパイプと蛇口とシャワーヘッドを着ける。
「後はすのこを置いて……脱衣場用の目隠しも必要だな」
目隠しも土壁で造り、後は使用前にお湯を溜めるだけだ。
それから、二人が数日分の献立を決定したのでテントを設営する。元々の予定は3人だからテントは少し小さめである。
「とはいっても、二人ずつで見張りをすればいいだけだし特に問題は無さそうだな……あの二人以外は」
奏と恵が壮絶なあいこ合戦を繰り広げている、どうやらどちらがエルスリリアと一緒になるかと言う事らしい。
件のエルスリリアは今、火おこしをしている。しかも、何故か時間があるからと弓きり式火おこしで火を熾そうとしている。
(これじゃあピクニックみたいなんだけど……まぁ、初日だし特に問題は無いか)
「やったぁ!!」
「うぅ……悔しいですわ」
「その代わり、明日は
「絶対ですわよ?」
どうやら決まった様だ、それから二人が交代でシャワーに入っている間に今日の夕食の準備をする、とはいっても
「えっと、メインで使う食材は干し肉とパンと野菜だけか。後はバターとかの調味料と牛乳もか」
見た感じホワイトシチューを作るらしい、これ以降の献立表を見るとどうやら二人は最初に節約をするタイプのようだ。
(食材自体は
「最初に設定した分で少し足が出るように献立を作ってるし。だったらもう一品用増やすために、ひと狩りして来るか」
結局、火を起こしを諦めて魔法で済ませたエルスリリアに声を掛けて、次の階層への階段を上る次の階層は森では無く広大な平原だ。
「さて……久々だけど上手く行きますように……」
「ティースラビットか丁度良さそうな獲物だ……」
全長50cmを超える大型のウサギの魔物である、地方だと食用として狩猟が行われていて、肉は結構おいしい。名前の通り前歯が長くゴブリンなんかの魔物は簡単に狩る事が出来る。
「身体強化をして……今!」
「ギュ!?」
放たれた矢が一撃で頭を射抜きそのまま木へと刺さる。
(丁度いい高さだし血抜きもやっちゃおう)
そのままそそくさと血抜きと内臓の処理を終えて肉を洗う、頭や内臓は手頃な穴に放り込んで燃やす。狼型の魔物が焼いた匂いに釣られて寄って来てたが、いざ俺が殺気を放つと蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
そうして皆の所に戻ると、既に調理が始まっていた。
「あ、お帰りなさい旦那様。お風呂にしますか? 食事にしますか? それとも、私達にしますか?」
妖艶な笑みを浮かべつつすり寄って来る奏、その姿を見てエルスリリアが放心している。
「それは。答えないと駄目?」
「煮込みの時間がありますので、出来れば私達からいただいて欲しいのですが……」
「じゃあ、お風呂で、っていうかシャワーだけど……それとこれ」
「旦那様、こちらのお肉は?」
「ティースラビット、さっき獲って来たばかりの新鮮なお肉だよ」
「そうなのですね、では大き目めに切って串焼きにしますわ」
「メニューはお任せするよ、香草もある程度使っても大丈夫だし、保存が必要なら
「だったら私もやるよ、
「ありがとう、
「く、串に刺すのは任せてくれ! 何もしないのは気が引けてな……」
「でも、エルスリリア様は火を熾してくださいましたし……」
その言葉に、エルスリリアが気まずそうに明後日の方向を向く。
「い、いやぁ……結局魔法を使ってしまったしな……」
「そうでしたのですね……では、私達が切りますのでそれを刺していただければ」
「任せてくれ!」
意気揚々と応えるエルスリリアの声を聞きながらシャワーを浴びるのだった。
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作者です!
昨日はすみませんでした!
ご心配いただいておりますが、一応9月に入ったら更新ペースを落とす予定です。
この作品のまとめとか人物用のネタ帳作りとか、プロット作り等々。少し整理しつつやる事が増えてまいりましたので……。
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