第2話 最恐最悪

 数日が経ち、街でやるべき、物資の調達などを終え、今いる街を出ることに。

 って、行っても...出て行けそうにないんだが。


「居たか?」


「ううん。」


「僕の方も、居なかったよ。」


「ほんと、どこ行ったんだ...」


 出発しようとした時、アルベルが居なくなったのだ。

すぐに帰ってくると思ってたけど...もう居なくなってから、30分くらい経ってる。

 今まで、これほど長い間何も言わずに、一人で行動していることなんて無かった。


「魔力探知も、人が多すぎてどれが、アルベルか分かんないしな。とりあえず、入れ違いにはなりたくないし、ここで待ってるか。」


「うん、そうだね。」


 街の出口付近で、アルベルの到着を待つ。

しかし、一向に来る気配がない。


 探すをやめ、出口付近で待つことにしてから、数十分した頃だろうか。

なにやら、街の様子が騒がしくなり始めた。


「どうしたんだろうね。」


「やけに騒がしいよな。」


「すみません、」


 ヘルメスが、少し慌てた表情の女性に話しかけた。

女性の話を聞いたヘルメスは、荷物を置いて、すぐに街の中心へと、走っていった。


「ちょ、おい!マレン、追いかけるぞ!」


「分かった!」


 ヘルメスの置いていった荷物を持ち、ヘルメスの後を追う。



 しばらく走り続け、やっと止まったと思うと、金髪の男と戦っているアルベルの姿が見えた。


「アルベル!!」


「華夜とマレンは、下がっていてくれ。」


「わ、分かった...」


 アルベルが押されてる...って、ことは、だいぶ強い敵だな。てか、なんで戦いに?

 攻撃する暇がないほどに、アルベルは金髪の男に押されている。

アルベルが剣なのに対して、金髪の男は素手。

なのに、金髪の男はまだ、余裕がありそうな動きをしている。


「ん?誰かと思ったら、マモンか...数日ぶりだなぁ!!」


 金髪の男が、ヘルメスに気付く。

金髪の男は、アルベルのことを建物へ吹き飛ばし、嬉しそうにヘルメスに近付いた。


「人間に戻りたい。そんな目をしてるなぁ!なんだ?今更、お仲間ごっこでもしたいってのかぁ?」


「サタン、やはり君と僕は気が合わないようだな。」


 ヘルメスが、金髪の男の腹に思い切り、パンチをする。

しかし、金髪の男は微動だにしなかった。


「テメェは、オレと仲良くしたいんだろうけどな...オレは違う!オレは、強え奴を殺せれば、それでいい!!だから、テメェと仲良くする気は、微塵もねぇよ!!」


 金髪の男は、軽々とヘルメスのことを蹴り飛ばした。

 な、なんなんだコイツ...ヘルメスのことをあんな簡単に...


「で、テメェらはなんだぁ?」


「ヘルメスの仲間だ...」


「ヘルメス?まあ、そんなのどうでもいい。弱え奴は邪魔だ。」


 俺たちには見向きもせずに、吹き飛んだアルベルの元へ歩き始める。

 ・・・いや、勝てなくても守らなきゃ、仲間じゃないだろ!!


 アルベルの元へ走り、金髪の男の前に立つ。


「なんだぁ?邪魔する気か?」


「こいつは、俺の仲間なんだ。殺させるわけないだろ...」


 金髪の男は、その銀色の目で俺の事をしばらく見つめると、大きくため息をついた。


「なあ、テメェは、弱い上に馬鹿なのか?

テメェは、オレに勝てない。んなの、分かるだろ!!」


「それでも、俺はアルベルの仲間だ!

仲間を見殺しなんて、出来るわけないだろ。」


「これだから、馬鹿は嫌いなんだよ...

オレは、テメェみたいな雑魚の血で、手が汚れるのが一番許せねぇんだ。三秒以内に消えろ、そしたら、テメェのこと殺さないでやるよ。」


 動かずに、金髪の男のことを睨みつける。


「そうか...じゃあ、ぶっ殺してやるよ!!」


 金髪の男のパンチが、腹に当たる。

勢いのまま、隣の建物へ吹き飛ばされた。

 し、死ぬ...レヴィアが可愛く思えるくらいの、パワーだ...


「俺が、普通の人間だったら...今頃、死んでたよ...」


「あのガキ、余計なことしやがって...」


「ほんと、この再生能力がもらえたことだけは、感謝してるよ。」


 レヴィアと戦っている時に発覚した、この再生能力。数秒あれば、大体の傷が元通りって、やつなんだけど...弱点があることが分かった。

 それは、再生した後、かなり腹が減ること。

まあ、暴食の大罪人ベルゼから、もらったって考えると、そうだよな。


「見せてやるよ、弱者なりのプライドを!!」


「見せてみろよぉ!!」


 剣を構え、金髪の男に斬り掛かる。

しかし、予想通り避けられ、反撃をくらう。


「はあはあ...」


「めんどくせぇ、野郎だな。さっさと死にやがれ!!」


「仲間の為にも、死ぬ訳には行かねぇんだよ!!」


 俺みたいな奴の攻撃なんて、こんな強い奴にはかすりしない。それでも、俺は少しでも時間を稼がなきゃならねぇ...

 さっさと、起きてくれよ...ヘルメス!


 そう願った時、後ろから声が聞こえた。


「すまない...少し、油断していたようだ。」


「ヘルメス!」


「よそ見してんじゃねぇよ!!」


 金髪の男の攻撃を、ヘルメスが剣で防ぐ。


「あまり街で、この剣を使いたくないんだけどね...君と戦うなら、使うしかない。」


 金髪の男は、標的を俺からヘルメスに変え、戦い始めた。

 よし、今のうちに、アルベルを!

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