首を吊る男


自分で言うのもなんだけど、私は怖いもの知らずなところがあってまぁ基本怖がらないし、驚かない。そんな私が怖い思いをした体験がある。



今、私は両親と一緒に一戸建てで暮らしている。かつて、ここは古いアパートが建っていたらしい。そのアパートを取り壊して、私たちの暮らす家になったわけなのだが。


この話は私が小学6年生くらいの時である。はじめての一人部屋に歓喜の舞をしていた頃だった。


テンションが高いまま、夜を迎えた私は爛々とした目で布団に入っていた。



そんな時だった。


私の部屋のはずなのに私の部屋じゃない。


ふとそんな考えが頭の中を巡り、巡った。


身体中の毛が逆立っている。今までにない感覚が私を襲った。



(え、この部屋私の部屋だよね?)



目は閉じているのに、なぜか自分の部屋じゃないとわかった。





さらに、キィキィキィと何かが軋む音がした。私は耳が聞こえないので、軋む音など聞こえるはずがないのだ。


(なんで音が聞こえるの?)


さすがにこれはやばいと思い、下にいる母に助けを求めようと布団から起き上がったときだった。


本棚のすぐ隣に、知らない男の人が首を吊っていたのだ。


それも苦しそうな顔で首を吊っていた。


(ひっ)


声が出ない。


これはやばい。


目を合わせたらいけない。子供ながらに直感でそう思った。



その時、たまたま覚えていた南無阿弥陀仏を心の中で唱えた。地獄先生ぬ~べ~のおかげです。ぬ~べ~、ありがとう。



しばらくすると、いつもの私の部屋の空気に戻った。


(あ、消えた)







あとで両親に確認したら、「そういう場所じゃないはずだよ」と言われた。


だったらあの男の人はなぜ、私の部屋で首を吊っていたのだろう。


20代になった今でも、謎のまま。ちなみにまだ同じ部屋で暮らしている。

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