若葉の季節に、君と
はる
第1話
いつも思うんだけど、みんなどうして雨の日が嫌いなんだろう? 俺はけっこう好きなんだけどな。雨は全てのものに降り注ぐから。
「広瀬ぇ」
なんだか地獄の底から聞こえてくるような声がした。
「なんだよ、川端」
「腹減った」
「もうちょっと我慢しな? あと一限で昼休みだよ」
「耐えられない……」
俺は微笑んだ。川端が空腹を自覚しているのはいいことだ。僕は彼が空腹さえ忘れてしまう時を恐れていた。まぁ、それはそれでいいことではあるんだけど。
「ねぇ川端」
「なんだよ」
「進路希望の紙、もう書いた?」
「書いてねぇ……」
「今週末締め切りだよ」
「書く気がおこらん……」
「まぁねぇ」
川端は学校というシステムにことごとく沿わない人間だ。あえて反抗しているわけではなく、根っから集団行動が向いていないタイプの。だからクラスから黙殺されている。俺はそれをもったいないことだと思う。川端は本気を出せば凄い奴なんだけどな。
「なんでもいいと思うよ? 別に川端の希望を笑う奴じゃないし、担任は」
「なんのビジョンもない」
「もったいねーなぁ」
「もったいない?」
「俺はお前が思ってるより、お前のことを高く買ってるんだよ」
「ふぅん……」
よく分からんという表情をして、川端は窓の外を眺めていた。いつか分かる日が来るといい。外では、青々とした葉をつけた若木が爽やかに揺れていた。もうすぐ夏休みだ。貴重な二年の夏、どう過ごそうかな。きっと、何をしても楽しいと思えるんだろう。秋からは受験勉強を始めないといけないし。それまでの、つかの間の青春。
俺は知らなかった。開放的な夏休みに、あんな出来事が起こるなんて。
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