第5話『青空の結婚式』
第1節『コンバットウェディング』
良い感じで酔いが回る昼下がり。樫の樹を背に、けらけらと笑う群衆。その様子を見て、『私』は男の横に座る。
戦争のモノローグも終わりである。今は平穏を味わう時間だ。夢にまで見た光景が今、目の前で繰り広げられている。
「…良い生活を送ってるようだな?」
「ええ、お蔭様で。貴方がいなければ、今頃はどうだか…」
「よしてくれ、私は大罪人だ」
「僕も似たようなものですよ。地獄はあれで十分です」
『私』の言葉に、笑顔で返すダーコート。家屋から激しい音と、笑い声と拍手が聞こえるが、何だろう?
「ダーキー、ダーキー!!ぷぷっ!!こっちこっち!!」
「かかか!!面白いものが見れるぜ!!」
「ちょっと!!笑い者にしない約束じゃない!!脳天撃ち抜くよ!?」
怪訝そうに『私』とダーコートは、家に向かう。何事だ?そこで見たものに、2人は呆気に取られてしまった。
「きゃ…ろる?」
「あーっ!!その態度!!馬鹿にしてるでしょ、絶対!?だから…」
「は…はぁ~…これは驚いた…」
「おお…これは、なかなか良いじゃないか」
そこにはウェディングドレス姿のキャロラインが立っていた。サプライズもサプライズ。メンバーはダーコートに隠れて、まだ行っていなかった結婚式を催した。
「さー、野郎ども!!準備は出来てるな!?」
「ラジャ!!」
それを掛け声に、赤い絨毯がバージンロードとして丘に流れる。それに興奮するのは、娘エスメラルダだ。
「おかあさん、きれい!!いつもじゃーじだから、なおさら!!」
「どーだ、ダーキー!!苦労したんだぜ?お前に感づかれないように用意するのは。お前の千里眼は出し抜けないもんな」
「だが!!今回ばかりは騙されたろ!!細心の注意を払ったからな」
現にダーコートは見事に出し抜かれていた。戦時中は天から戦場を観ているとまで言われた男。彼に隠し事ができる者はこの世にはいないと思っていた。そこで、尽力したのが娘だ。
「やったな、エスメルちゃん!!キミのおかげだ。グッジョブ!!」
「ぐっじょぶ!!」
エスメラルダがダーコートとじゃれ合っている間に、少しずつ計画を進めていたメンバー。そのせいか、準備に1年2カ月もかかってしまった。だが、その甲斐はあった。
「これは…やられたな…き…き…綺麗…だよ、キャロル」
「あ…あ…ありがとう、ダーキー…」
「フォーウ!!やったぜ!!俺たちの勝ちだ!!」
「…ん?勝ち?」
今の一言に引っ掛かったのは新婦キャロライン。メンバーは喜びに舞い上がる者と、地団太を踏む者に分かれていた。
「2000リドルはデカいってー」
「ははあー!!騙せるほうにかけてる面子は少ないからな!!してやったりだぜ!!……………あ」
キャロラインは無表情で、銃の撃鉄を起こす。
「あんたら…私達で賭けてたわね?…そこまでやっておきながら、こういう結末は考えなかったのかしら?」
「え…えーと、そのあれだ…あれ?」
キャロラインからどす黒いオーラが見える様だ。メンバーは金縛りにあったかのように、身動きが取れない。
「この馬鹿どもがーッ!!明日の朝日は拝めないわよォーーー!!」
「う…うわぁーーーッ!!」
今は平穏を味わう時間だ。夢にまで見た光景が今、目の前で繰り広げられている。…はずだったのに。
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