ぼっちエリート
今日はなんて最悪な日なんだ……。俺はボッチなのに、休み時間の間、ずっとリア充と喋ってしまった。これでは、まるで俺がリア充の仲間みたいじゃないか!
我輩は不満であるッ! 不満であるぞ漱石よッ! いや……夏目漱石は猫だったか? まあ、どっちでもいいや。
頭の中で下らないコントを繰り広げていると、我が家の玄関の扉の前までたどり着く。いや、我が家 家って言うのは言い過ぎか。我が家っていうよりは、母親と妹の家って方が正しいか。
ボッチの俺に人権なんてあるわけない。我輩は場所を選ばずボッチなボッチエリート(ポ○モン風味)なのである。ただし、勝負に負けても賞金は落とさないが。
何より、母親にも妹にも、今まで色々と苦労をかけてしまった。そんな俺が、我が家なんて名称を使うのは罪深いだろう。矮小なる我が身を家に置いてくれていることに深く感謝せねば!
ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。
俺は母と妹に感謝の念を強く込め終わると、玄関の扉を開く。
「ただいま〜」
習慣付いた挨拶をすると、2階にある自室へ向かうべく階段を登ろうとする。しかし、どうやら妹の方が俺より早く帰ってきていたようで、リビングから出てきた妹と鉢合わせる。
「おっ、お兄ちゃん……おかえり」
鉢合わせた妹、
あっ、でも俺なんか結婚式に呼んでくれないか……。うん、その時は匿名で祝儀を贈るとしよう。いや、むしろ謎の人物からの祝儀なんてちょっとカッコイイかもしれない(混乱)。
「あっ、あのお兄ちゃん……」
「んっ、どうしたんだ七海?」
「うっ……ううん。なんでもない……」
「?」
少々、様子のおかしい妹の様子を不思議に思いながらも、自室に向かう。うーむ、今日の七海さんはもしかして女性特有のあの日なのかしら(唐突なオネエ口調)
ーーーーーーーーーー
《女川七海視点》
今日もまた話せなかったな……。兄を傷つけてしまったあの日以来、私と兄はほとんどコミュニケーションを取っていない。あの日、私が勘違いし、兄を傷つけてしまったのに私が兄に謝ると、兄は事もなげに
「大丈夫だ七海。すべて俺が悪かったんだ。だから、お前が気を揉む必要はない」
と言って、あっさりと私を許してしまった。私はといえば、すべての責任を兄に負わせ、ただ、のうのうと生きてしまっている。贖罪の機会も得ないまま、私は一人、あの日に兄にしてしまったことを後悔し続けている。
少し前には、時間が兄との仲を修復してくれると信じていた時期もあったが、長い時間が生んだのは最早取り返せなくなった兄との距離だけであった。開きすぎてしまった兄との距離は、一向に縮まることはない。あの日のことを再度、何度か兄に謝ったこともあったが、その度に兄は簡単に私を許した。
兄はもう既に私を許しているのだ。既に許している人間に謝ろうとしても、何も変わらないのは当然といえば当然なのかもしれない。しかし、あの日から突き刺さった私の罪は私を一向に許すことなく、突き刺さった傷は広がり続けている。
私はまた何もできなかったと自己嫌悪に陥りながら、部屋のベッドに飛び込み、小さく呟く。
「お兄ちゃん……もうあの頃みたいな仲にはもう戻れないの?」
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