神様に余命宣告されたので、できる限りイチャラブしたいと思います
猫舌サツキ★
第1話 あの人が死ぬ日を知る
日常に刺激が欲しいなと、俺は思っていた。
勉強は、ある程度できるけど、彼女も友達もいない人生は、刺激に欠けて、やっぱりつまらない。かといって、交友関係を築こうと、人に話しかけるのは億劫だ。
都合よく友達とか、彼女ができるような出来事が起こらないかなーと、家のソファーで横になりながら妄想にふけっていると、うっとりと眠りに落ちてしまって……
「おい、起きないか?」
夢の中で、神様に呼び出された。
「え?」
突然、目の前に真っ白な空間が現れた。
俺の目の前には、金髪で、スタイルが良く、まるで古代ギリシアの哲学者みたいなドレス衣装を身に
「ようこそ、大空
「か、神様?」
「まあ、神と救世主は同義なんだけど……そこらへんの解釈とか、細かいことは気にしないで」
「じゃあ、神様、俺に友達くださいよ、それか、可愛いカノジョとか!」
「まてまて!早まるでない」
神様を名乗った、狐のお面の少女に歩み寄ったが、手をぶんぶんと振られて、拒絶されてしまった。
「君は、人生に退屈しているようだな?」
「……ああ。趣味は、あるにはあるけど、熱しやすく、冷めやすいって感じで、続かないんだよ」
「色々なことに興味はあるが、飽きやすいということだな?」
「そうそう」
俺は、これまで、イラストや絵画を描くこと、サッカー、縄跳び、映画鑑賞、オンラインゲーム、カラオケ、漫画を読む、筋トレなどなど……一般的に趣味と呼ばれることを色々と試してきたのだが、どれも半年以上、継続させたことがなかった。続かずに、途中で飽きてしまうか、他のことに興味が移ってしまうのである。
「一応、大学生だから、読書は頑張って続けてるけど」
唯一、読書だけは、続けることができている。が、これも、心を満たすには足りなかった。
しかし、こんな些細なことも、神様は好意的に評価してくれた。
「お、偉いな。たった一つでも、続けようと努力できるのは、素晴らしいことだ。誰にでもできることではない。誇りに思って、継続するといい」
「へへ、ありがとうございます」
初対面の神様だけれど、なんだか、友達と話しているみたいな安心感と信頼感がある。……まあ、友達できたことないんですけどね。
「本題に入ろうか」
神様は、人差し指を立てた。
「人生に退屈しているのだろう?そこで、私からおもしろい提案をしよう」
「どんな提案なんですか?」
「まず
「え……?」
真意が読めない神様からの質問に、困惑させられてしまって、口をぽかんと開けていた。
「いや……わかんないですね。友達とか、彼女とか、作ったことないので、愛する感覚が分からないです」
「そうか。もし、私が神様パワーで、君の【運命の人】を教えてやると言ったら、君は、あらゆる代償を受け入れる覚悟があると宣言できるか?」
「……運命の人っていうのは、将来、結婚する人ってこと?」
「あくまで【運命の人】だ。結婚するかしないかは、君の好きにするがいい」
「は、はい……」
なるほど。悪くない提案だと、俺は自らの顎を撫でた。
ただ、教えてもらう代わりに支払わなければならない【代償】の内容が気になるところ。
「代償っていうのは、どんなものなんですか?」
「それは、君が提案を受け入れると宣言してから、伝える」
「あー……そうだな……」
悩む。ひたすら悩む。
これまで、あまりに平坦な人生だったから、この機会を活用したいところ。しかし、【代償】の内容が分からない以上、「はい、受け入れます」と、迂闊にサインは出せない。
運命の人を知る代償として、寿命が短くなる……なんて内容だったら、お引き取り願いたい。
「神様からの提案だから、魅力的だなって思ったよ。けれど、【代償】の内容が分からないから、今回は見送らせてもらう」
俺は、白い空間を歩いて、光の中に消えていこうとした。この夢の世界から早く目覚めないと、夕飯を食べるのが遅くなってしまう。
「まてまて!今回限りだぞ!提案を断るなら、二度と私は、君の
「……いや、そう言われても……代償のリスクを考えると、二つ返事に『はい』とは言えないよ」
「――甘酸っぱい青春を味わってみたくはないか?」
「う……」
神様は、立ち止まった俺の背中にぴったりと張り付いて、耳元で囁いた。……胸も衣装も薄いから、彼女の心臓の鼓動が直に伝わってくる。
「かわいくて、考えや性格の相性がいい、素敵なパートナーと巡り会ってみたくはないか?」
「おお……」
「そんなパートナーと、イチャイチャして愛し合ってみたくはないか?」
「おおおおお!!」
なにぃぃぃぃ!イチャイチャだと!?その言葉、見逃せないっ。
「受け入れます!!代償、受け入れますから、【運命の人】教えてください!!」
俺は、耳を真っ赤に染めながら、神様のほうへ、くるっと、向き直った。代償なんざ、この際、どうでもいいや!俺の人生に山あれ、谷あれ、幸あれ!と願いつつ、神様と改めて対峙した。
神様は、狐のお面の下で、ニヤニヤと笑いながら、鈴の音のような美声を発した。
「よろしい!ではまず、君の【運命の人】について、教えてしんぜよう」
神様に手招かれるまま、神聖な光が降り注ぐ空のもとへ歩んだ。
「君の運命の人、それは……」
「わくわくドキドキ」
自らの胸の内の、心臓の鼓動の叫びを自覚した。俺の心臓は、今にも張り裂けそうなぐらい、鼓動を激しく刻んでいた。
どんな人かな……?金髪高身長の美少女かな?それとも、黒髪ボブの落ち着いた子かな?いずれにしても嬉しいし、楽しみだ。
「【
「あ、聞いたことある!」
俺は、この名前に聞き覚えがあった。
「君の同級生だよ。明日、大学に行って探せば、すぐに出会えるだろうね」
「マジか……そんな身近なところに、俺の運命の人がいたんだ……」
拳をぎゅっと握りしめて、天から降り注ぐ光を仰いだ。こんな都合のよいことが、あっていいものかと思いながらも、心は踊っていた。
「――ちなみに、その運命の子は、来年の12月17日に、死ぬ」
「は?」
神様は、さも当然かのように、言い捨てた。
「ど、どうしてそんなこと分かるんだよ、根拠は?」
「私が、神様だということが、絶対的な根拠であろう」
「いや……はぁ!?神様なら、その子が死ぬっていう不幸を取り去ってやれよ!【神様パワー】でさ!」
「それはしない」
「なんで!?」
「しないものは、しない。だって、神様だから」
声を荒げて訴えた。
神様なんだから、人間の運命を左右することは容易だろう……ならば、その人をよりよい運命に導く責任があるのでは?と思った。
しかし、神様は、空高い雲を仰ぐばかりで、取り合ってくれなかった。
運命の人が分かる。ただし、その人は、来年の12月17日に死ぬ、ということを知らされる。
これが、神様が言った【代償】なのだろう。
「いくつか、重要な条件を伝えておこう。……一つ、
「それを破ったら、どうなる?」
「君たちが生きる
「俺たちを、殺すってことか?」
「まあ……そうだ」
神様は、少女然として愛らしく首を縦に振った。言っていることは、脅迫じみた、恐ろしい内容であるのだが、かわいらしかった。
どうやら、今伝えられた条件を守ってさえいれば、殺すことは止してくれるらしい。
「伝えておきたい条件は、以上だ。……さぁ、【その日】まで、君たちは、余生をどのように生きるのか、じっくりと見せてもらおうか」
「うわ!?」
体が宙にふわっと浮きあがった。まるで、浮遊の魔法だ。
宙に浮いたそのまま、現実世界の光のほうへと、運ばれていった。
意識が、覚醒する。
※大空湊のビジュアルイメージはこちらから↓
https://kakuyomu.jp/users/NekoZita08182/news/16818093091166101198
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