魔女と僕らの同窓会(マスカレード)
旭 晴人
プロローグ
「久しぶりに会いたい」
昔なじみの女の子からそんなラインが届いていたら、誰でも浮足立つだろう。僕も大興奮したに違いない。彼女が、七年前に死んでなかったら。
メッセージを指でなぞると、耐えきれず目に涙がにじんだ。懐かしさと後悔で、心に爪を立てるような痛みが走る。僕は彼女が、世界で一番大好きだった。
水野という苗字にして「泡(うた)」と名付けられた彼女は、果たして天にも憐れまれたのか、親の業を帳消しにして余りある美人だった。
ただそこにいるだけで、色も匂いも温度も変えてしまうような人を見たことがあるだろうか。ウタは、そういう、特別な女の子だった。たとえ彼女に真面目な顔で「実は月から来た」なんて言われても、僕は「ああ、どうりで」としか思わないだろう。
見た目に反してどうしようもない悪ガキで、世界の全部を斜めから見下しているような、ひどい性格の女だった。自由奔放で、大人に反発して、誰にも心を開かない。たかが小学生の頃から、彼女は「魔女」と呼ばれるようになった。
七年前、ウタは刺されて死んだ。一七歳だった。彼女を殺した犯人は、まだ捕まっていない。
「皆で久しぶりに会って、ゲームでもしようよ。絶対楽しいと思わない? まあ、皆はそれぞれほぼ初対面かもしれないけどさ」
死んだはずの魔女は、僕ら五人をグループラインに招待するなりそう言った。無機質な文面から、生前の彼女の、冷めていて気だるげで、なのに甘くて魅惑的で、彼女なりに楽しそうな声が聞こえてくるようだ。
「ゲームの名前は【魔女裁判ゲーム】。簡単な推理ゲームだよ。皆には指定した場所に集まってもらって、この中に一人紛れこんでいる、私を殺した犯人が誰か当ててもらう」
そこまで読んで目が留まる。三回読み返す。心臓が激しく鼓動して、血流が加速して、頭のてっぺんから指先まで火にくべたように熱くなる。
「あ、来なかったら犯人と認めたって見なすからね。地の果てまで追い詰めてやるから、逃げずに来い。じゃ、待ってるよ」
死者から届いたラインには位置情報が添付されていた。僕らが生まれた田舎の海岸だ。指定日時は来週火曜日、八月十三日の夜十時。いきなりグループに集められた人たちは当然さまざまに困惑したり怒ったり質問したりしていたけれど、ウタからの応答は二度となかった。
僕は息を吐き、ソファに深く身を預けた。頭がひどく疲れていた。
待ってるよ、か。ここに行けば、ウタに会えるのだろうか――有り得ないのに、本当にそんな気がしてしまう。他でもない彼女ならば、突然生き返ったって驚かない。お盆だし。
誰がウタに成りすまし、なんの目的でこんなメッセージを送ってきたのか。そんなことは考える必要のないことだ。ここに行けば、ウタのことをよく知る誰かに会える。そして、ウタを殺した犯人が分かる。それだけで、僕の心は既に地元の海に向かっていた。
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