床の上の天使
栗栖亜雅沙
第1話
ナース服の紫織が、廃病院の汚れた窓枠から外の様子を窺っている。
床には、口にガムテープを貼られた男が、裸に白衣を着せられ、後ろ手に縛られている。
「先生、私は先生の手が大好きだった。
覚えてる?
初めて会った時、私は実習生でドジばかり。
先生が、優しい笑顔で深呼吸するように言って、緊張で固まっていた私を一瞬で解きほぐししてくれたわ。
先生は、とても厳しくて、近寄りがたいのに、患者さんに接する時の優しい笑顔ときたら!
先生の手を綺麗だと感じたのは、いつだったかしら?
患者さんの脈をとっている時に、その手を奪ってしまいたいと思ったのは…。
私が先生に見惚れて、婦長さんに怒られるのは、日常茶飯事。
でも、それは、いつだって、婦長さんは怒るものと決まっているの。」
次の更新予定
2024年12月22日 07:00
床の上の天使 栗栖亜雅沙 @krsagscat
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