第6話 専属メイド レイニー

「――ん~ あれ?」


『ガタッ! ドスン!』


目が覚めた瞬間。椅子から転げ落ちた! 気絶して目覚めた時は普通はベットの上だろうが! と叫んでやりたい。



「ロッシュウ様、爽やかなお目覚め如何でしょうか?」


音もなくレイニーが部屋に入って来た。



――こいつ…… ノックと言う言葉を知らないのか? 



服は昨夜のまま、ベットではなく椅子に寝かされていた。どんだけ面倒くさかったんだ…… ヤツのメイド教育はどうなってやがる!


気持ちを平常心に切り替えレイニーに声を掛けた。


「昨夜の事情は知っていると思うが、すまないと思っている」


「すまないとは何の事でしょうか?」


「――いや、僕がパーフェクト・ボデェーじゃなかったばっかりに、本当にすまない!」


「パーフェクト・ボデェーと謝罪は関係あるのですか?」


レイニーは無表情でこちらを見つめていた。


「アルラサンド王国のトレスベン学院へ留学になったじゃない? 土下寝で何とか留学を取り止めてもらおうと思ったんだけど…… やっぱり筋肉が足りなかったンじゃないかと思うんだ! パーフェクト・ボデェーがぁ!」


僕はサイドリラックスポーズをとり、レイニーに見せつけた。しかし、ガリガリの身体ではギャラリーからのボディビルポーズへの賞賛の掛け声は無かった……


「――なぜ、筋肉が?……」


「何を言っているんだ! レイニーさん! 土下寝と筋肉はすべての問題を解決するんだよ!」


僕は声を荒げた。


「土下寝と筋肉の話しは初めて聞きました」


「なにぃぃぃ! こんなの世の中の常識だろがぁぁぁ!」

 

「土下寝と筋肉は私には関係ないので」


僕の主張はあっさりスルーされた。 ――ぐぬぬぬ…… 解せぬ!


「いやっ! いやぁ! あんたにも関係あるでしょ! 僕がアルラサンド王国へ行くって事は専属メイドのあんたも付いて行くってことでしょ!」 


「――えっ!」


そこには真顔になったレイニーさんがいた。



――――レイニーは動かなくなった 返事がない 屍のようだ



こいつ、専属メイドなのに全然、付いてくる気ないじゃん! 僕は絶対にレイニーを留学追放に巻き込んでやろうと固く心に誓った……



しばらくして



「ハァ~! 危うく冥界へ旅立つところでした!」



――レイニーは生き返った



「一つだけ質問よろしいでしょうか?」


生き返ったレイニーは僕に問いかけてきた。


「ハイ! レイニーさん質問どうぞ!」


「ありがとうございます。どうして、そんなにトレスベン学院へ行きたくないのですか?」


「あなたはどうしても、その質問を私にしたいのですね? では、お望み通りお答えしましょう!」


「……………………」


暫し沈黙が続いた。


「――僕がモブ顔だからです! もう一つ加えるなら王族のオーラというか威厳が全く無いからです!」


『ドスン!』


レイニーは上を向いて倒れた!


僕は慌ててレイニーに駆け寄り


「レイニー! 大丈夫かっ! 急にどうしたんだ!」


後頭部を打っているかもしれないがコイツならどうでも良いやと思い、頭と体を揺さぶってやった。



「な、な、何言ってるんです?」


レイニーは勢いよく起き上がり僕の襟元を掴み、前後に何度も揺さぶった。


「レイニー! お、落ち着けって! 」


「落ち着けるわけがないじゃないですか?」


コイツの慌てている所を初めて見た気がする。


「そんなくだらない事で、この騒動を起こしたんですか!」


「くだらないって、あんた! 大事なことじゃない! 普通の王族って言ったらイケメン、美女の集まりじゃないのよ! 僕だけがモブ顔! どう見ても周りから『あれが噂のフロンシニアス王国からいらした第三王子のロッシュウ・ニオ・アルパトス様ね! すてき!』ってならないじゃないのよ! 誰の目にも止まらず学院生活を過ごすことになるのよ! ボッチ確定じゃない! どうしてくれるのよぉ!」



――ごめん。興奮のあまりオネェ言葉なりました。



父上、母上、兄上達は美男美女で街を歩けば誰もが振り返り賞賛するだろう! 僕も血が繋がっているので父上と母上に似ている。本当にソックリなのだ!


父上と母上の残念なパーツのみを結集した結果。モブ顔第三王子が爆誕したのである!


呪われているかもしれない……  天は我を見放した……


「――まぁ、否定はしませんが……」


レイニーは今度こそ僕の主張に賛成してくれた。 



――悲しいなぁ……



「レイニー君。勿論、君もアルラサンドへ付き合ってもらうよ」


嫌味たっぷりに言ってやった。


「他のメイドじゃ、ダメなんですか! 2番じゃダメなんですか?」


某国会〇員さんかな? 今は何も言うまい。


「あ~たぁ、僕の専属メイドでしょ? 当然でしょ! 行きたくないの?」


「そうです! 私は行きたくないです!」



――な、なんて素直なメイドさんなんでしょ…… この人ホント大丈夫か!?



「レイニーさん。その理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「ロッシュウ様にお使いするのが疲れるからです」


このヤロー! 間髪入れずに即答しやがった! お世話された記憶が皆無なのに、しかも僕のハートにダメージまで入れてきやがった! 今のHPは1。瀕死状態です。


こうして、僕の留学(追放)が決まった。



――これが、3ヶ月前の出来事だった……



アルラサンド王国へ向かう馬車の車窓からのどかな田園風景を無気力状態のレイニーさんと眺めていた。


レイニーさん。表情が死んでますよ…………


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