第6話 超巨大モンスター戦
アルテは空中に浮かびながら、スネークと対峙している。
山をも貫くほど、巨大化したスネークに。
彼は臆するともなく、突撃をした。
スネークに近づき、剣で胴体を切り裂く。
だが傷一つ憑かないばかりか、剣が刃こぼれする。
「なんて堅さだ……。こりゃあ、剣が先に壊れるな」
アルテは剣を収めて、拳でスネークの胴体を殴った。
頭を殴られたスネークは、背後にのけ反る。
「悪いな。俺は剣より拳で戦う方が好きなんだ!」
怯んだスネークに、間髪入れず連続攻撃を行うアルテ。
彼の背後に青色の光が出現し、拳の形になる。
光の拳はアルテと共に、スネークを殴り始めた。
スネークは怒りの雄叫びを上げながら、尻尾を山らか出した。
巨体に似合わない素早さで、背後を振り向き。
尻尾でアルテを薙ぎ払おうと、攻撃をする。
「へ! そんな攻撃!」
アルテは右腕を振って、尻尾攻撃を弾いた。
重心を崩したスネークに、追撃に入る。
背後に五体の分身を作り、スネークに体当たりさせる。
スネークは上空に体を投げ出された。
アルテは即座に尻尾を掴み、体を回した。
スネークを上空へ投げ飛ばす。
「さっき蛇神様から、良いアイディアをいただいたぜ!」
アルテは背中から、水流を出した。
激流の反動で、彼はスネークに体当たりする。
スネークの体を貫通して、更に上空へ飛翔した。
「ほら! おまけだぜ!」
アルテはスネークに、両手を向けた。
指先から水流が発生し、スネークに直撃する。
硬い皮膚を切り裂き、胴体に傷をつける。
「川の流れは、岩を削るんだ。覚えておきな!」
スネークは土煙を上げながら、山に落下した。
即座に体勢を立て直し、口を赤く光らせる。
先ほど大地を割った光線を、アルテに向かって放つ。
アルテは両手を前に突き出して、光線を受け止めた。
手を掲げて、光線の軌道を空に向ける。
「あんまり森を壊すなよ。自然は大事なんだぜ!」
アルテは高速移動をして、逸れた光線の先へ。
光線を蹴り飛ばして、スネークに跳ね返す。
スネークの体を貫通して、胴体に穴をあける。
スネークは悲鳴をあげながら、上空に赤い球体を放った。
巨大な球体が空で破裂して、小型の光弾が地面に降り注ぐ。
それは遠くて待機してた、ミカの下へと落ちていく。
「ヘイ! そいつは反則だぜ!」
アルテは高速移動で、ミカ達の下へ飛んだ。
手を前に突き出して、透明の板を生成する。
板が盾となって、光弾を防いでいく。
「よう! 大丈夫か?」
「あ、うん……。直撃はしてないよ」
「なら安心だ! ちょっとトドメを刺してくるよ!」
唖然としているミカを余所に。アルテはスネークの近くに戻った。
スネークは口にエネルギーを溜めている。
再び光弾を放つつもりのようだ。
「悪いな。先に決めさせてもらうぜ!」
アルテはスネークの下半身に近づいた。
体の周りを高速で走る。竜巻の様な風が、発生した。
スネークは風に飛ばされて、上空に飛ばされる。
アルテは両手を広げて、地面に向けた。
手から一瞬だけ。大量の水が噴射された。
その勢いに乗って、アルテは体当たりをする。
スネークは口を広げて、抵抗する。
アルテは構わず口の中へ突っ込んだ。 そのままスネークの体を貫通する。
スネークは上空で体が崩壊。そのまま爆散した。
「ベスト駆除だぜ!」
アルテは手を鳴らしながら、口笛を吹いた。
ミカ達の下へ着地して、サムズアップをする。
「終わったぜ」
アルテを見て、ミカも水神様も呆然としていた。
彼は両手を広げて、首を振る。
「おいおい。もうちょっと喜んでくれよ」
「あり得ないよ……。あんなモンスターを……」
ミカは信じられないと言う目で、アルテを見つめた。
「引いたか?」
「いや。ちょっとビビっただけ。ちょっとだけね!」
ミカは直ぐに現実を受け止めて、元に戻る。
アルテは自然と頬が緩んだ。
「あ~あ。今回は私、何もできなかったなぁ」
「これから取り戻せば良いじゃねえか。それに蛇神様の伝承を教えてくれたろ?」
アルテは蛇神様の伝承を知らなければ、討伐していたかもしれない。
それを止めたのは、彼女の知識だ。
これでも感謝の気持ちは抱いていた。
「お!」
アルテは倒れていた、蛇姫を指した。
スネークから解放された、蛇姫が目を覚ましたのだ。
蛇神様は嬉しそうな鳴き声を上げた。
「ミカ」
アルテはミカの肩を、突っついた。
「最後の仕事は譲るよ。頼んだぜ」
「うん!」
ミカは力強く頷いた。彼女はこの土地の領主となったのだ。
務めを果たすため、蛇神様に近づく。
「蛇神様! 私達人間は、この度土地に戻って来ました!」
蛇神様と蛇姫は、ミカの事を見つめる。
「今は二人しかいませんが……。もう一度この土地に、村を作ります!」
ミカの演説を、アルテは背後で見守っていた。
「採れた野菜や果物を、供物として捧げます! だから……」
ミカは蛇神様達に、頭を下げた。
「もう一度、人間にチャンスをくれませんか?」
人間の言葉を理解できるか分からない。でも伝わっているはずだ。
ミカの声には、それだけの意志が込められていた。
アルテはフッと笑って、両手を組む。
蛇神様と蛇姫は、空に向かって雄叫びをあげた。
すると今まで降らなかった雨が降り始めた。
恵みの雨。植物が育つのも、人がいきるのにも水は欠かせない
「ありがとうございます!」
ミカはもう一度、深々と頭を下げた。
アルテは蛇神様も頭を下げて、お礼を述べているように見える。
どこか緩やかな表情を見せた後。蛇神様達は洞窟へ戻っていく。
「これで、万事解決だな!」
「うん! アルテのおかげだよ!」
空を眺めながら、ミカは笑みを浮かべていた。
「正直ね。私はこの土地を馬鹿にしていたかもしれない」
ミカはアルテ振り向き、目を輝かせていた。
「ここに飛ばされたくないから。功を得ようとして……」
ザルサとの戦いで、大けがを負った事を思い出したようだ。
「でも。私、ここに来れてよかったと思うよ!」
ミカはアルテの隣に立ち、もう一度空を見上げた。
恵みの雨が全てを浄化して、空に虹を作る。
「人間は自然と共に生きているんだって! それを思い出せたから!」
活き活きとしているミカを見て、アルテも虹を見上げる。
「アルテとなら。自然との共存が出来る気がするよ!」
「共存ならしているさ。殆どの人が忘れてるだけ。でも勘違いするなよ」
アルテは洞窟の方を見つめた。
「それで自然が見放すなんて。それこそ人間のエゴに過ぎない」
「そうだね。自然はそんなに器が小さくないんだね」
蛇神様は人間に失望していなかった。
きっと木や草に意志があったとしても。
人間を恨んでいると言うのは、人間の思い込みかもしれない。
「へへ! アルテとなら、もっと大きな事件を解決出来そうだよ!」
「冗談だろ? こんなのは二度と御免だ。俺は静かに生きたいだけなんでね」
「なんだかんだで、楽しかったくせに!」
アルテはミカの言葉を、否定しない。
ずっと力を隠していたが、感謝されるのも悪くない。
少なくとも、ミカや蛇神様なら信頼できる。
「さあ。村づくりを再開するぞ。やっと水分が戻ったんだから」
「よくこの後で、働けるよね……」
アルテとミカは、村への道を戻った。
空は曇天で大雨が降らしているが。心はむしろ晴れている。
アルテは水分を吸った、土の匂いを嗅いだ。
この匂いが、彼は不思議と好きだった。
どこかリラックスできる、懐かしい気持ちになる。
「あ。でも戻るの結構大変だね」
「また手を引っ張って、走ってやろうか?」
「絶対嫌だ!」
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